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女主人公と女友達の異世界トリップ  作者: ヌエドリ コトルー
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 ………………う、気持ち悪い……目蓋が重い。私どうなった。無事? 生きてる? 五体満足? 死んでない? 欠落してない?

 どうしよう。目を閉じてるせいか光を感じないんだけど。あれか? 召喚はどこぞの神殿の中で行われて、私はそこにいるのか? 暗い屋内に? 硬く冷たい大理石の上にでも横たわっているのか? それにしては冷たさを感じないぞ。硬さも感じないし……。あれれ? そういえば私、今どんな体勢でいるわけ? 上とか下とか、右とか左も分からないんですが!? モシカシテ平衡感覚イカレテル? 居ル場所ハ屋内ノ床ノ上トカデハナイ?


 うわ、マジか。マジなのか。そうなると目を開けるのがとても恐ろしく感じるんですけど。空中に浮いてたらどうしよう。超嬉しいかも! あ、いや、状況によりますよね、はい、すみません。はたまた結界か何かに護られて深い水の中とか森にいたりして。……結界の護りとか憧れるけど、これは全然嬉しくない。それこそ戦地だったらもってのほかだよ! あり得ない。私戦う能力無いから結界消えたらグサッとやられてすぐ死んじゃうよ! イヤー!! そんなの嫌に決まってんだろ!! まだ死にたくないよお、え~ん。


 うん、なんか落ち着いてきた。少し頭の中を整理してみようかね。確か、友達と出かけた先でたぶんだけど魔法陣出現。それぞれが足下の光にのまれて先に友達が消えた。私も意識を失った。どのくらい寝てたかは知らないけど、意識を取り戻した私は体を動かすのも目を開けるのも億劫なくらい気分が悪かった。今もそれは変わらない。

 平衡感覚がおかしいらしく、自分の体勢が分からない。居場所も確信を持って断言できない。だから目を開けるのを渋ってる。ふむ、ふむ。

 あ~まあ、情報欲しいけど、今の私には視覚での情報収集は気が向かないわ、ムリ! どうしよっかな。目がダメなら……耳か。耳に頼ろうそうしましょ。おっしゃ、音来い! 周りの音から何か分かればいいな~。


 ………………………………。


 うん、今さらだけどさ、耳を澄ましても静寂だね。すんごく静かでなんにも聞こえません。私の周囲には何もないのかな? それとも結界が音を遮断してるとか? それなら仕方ないけど。

 そもそも結界張ってあるのかな? まさか聴覚までおかしくなったわけじゃないよね? そしたら私、泣いちゃうよ? ビービー泣いちゃうよ? ……え、泣く前に目を開けろ、周囲をしにん、しろ? ……目視ならわかるけど、しにんてなに……自分で調べろって。わわっ、分かったから怒らないでひぃぃ! 頭の中で平身低頭した私。

 ふと、体に何か触れた。ような気がしたら幾らか気分が良くなった。おや? 静寂に包まれていたはずだったのに、遠くから木の葉が擦れ合うような音が微かに届いた。よよよ。誰かのささやく声も聞こえるような。……え、誰かいたの? よく聞き取れないけど、もしかして友達か!? 友達なのか? ならば勇気を出して目を開けてみよう! 

 俄然開眼することに意欲が湧いた私は祈った。


 近くに友達がいますように。変なのがいませんように。友達がいますように。変なのより友達がいますように。友達がいることを切望します! 私の体勢がおかしくないことを切望しますっ! 知らない人はいりません! 友達いたら許可します! だから友達来い! ここにいて! いてくれー!!


 カッと目を開けた。

 結果、どこかの外の地面に仰向けで倒れていたことを知った。同時に眩しさのあまり強く目を閉じたことは言うまでもない。


 め、目が痛い……! くそっ、まさかの屋外かよ! 視界に快晴の青が広がりましたけど!? 目蓋の裏に光も熱も感じなかったから、外で倒れてるとは思いもしなかったよ! ……寝起きの目には厳しいなあ、おい。

 とりあえず起きるために手をついて上体を起こした私は、体の怠さに呻いた。続いて感じた軽い眩暈にも呻いて、目頭を指で押さえた。

 なんだこの怠さは。気持ち悪さは最初よりましになったけど、こりゃきつい。これが召喚されて異世界に来た証か? …………わ、分からん。絶賛体調不良真っ只中だっていうのは分かるのに。どうなってんの、私の体さんよ。


 目頭から指を離して顔を上げた。どういうわけか目を開けてから、地面の冷たさや暖かな陽射しを感じることができる。なぜだ? いやいやそれよりも、気になることが。

「………………緑の、オンパレード……」

 これでは語弊があるかもしれない。視線を少し上げれば空の色も入るから、正確には緑と青である。


 地面に座ったまま辺りを確認するために顔を上げると、すぐ目の前に広がった緑の世界。思わず出た言葉だけど間違っていないと言ってやる。

 何が緑かって? それは私が座ってる地面に生えた薄い色の緑と、私の左右を高~く囲んだ濃い色の緑の壁のこと。壁と言っても板や石じゃなくて、生垣。樹木を植えて並べてつくった垣根。生垣だよ! 座ってるせいか高さはかなりあるようだ。横にも延々と続いてるように見える。生きる植物の無言の圧力を感じる。こ、怖いけど、それにしては美しい眺めだなあ。

 この生垣、とぉ~っても綺麗に真っ直ぐ刈り込んで整えられているから、ある意味眼福ものです。きっと専門の職人さんが手がけたんですね。すごい! 職人さんすげぇぞ! 感動ものです。なにげ癒やされております、体調不良は治りませんがな。そんなことを高くそびえ立つ生垣を見る私は思った。

 そして思う。生垣とは家や庭の外側を囲んだり、境界線の役目がほとんどなはず。あと観賞用とかかなたぶん。エキスパートじゃないから曖昧だけど、よく日本で見かけるものと似ている。……つまり、ここは異世界じゃなくて地球の日本かもしれない。出かけた先で魔法陣の光にのみこまれたけど、あれは自分一人か、または友達と一緒に見た白昼夢だったのではないかと。

 そこまで考えてハッとした。

 白石さん! 

 今し方思い出した友達の存在に慌てて辺りを見渡すが、左右は背の高い延々と横に続く緑の壁。前後は何もない幅一メートルくらいの、まるで吹き抜けたような通路。そこに私は倒れていた。ほかに誰もいない。


 目を開ける前に誰かの声を聞いたのに。直前には自分の体勢もそうだけど、近くに友達がいることを強く願ったのにすっかり忘れていた。なんと薄情なんだ私! それでも人間か!? いや、人間だけどさ、私。え? 忘れるとかあり得ない? ほんと薄情すぎる? …………うん、自分でも思ったから。屋外にいた事実や体の不調に気をとられたのは認めるよ。だからもう言わないで、今度こそ泣けてくるから。しくしく。


「……白石さん、どこ?」

 私ぼっちだけどぼっち慣れてないんだよ。一人でいるのは好きだけど、ここ私の家じゃないし。余所の場所だし。白石さんいないから今ぼっちだし。

「…………マジ、どこだよここ」

 どこかに誰かいるかもしれない知らない場所に一人とかやめてくれ。それでなくともさっきまで友達と一緒にいたんだよ! 忘れてたけどさ。そこは謝るから出てきてくれよ、我が友よ! あなたに対する友達としての認識も私のなかで中の下から中の中に昇格させるから。心の中であなたのことを苗字で呼ぶようにするから出てきてくれよ、お願いします。え、意味分からない? 他人に分からなくてもいいんです! 私は困りません。切実なんですこれでも。


 ――――主。


 声が聞こえて、心細さからいつの間にか俯いてた顔を上げた。途端に後ろから強い風が吹いて小さな悲鳴がこぼれたのは仕方ないだろ。本音を言えば、マジ怖ぇ。である。鳥肌ものでした。お天道さまの下で突然ホラー的なことはやめてください。少なくとも今の私は知らない場所にぼっち状態だから小心さに拍車がかかってるのよ! たいしたことなくてもビビってしまうのよ!

 …………えぇえぇ、もちろん振り返ってみましたとも。風の吹いてきた背後をね。こういうときは何かいるんだから。異形でも凶悪な狼でもなんでも来やがれぃ! き、気合いでぶっ飛ばしてやるんだからっ。

 意を決して体をずらして顔を向けた私は、しばし呆然とした。

「大丈夫ですか?」

 そこには、想像したのとだいぶ違うカワイ子ちゃんがいた。金髪碧眼の、赤色のドレスを着たとても可愛い女の子が。


 誰!?

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