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女主人公と女友達の異世界トリップ  作者: ヌエドリ コトルー
6/12

6・白石

今回は、第一話あたりの白石視点。微妙。読まなくても支障無し。


 私の名前は、シライシ。白い石と書いて白石だ。大変簡単でよろしい、笑。たま~にしろいしと読まれることがあるけど、私の場合はシライシである。……まあ、どこにでもあるような苗字だよね、漢字的にも。

 そんでもって下の名前はサイリ。彩る里と書いて彩里。だいぶ前に父親が里の部分を理という漢字にしたかったと私の前で嘆いていたけど、私としては里でよかったと思ってる。もしそうじゃなかったら、口頭で伝えるときにサイの部分は彩るまたは色彩などでいいけど、リの部分はほとんどの人に定着のある理科の理って言った方が分かりやすいわけよ。でもこの言い方はあまり好きではないし、別の言い方だと……地の理や世のことわりってのもあるのかな。こっちの方がまだマシだけど、なんかね。

 え? そんな変わらない? ……はあ。いや、何が悲しくて理科の理って何度も言わなきゃならないんだよって話。個人的な問題ね。だからほんと漢字が彩里でよかったって思ってるわ。

 ちなみに母親の方は私の名前を外国人風のカタカナにしようとしたらしいけど、ほかの家族に止められて叶わなかったと、こちらもだいぶ前に嘆いていた。実は母親の中では確定していたのだとか。遠くの知り合いにも言いふらしていたとか。興味本位でその名前を聞いたらなぜか、某RPGに出てくる呪い好きで根暗だけど一途な敵キャラと言われた。詳しく聞いたら、主人公属する味方軍の主要人物一名が最初に話しかけると敵から寝返り仲間になり、主人公を見た瞬間運命感じて一途に追いかける女性ユニット。その名前を宛てがいたかったらしい。

 なんでも、母親のプレイした某RPGは主人公の性別が選べるらしく、男なら最終的に結婚。女なら固い友情で結ばれるとか。え~と、なんて名前だったっけ? たしかサーなんとかだった気がしたんだけど……おかしいな、忘れちゃった。彩理とサーなんとか。とりあえず、理という漢字とカタカナの名前を阻止してくれた家族に感謝! だね。


 ていうか、私の名前に関してプラスアルファな話をしたのにはちょっとだけ理由があるんだけど、今は教えなくていいよね? ていうか面倒くさいしそのうち分かるし、いいよね! 私の精神面での安定のため、今は思い出したくないし。え、意味分からないって? だから今は分からなくてもいいのよ! 分かったところでつまらないけどね。…………はあ。




 某所の有料の立体駐車場に進入した車は空いているスペースにおさまるべく、速やかに切り替えして枠の中に停車した。車の所有者兼運転手の友人鎌形は、ホッとしたように息をついた。

「やっと着いたね。運転ご苦労様」

 道中助手席に座ってるだけだった私はねぎらいの言葉をかけた。こちらを向いた鎌形はなぜか苦笑していた。朝から疲れた顔してるわね、マジで運転お疲れさま。

「うん、高速久しぶりだったから緊張しておりる場所間違えてごめんね。無事に着いてよかったよ」

 あ~うん、車線変更しそびれておりる場所通過したんだよね。ごめんね。カーナビが案内してくれるっていっても、実際に運転するのは人間だもんね。いくら鎌形が十年近く運転経験あるからって、高速道路や初めての道は何かしらへまするわよね。ついいつもみたいに安心して鎮座して油断してたわ、ほんとごめん。断じて睡眠を貪っていたわけではないからね、信じてぇ!

 渋滞し始めた高速での早めの車線変更を促せばよかったと後悔していたら、エンジンがきられた。私たちはそれぞれの手荷物を持って車をおりて、鎌形はドアの鍵をロックした。今は当たり前なキーレスキーって便利ね。私は車の運転免許証とってないから所有してなければ運転もできないけどね。私の中でのキーレスキーっていったら、十数年前に中学進学する前に買った通学用自転車しかないわぁ。思わず遠い目になったのは流してね。

 そういえばあの頃、進学して半年もしないうちにまだ新しい自転車のキーレスキー駄目にしてロック解除できなくて、帰りたいのに予備で持ってたはずの普通の鍵が見つからなくて友達と帰れなくて、困ってたっけ。鎌形が、笑。

 私は部活が終わって帰ろうと駐輪場に行ったときに、同じクラスの鎌形と違うクラスのその友達に遭遇したのよね。


「ここから徒歩で十分くらいだっけ?」と鎌形。

 おっと、いけない。過去にトリップしてたわ。

「そうみたい。ちょっと離れてるけど大丈夫だよね」

 思考を切りかえて聞き返そうとして、鎌形の足下を見やれば動きやすそうなスニーカーだったので、疑問系はやめた。運動靴なら問題ないだろう。私はヒールが低めのパンプス履いてるけど、通勤や仕事でも似たような靴を履くから慣れてるわ。こちらも問題なし、よし!


 薄暗い立体駐車場を出ると穏やかな陽射しと風が吹いた。

「眩しいけどいい天気!」

 思わず大きな声が出てしまったが、周りにほかの人がいなかったのでよかった。天気予報通り、湿度が低くてカラッと晴れて大快晴ね。陽射しが暖かくて気持ちいいー。

「ほんといい天気だね~」

 私同様に鎌形も青空を見上げて立ち止まったけど、すぐに歩みを再開させた。


 私と鎌形は同い年で、お互い今年で二十八才になる社会人である。私の場合は誕生日がつい最近来たので二十八になったけど、鎌形はまだ二十七才だ。私たちは所謂アラサーで、しかも三十路の未婚で独身女。鎌形の方は知らないけど、過去に何度か異性と付き合ったことがある私は現在、現在…………彼氏がいない。五年ほど前にお子様的な清い? 付き合い方をしていた彼氏と別れてからフリーである。世の中男がいなくても生きていけるけどね、うん、だけどさあ、問いたい。


 な、なぜなんだ!?

 どうして彼氏ができない!?

 何が原因なんだ!?


 他愛ない会話をしながら頭の片隅で悶々と考えていたら、水の流れる音が聞こえた。あ。

「鎌形、あそこに噴水があるよ」

 少しひらけた広場。色取り取りの花がたくさん咲いた花壇の中心に、水の流れる噴水があった。

「ほんとだすご~い。花壇の花も綺麗だね」

 噴水を確認してから、しげしげと花壇の花を見る様は生き生きとしていた。私も見入ってしまうほど噴水の周りには花が咲き誇り、広場全体もちゃんと整備されていたので清潔感があった、と思う。

 この背の低いやつはパンジーかな? ほかの花はなんて花かな?

 肩にかけていた鞄からスマホを取り出してカメラを起動せた。

「だね。ちょっと写メ撮っていい?」

 聞きながらシャッター押して花を撮る私。そのあとも何枚か撮り、最後に噴水を中心に広がる花壇の全体図もどきも撮って終了。ふう。

「あの角を曲がったら入口があるみたいだね」

 写真を撮ることに夢中になってたけど、改めて周囲を見渡すと目的地への看板が見えた。

 噴水を眺めてたっぽい鎌形が私を見た。

「マジか。人たくさん並んでるかな?」

 看板の指し示す方へ向かっていた私のあとに続いて歩き出した鎌形は、運転の疲れが吹っ飛んだような顔をしていた。朝ちょっと早かったし高速で神経すり減らしてたのかな? 日光浴びて復活か? ふふ、分っかりやす。まるで光合成ね。お前は植物かってね、笑。

「まだ開園前だし、テーマパークとかじゃないからそんなには混んでないと思うけど」

「そうか、混んでなければいいね」


 私たちは今、地元から高速道路を利用して約二時間の距離にある観光地に来ていた。夢を売るお城やいろんな意味で多彩な絶叫系遊具場や、鎌形が好きな台詞のドコドコ遊園地で僕と握手! で有名……なのかな? 違うのかな? 古いのかな? 分からないけど、そーゆう場所ではない。私たちの地元を含め、某県某所とだけ言っておこう。


 入り口の方向を示した看板のある角を曲がろうとしたら、強い眩暈を感じて目を閉じた。ふらついて、たぶん隣りにいた鎌形とぶつかって慌てて離れた。開けられないほど目が痛い……いや、頭が痛いのか? 頭……いや、目っぽい。目の奥が痛い、めちゃくちゃ痛い! 何よこれ、なんか気持ち悪くなってきた……。 

「かまがた……」

 このままでは倒れる気がしたので助けを求めようと声を出したら、自分でも聞きとれるか微妙なくらい小さかった。どうした私!?

 すぐ隣りにいるであろう鎌形を見ようと眉間にしわを寄せながらも目を開けたら、視界がうっすらと赤く染まっていた事に気づいた。

「やだ何これっ!?」

 思わず悲鳴じみた声を上げてしまった。驚いたのか鎌形が息をのむ気配がしたけど、距離を感じた。

 うわっ、まぶしっ!

 叫んだら、赤い色が濃くなった。最初、突発的な病気で目の前が赤く見えてるのかと思ったけど、違った。足下からあふれ出してる光が赤かった。これのせいで視界が真っ赤っか。ていうか私の体全体をおおっている。しかも眩しい。ほんと何よこれ!?


「白石さんっ、手!」

 鎌形の焦ったような叫びにハッとして足下に向けていた視線を上げると、思った以上に私たちの間に距離があった。……ワタシ突キトバス勢イデ鎌形ニブツカッタワケ?

 おそらく異常事態とも言える状況に思考がややズレたことをお許しください。

「鎌形っ」

 色濃くなった赤い光が眩しすぎて私から鎌形が見えなかったけど、気配が分かるという不思議はまるっと無視して声のした方へ二、三近づきながら腕を伸ばした。この手が届くと信じて。

「――っ、白石さ……!」

 鎌形の声は途切れた。




 まあね、結果から言うとさ、届かなかったんだけどね。かすりもしなかったからね。もうね、すごくすごく言いたいことがあるわけよ。相手がドン引きするくらいにあるの。それなのに数瞬あとには私の方がドン引くって何? と言いますかね、何があったの、あんた。

 私が怒りに叫ぶ前にそんな死んだような顔して、相手にわめき散らさないでよ。驚いて、言いたいこと忘れちゃったじゃないの。あんたに乱暴しようとした奴ら止めるの少し怖かったんだからね! じゃなくて、この私の行き場を失った怒りはどうしたらいいのよー! 馬鹿ーっ!!

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