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ブルークラスタ・イン・ワールド  作者: 天地
02 《神に最も近い都》アンスタッド
7/20

03

 その男は目頭を揉みしだきながら、万年筆を転がした。間違っても紙にインクがにじまないよう、慎重に。

 年の頃は六十歳前後だろうか。真っ白になった頭は、長年の苦労を思わせる。ひげもきっちり整えられているが、残念ながら、それは疲労をごまかす役にはたってくれなかった。体格も悪くはない。引き締まっており、それなりに鍛えられているであろう事は窺えた。と言っても、その肉体にも陰りが見える。政務に忙殺され、体を動かす余裕がなくなれば、当然の結果だった。

(いかんな。休んでいる暇はない)

 気を取り直し、未だ霞む目を引きずりながら、ペンを手探りで探した。探し当てたそれを手の中に納めて、怨敵へ――つまり、いくら処理しても減らない問題へと向ける。こうすることで、少しでも死んでくれる事を願いながら。

 不毛な事ではある。と、アウグスト・アルハンサートは思っていた。いくらやっても減らないならば、それを処理する理由がない、意義が見えない……

 当然、ただの泣き言である。処理せねばならぬ理由など、それこそ探すまでもなく大量にある。政務とは、つまりそういうものだ。一見無意味に見えるそれを、延々と精算し続ける。自分が死ぬか、それとも無意味を疑えなくなって投げ出すまで。生憎と、アウグストはまだどちらでもなかった。

 それに、

(この国の抱える問題など、他国に比べればまだマシなのだろうしな)

 つまらない背丈比べではあった。どうせ喜べるほどの差はない。だが、まあ。自分を慰める役には立ってくれた。

 上には上がいる。いや、この場合は下には下だろうか。自分がまだマシだと思えば、一日中部屋にこもって書類だけを見て過ごすのも、意味があるとごまかせた。

 と、内容を確認してペンを走らせようとした所で、ドアがノックされた。

「誰だ?」

「旦那様、わたくしでございます」

「グーノスか。入れ」

 重い扉は音もなく開かれ。姿を現したのは、アウグストよりさらに一回り年老いた男だ。執事以外に受け取りようのない、堂に入った格好である。

「どうした?」

「面談を希望しております。ギルドに依頼した冒険者が来たようですな」

「ほう、それはまた珍しい」

 思わず唸りながら、つぶやいた。つまりは、それほど希なことだった。

 アンスタッドに、優秀な冒険者は少ない。そもそも絶対数が少ないし、その上大半が魔力の扱いも不十分な未熟者だ。

 魔力を扱えないものに、冒険者はつとまらない。いや、そもそも街の外に出て、最低限の命の保証も得られない。魔力とは、生命を強くする力だ。魔力を扱えないと言うことはつまり、魔物に対抗する手段がないと言うこと。

 青魔力ブルーマテリアル青魔力操作能力者ブルークラスタ。人間に親和性のある青魔力を体内で群体と化す力が発見されて、さほど長い時間は経過していない。それでも、適正を持つ者の少なさから、今後爆発的に増えることはないと言われている。

「わたくしが対応いたしましょうか?」

「いや、ここに呼べ。優秀な冒険者であれば、顔くらいは合わせておきたい」

「承知しました」

 すっと自然に頭を下げて、煙のように消えた。どれだけ働いても、まるでぶれない動作。

 たまに思うことがある。自分などよりもグーノスの方が、遙かに領主に向いているのではないかと。

 当然、そんな事はない。そもそも適正が違う。だが、彼が休む姿を全く見せずに、精力的に働き続ける所を見ると、うらやましさが押さえられないのだ。彼のように働ければ、書類の数くらいは減ってくれたであろうか。

「失礼します」

 開いたままの扉から聞こえる声は、グーノスのものではなかった。もっと若い。

「入ってくれたまえ」

 足を進めてきたのは、一人の少年と一人の少女だった。そう、両者共に子供であった。

「ええと、このたびは雇っていただいてありがとうございます」

「いいや、かまわんよ。こちらも仕事を依頼して、適正がある君たちが紹介されただけだ」

 明らかに使い慣れていない敬語を使う様は、ほほえましいと言っていい。冒険者という視点から見れば、頼りなさは否めないが。

「俺、いや、私がノスで、こっちがアリアです。ほら」

「……よろしくおねがいします、おじさん」

「ちょっ」

 少年の陰に隠れるようにして、少女がぽつりと言った。それなりに取り繕おうとしている青年と違って、こちらは完全に子供だ。

 ただのくたびれた初老の男の視線にすら怯えている。全く戦えるようには思えない。が、そんな想像は何も意味がないのだと、アウグストは知っていた。ブルークラスタはあらゆる予想を裏切り、凌駕する。

「すみません」

「いや、かまわんよ。よろしく、お嬢さん」

「……はい」

 なるたけ優しい笑顔で言うと、少女から僅かばかりおびえが消えた。こういう地道な作業は、大切だ。特に、相手が優秀な冒険者ならば。

「しかし、瞳の魔族が時の森族の少女を身内にする、か……」

「何か?」

「いや、珍しいと思ってな」

 よく分からない、という風にノスは首を傾げた。

 一般的な認識で、魔族の、それも瞳に特徴がある者たちは、酷く危険である。ある意味において、もっとも魔物に近い類人種。だからこそ、魔族と名付けられたのだ。彼らは総じて、極めて個人主義だ。もっと簡単に、社会に属するのに向かないしむしろ邪魔、と言ってもいい。

「時の森族の少女を守って歩いてるのも、アンスタッドに冒険者として来るのも、わざわざギルドに所属するのも、全部さ」

「そうですか? まあ、他の人なんて知りませんけど」

「おかしいと言えばそうだが、まあ、それらしくもある」

 つまり、彼にとって同族がどう振る舞っているかなど、興味の埒外であり。興味がなければ、他人でしかないのだろう。

 極めて瞳の魔族的。極めて冒険者的。なるほど、面倒なメンタリティであるが、わかりやすくもある。

「失敬、雑談をしてしまったな。それで、君たちは何ができるのかね? 簡単でいいから教えてくれ」

 と言ってペンを持ち、記入するふりをする。

 それが正しいか知る術もなく、ましてや切り札など教えまい。魔力が漏れていない事で、最低限の保証もされている。聞いたところであまり意味はないのだが、まあ、形式美みたいなものだ。

「私が剣と魔法を使えます。でアリアが……」

「魔法つかえます」

「ほほう、それはそれは」

 アウグストは思わず唸った。魔力操作は難しい。放出に使うのと肉体強化に使うのとでは、別の操作が必要だと聞いている。それに、実際両方の使い手が少ない。話が本当ならば、以外に掘り出し物かもしれない。

 ――アンスタッドでは、冒険者の数が少なく質も低い。それは、国家が運営する騎士団も同様だった。もっとも力を持っているのが、各宗教団体である。

 彼らは教義に則って、人々を守っている。彼らが人を守れば、冒険者と騎士の需要が減る。それと同時に、人々は教団と神感謝して、そちらの道を目指すだろう。人手不足の両者は、さらになり手がいなくなる。だが、それはまだいい。問題は、従っている相手が国ではなく神である事だ。彼らは神のためならば、容易くとは言わぬまでも、最終的には国を裏切るだろう。忠実でなくてもいい。それなりに融通の利く戦力が、アンスタッドには必要なのだ。

 それに、国家の版図を広げるには、冒険者の力が不可欠だ。聖職者と騎士は、国家が影響を施せる範囲の、内側を守る。単純に影響力を広げる為には、冒険者に敵を打倒し、地理と魔物の情報を持ち帰ってもらわねばならない。

 もし本当に、前衛後衛両方の役割をこなせるならば。こうして顔を合わせたことに、大きな意味があった。

 書き込んだふりをして、白紙の紙を脇に置く。

「ふむ、それでは輸送団が動くのは明日になる。休める場所は、上等なものではないが用意してある。よろしく頼むよ」

「はい、こちらこそ」

 ノスはほっとした様子で答えて、ドアから出て行った。去り際、手を振ってきたアリアに答えるのも忘れない。

 二人の姿が消えると、入れ替わるようにしてグーノスが入ってきた。

「怪しい二人ですな。監視を置きますか?」

 目に、僅かに剣呑な光が乗る。それをアウグストは、手で制した。

「いや、あの二人はただの根無し草だ。余計な手出しは必要ない。それよりも、任務に成功したらねぎらいの言葉と、報酬に少し色をつけてやれ。今はそれでいい」

 それに、と続ける。

「今回はオルトン教の協力を得られた。何かやれば、あちらが対応するだろう」

「かしこまりました」

 意見を却下されても、いささかも動揺を見せない。グーノスとはそういう男であり、執事だ。

 彼の体が下がり、ドアも閉められる。再び、一人の空間がやってきた。張っていた気を緩めて、肘をつく。

「彼らが、少しでもアンスタッドの役に立ってくれるといいが……」

 各教団は完全に一枚岩だ。それだけに、暴走されれば止めようがない。それを牽制する力は、のどから手が出るほどほしかった。それこそ、ただ一人、一人前の冒険者がいるだけでだいぶ違う。

 アウグストは再びペンを手にとって、政務を再開した。もう、余計な思考はない。

 ただ何かに命じられるように、狭い室内に、ペンの音だけが響いた。


  ●○●○●○●○


 朝も早く――

 小鳥のさえずりが聞こえるし、木々も涼やかな羽音を立てている。仕事日和とは、こういう日を言うのだろうか。

 彼にとっても、お荷物がなければそう言って良かったかもしれない。

「ほら、いい加減起きろよ」

「んーうー……」

 アリアの体をゆすってみる。が、彼女は寝ぼけなまこに目をこするばかりだった。何とか自力で立つ事は出来ているのだが……この場所に来るまでは、背負ってきていたのだが。さすがに仕事のために人が集まっている場所でまで、そうするわけにはいかない。

 冒険者らしき人間は隅に追いやられているが、それ以外の人間は忙しそうだった。つまり、輸送馬車を運営する面々だ。何を積んでいるのか知らないが、大量の物資の最終確認をしている。それも、もうすぐ終わりそうであったが。

 隅で円陣を組んでいた冒険者たち(全員青いもやを立ち上らせていた。人手不足は本当に深刻なようだ)も、とっくに待機状態に移っている。つまりは、もうどれほどもせずに出発をする時間だという事だ。

「ほら、いい加減起きろ」

「うー……あとごふん」

「だめだって。まったく……仕方ないな。《ブルー・覚醒》」

 呪文を唱える。ほかに、特に何を意識せずとも、魔力が勝手に形になるのを感じた。

 ほとんど閉じていたアリアの瞳が、ぱちりと開く。文字通り、意識がはっきりと覚醒していた。もう眠れないだろう。

 初級魔法・覚醒。文字通り、目を覚ますための魔法だ。意識を遮断されるタイプの状態異常にしか通用せず、便利性は低い。だが、魔法職でなくとも使える初級魔法と言うことで、多くのプレイヤーに使用されていた。まあ、現実でこれを使うならば、もっと有効活用できる手はありそうだが。

 アリアの背中をぱんと叩いて、しゃきっとさせる。

「ほら、もう人が集まってるから。配置を聞きに行くぞ」

 彼女の反応も確認せずに、冒険者たちの方へ歩いて行く。そうしてしまえば、一人取り残されたくないアリアも、ついてくるしかない。案の定、後ろからてこてこという足音が聞こえてきた。

 冒険者のリーダー格の男は、何か書類を眺めている。そこに話しかけた。

「すみません、俺らの配置を聞きたいんだけど」

「あん? ああ、お前らか……」

 男はノスの顔を確認すると、少しだけ申し訳なさそうにした。

「悪いな、お前らはあっちに合流してくれ」

 と、指さしたのは――神官の一団がいる方向だった。ちょうど一斉に祈りを捧げているのか、やや俯き加減に、手を合わせている。

「行けって言われれば行きますけど。なんでまた?」

「ほら、俺らはコレだろ?」

 コレ、に併せて、リーダーは手を掲げた。何の変哲もない、ただのごつい手のひらだ。ただし、うっすらと青が滲んでいるのを除けば。

「はっきり言って、お前らとじゃレベルが合わないんだ。こっちに合わせてくれなんて言ったら、それこそ宝の持ち腐れだしな」

「そういう事なら、まあ……」

「すまんな」

 微妙に嫌そうな雰囲気を出して言う。と、リーダーは気づいたようで、もう一度手を合わせて謝った。

(ここでわがままを言っても変わらないだろうなぁ)

 変わったとして、それはろくな結果にならない。少なくとも、信頼には大きく傷がつくだろう。

 諦めて、ノスは宗教家の一団の方に足を進めた。正直、足取りはすごく重い。

「お兄ちゃん、大丈夫?」

「んん、あー、大丈夫じゃないかな」

 心配げに声をかけてくるアリアに、曖昧に答える。断言したところで、信じてはもらえないだろう。何しろ、彼女は知っている。

 ノスは、と言うか恭一は、聖職者でプレイした事がなかった。

 あの独特な雰囲気が苦手であった。それに、的に直接攻撃する手段が限られるというのも、性に合わない理由だ。所属する宗派によっては、直接攻撃方法が存在しない所まである。後は、恭一にはImRに興味はないのも理由だ。ブルークラスタ・オンラインは、あくまでRPG、アクションとして楽しんでいたのだ。聖職者では、半強制的にImRをプレイするようになる。

 理由が一つ二つであれば、試してみようとも思えたのだろうが。これだけ重なってしまうと、試す気にもなれなかった。

 と言うわけで、ノスには聖職者の事がほとんど分からなかった。それこそ、設定すら大雑把にしか掴んでいない。聖職者の動きや立ち回りだけは、仲間がプレイしたのを見て知っている。

 祈りが終わるのを待ち。一番近くにいた、金髪の女性へと話しかけた。

「すみません、こっちに混ざるように言われてきたんだけど」

「はい?」

 振り返った女性は――

 冗談のように美しかった。

 まっすぐに輝くセミロングの金髪。碧眼の目を形のいいまぶたの中に押し込んでいる。顔はほっそりとしているが、肉付きも十分にあった。絶妙なバランスで揃っている。体もすばらしいものだった。分厚い布を重ね合わせた服装であるにも関わらず、つきだしている胸元。サイズを聞けば、きっと驚くほどだろう。

 気を抜けばころっといってしまいそうな美貌。しかし、ノスは何とか耐えた。

(危なかった……これでいい尻の形が分かっていたら、俺はやられてたかもしれん)

 非常に馬鹿な事を考えながらも、表情にはおくびにも出さない。これで尻の形が分かっていたら、確実に耐えられなかっただろうが。

 とにかく、友好的な印象を作ろうと近づいたのだが。それはすぐにしっぱしいた。彼女の眉が、いきなりへし曲がったのだ。

「遅い! 今まで何をしていたのですか!」

「いや何をって」

(あんたらが祈り終わるのを待ってたんだけど)

 と、言える雰囲気でもなさそうだった。

 ちなみに、彼らがこの場所にたどり着いたのは、ノスたちよりも遅い。そして、たどり着くなりすぐに祈り始めていた。ノスが気づくのも遅かったが、どの道話しかける機会は、そう多くなかった。

 強い視線。それが、ノスの顔を確認して、さらに強まった。

「瞳の魔族ですか」

 つぶやきには、強い敵対意識がある。

 厄介ごとになりそうだ。早くも確信して、嫌気がさした。見ると、背後にいる聖職者たちが、同情の視線を飛ばしている。

「私の指揮下に入っても奔放でいられるとは思わないことです。指示には絶対服従をしてもらいますから」

「まあ、聞くつもりではあるけど……」

「あなたの安い言葉になんて期待していません。態度で表しなさい」

 ぴしゃりと言われて、ノスは口をつぐんだ。

 これは面倒くさい相手だ。反論せず、聞き逃すに限る。重なる言葉に、適当に返事を返した。どのみち反論のしようがない。

「そもそも、このような場に子供を連れてくるのが言語道断なのです。危険を鑑みるのであれば、安全な場所に預けるべきでしょう」

 彼女の言は、おおむね正しい。少なくとも一般的な視点では。

 異世界から来たなど予想できないとか、アリアはこう見えてこの場では二番目に強いとか、そもそも子供を安全に預けられる心当たりを持つものがどれだけいるんだとか、いろいろあったが。面倒なので、全部切り捨てる。

 言葉の矛先は、大抵ノスに大してだった。耐えて話し終わるのを待てるならば、それでもよかったのだが。

 ふと、今度はアリアの眉が危険な曲がり方をしているのに気がつく。このまま話を続けると、こっちが暴走しかねない。

 それは、非常にまずかった。なぜなら、恐らく、ではあったが。アリアは肉弾戦でも、この場のノスを除く全員を叩きのめす能力があるのだから。

「あのさ、その辺にしてくんない? ええと……」

 言葉の中に無理矢理割り込んで言う。

 彼女の格好を見ながら、少し考えた。宗派ごとにカソックは違う。当然彼女のそれも、宗派独特のものであるはずはずだ。記憶のそれと、服装を重ね合わせる。そして、該当を見つけて、言葉を発した。

「リーマルス教の聖職者さん」

 変化は、劇的だった。雪のように白かった肌を、真っ赤に染めて。危険域を遙かに超えて、眉が天を向いた。

「オルトン教です!」

 絶叫を置き土産にして。彼女は肩を怒らせて、ずんずんと歩き去ってしまった。

 後に残された、その女性以外の全員――うち一人がこちらによってきて、耳打ちした。

「悪かったね、マリー――マリーメイア司祭は《神託》関係で、ここの所、ちょっと余裕がないんだよ」

 神託、という言葉には、聞き覚えがあった。確か、聖職者専用のクエストのようなものだ。言葉が曖昧になるのは、それがまったくのImR関連クエストだからだ。さわりは知っていても、詳しくはない。

 聖職者にとって、神の声は絶対的なもの。それが達成できないとなれば、いらだつのも仕方ない。

「と言うわけで、許してあげてくれ」

「ああうんそうね、気が向いたらね」

 これはダメだ――耳打ちしていた人は思ったのだろう、すっと離れた。

 気持ちは分かるし、哀れだとも思う。だが、その矛先を理不尽に向けられてまで、大人にはなれない。と言うか素直に言って、関わりたくない。

(まあ、完全に関わらない訳にはいかないんだろうけど……)

 つまりそれは、またあのマシンガントークに晒される、という事も意味していた。

 憂鬱ではあったが、今更仕事をキャンセルするわけにもいかない。こちらは明日に食う金すら困っているのだ。たかだかこの程度で、えり好みをできる立場にはなかった。

(金を稼ぐって大変だなぁ。父さん母さん、今までありがとう)

 届くかどうか分からない感謝を、虚空に投げかけて。

 とりあえず近場のオルトン教徒に、話しかけた。内容は、忘れられているであろう、ノスとアリアの配属についてだ。

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