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 わたくしからの聞き取りを終えたギルバート様は、護衛の皆とカレンにも話を聞いてまわっておいででした。

「うーん、各証言に大きな食い違いや矛盾はないねえ」

 やはり肝心のロック鳥がなぜデマーゼル領まで南下してきたかについては、手がかりがないとのこと。

 ギルバート様は同行してきた他の調査団メンバーと話し込みはじめました。

「やはり棲息地の状況を確認するべきと思う」

 ギルバート様が提案されますと、副官の方が反論しました。

「しかしながら、今の時期の北方山脈といえば深い雪に閉ざされた魔境となり人の立ち入りは至難。遭難の危険はきわめて高いですぞ。氷の属性防御を持つ装備で固め、火魔法の得意な者で向かうとしても死地に赴くのには変わりありますまい。帰還出来ねば調査の意味がありませぬ」

「そうだね、行くからには必ず帰還出来るメンバーでなくてはいけない。だからまず、ぼくが行くのは決定だね。ぼくは全属性の加護を得ているし火魔法は得意な部類だ。それに北方山脈にはロック鳥以外にも様々な魔獣が棲息する。メンバーは魔獣と戦えるだけの手練れでなくてはいけない。そういう意味でもぼくは適任だ」

「メディシス様ならば確かに務まるやもしれませぬが、リスクが高過ぎます。雪解けを待ってからではいけないのですか?」

「今回のロック鳥は時期から考えて冬眠から早く目覚めた個体が南下してきたものと思われる。ロック鳥は寒い気候を好む性質があるのに、住み慣れた巣を離れ彼らにとっては暑く過ごし難い地方にやって来たのは何故だろうか?短絡的な考えかもしれないが、何らかの要因で居心地が悪くて巣を離れたのではないか?もっと端的に言うと、何かから逃れてきたのではないかと思う。そうなると、冬眠から覚めた数百羽のロック鳥が次々に南下してくる可能性がある」

「なんと」

「そんなことが」

 皆様、動揺していらっしゃいます。当然でございますわね、そのようなことになりましたらエルドア王国存亡の危機です。

「急ぎ、王都に戻りましょう。国王陛下に北方山脈への調査団派遣に関して上奏せねば」

 ギルバート様はそういって調査団の皆様を急かしました。

 皆様はお父様とお母様に挨拶をなさると、慌ただしく白百合城を後にされました。


「ねえカレン、ギルバート様のおっしゃるようなことってあり得るのかしら?」

 去っていく馬車を見送りながら聞いてみました。

「考えられる事態ではあります。ロック鳥は縄張りの習性が強い生き物ですから好んで移動することはないはずですが、外的要因があれば別でしょう」

 カレンは眼鏡を押し上げる仕草をしました。

「ちょうどよい機会ですから、本日のお勉強はエルドア王国に棲息する魔獣の種類と特徴についてお話しいたしましょう」


 ☆


「アナスタシア様は魔獣というとどのようなものを思い浮かべますか」

 そうですわねえ。

「ロック鳥、それから竜。狼、虎、獅子、クラーケンあたりでしょうか?あとそれからアルフレート殿下が倒した大熊も魔獣と聞きましたわ」

「少々訂正いたします。魔獣には最初から魔獣に分類されるものと、普通の獣が長じるにつれ力を付けて魔獣と呼ばれるようになるものとがあるのです。アナスタシア様の挙げた中ではロック鳥や竜は最初から魔獣ですが、その他は違うのです」

 普通の獣が魔獣になるのですか?では仔猫や仔犬や牛さんや馬さんや、兎さんも魔獣になることがあるのでしょうか?不安です。

「種類によって魔獣に転じる率が異なるのです。体躯が大きく、攻撃的な性質が強いものほど可能性が高くなります。小動物や牛馬などの草食獣は魔獣に転じることはほとんどありません」

 ほっ。身近に魔獣がいるかも知れないと思うと怖いですが、その心配はないようですわね。そう安心しておりましたら、カレンの言葉はさらに続きました。

「ただし、そういった種類の獣もまれに魔獣化することがあります。そうした場合、多くは標準的な魔獣よりはるかに強力となります。エルドア建国王アドナイアス様の乗騎は魔獣化した暴れ馬を七日七晩にわたって馴らして従えたものでしたし、エルドア図書館の紋章の猫は人語を解し図書館を守護した魔猫を描いたものです。そうした伝承は王国各地に残っています」

 そんな!ということはエルドア王国のどこにいても魔獣がいるかもしれないということですわよね?逃げ場がないではありませんか。

 あ、でも言葉を話す猫さんは可愛いかも知れませんわね。

「ちなみにエルドア図書館の魔猫は虎ほどの大きさがあり、図書館を占拠しようとした百人以上の賊を牙も爪も使わず倒したとか。なぜかと問われて『血が出ると本が汚れるから』と答えたそうです」

 魔猫さんは、可愛さとは無縁でした。


 ☆


「魔獣とその他の獣の違いは何であると思われますか?」

 わたくしは、しばし考えを巡らせました。ロック鳥と竜に共通していて、普通の獣にないもの。

「強さ、でしょうか?」

 カレンは頭を横に振りました。

「魔法を使うか否か、です。ロック鳥や竜は生まれながらに持っている魔法があります。空を飛ぶ魔法がそうです。また竜の吐くブレスも魔法の力ですね。獣から魔獣に転じる場合は、魔法の力で爪や牙が鋭さを増したり、体表に属性防御を帯びたり、あるいは攻撃魔法を使うようになるなど様々な変化が起こり得ます」

 魔法を使うのが魔獣?ということは、水滴さんは魔獣なのでしょうか?

(ギルバート様はこれから大変です。アナスタシアは良く寝た後なのでまだまだ元気。魔獣についてお勉強です)

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