03
冒険者ギルドまでの道を間違えることは、さすがになかった。
まだ慣れた道とは言いがたい。だが、数日は毎日欠かさず通っている道なのだ。足取りがよどむことは(それこそアリアが騒ぎでもしなければ)間違う事はない。
「あ、あの!」
と、歩いているところで、マリーメイアから声がかけられた。
アリアの人が近くにいるとべったり張り付いてくる癖は、まだ抜けない。今こうしている間も、右手を動かせないくらい抱きしめていた。その上、マリーメイアを睨み付けているものだから、歩きにくいことこの上ない。
とりあえず立ち止まり、聞いてみる。
「何?」
「家のカギも閉めていないのですが、大丈夫なのですか?」
「大丈夫だよ、魔法でロックしてあるから」
「そ、そうなのですか……? 魔法って便利なのですね」
少々困惑した様子であったが、納得された。
正確に言えば、魔法だけではない。ついでに(アリアが)トラップを仕掛けたりと、割と危険地帯である。
「所で、俺からも聞いていい?」
「え? はい! 何でも聞いて下さい!」
始めて相手された――そう言いたげに、彼女は胸を張って言った。口元をにやけさせてさえいる。
だが、その彼女に、ノスは冷淡とすら言える口調で言った。
「なんでついて来てんの?」
「ええ!? だって……」
視線をさまよわせながら――ついでに手の方も彷徨わせて、一巡した後にこちらを見た。捨てられた子猫が、助けを求めている――それが素直な感想だった。だが、残念ながらそれは飼い猫である。首輪にも、しっかりと主人の名前が記されている。
「俺はアリアに冒険者ギルドに行こうと言った覚えはあるが、お前に言った覚えはないぞ」
「そうだそうだ! あっちいけ! 帰れー!」
ちなみに。アリアは親しい人が近くに居ると気が大きくなるたちだ。その上、マリーメイアをよほど嫌っているのか、態度にも言葉にも容赦がない。
邪険に扱われて、彼女は瞳に涙を貯めていた。下唇を噛み、服の端を握って耐える姿に、先日の凛々しさは全くない。
(そうか、こいつ誰かに似てると思ったけど)
「帰れー! かえれってーっ!」
「う……ぐす……」
瞳は決壊寸前だった。それをいいことにアリアはさらに強気になっている。
子供の言葉で泣かされかけている現実はともかくとして――その仕草を連想する相手は、すぐに見つかった。
(こいつ、アリアがでかくなったらこんな感じなんだろうなっていう印象まんまなんだ)
一度思いついてしまえば、とたんに親近感が沸く。何と言うか、庇護欲やら父性やら、そういったものを強く刺激された。
我慢が結界を始める前に、アリアを抱き上げて黙らせた。
「ま、来ちゃいけないって訳じゃないしな。あんまり余計な事さえしなければ、別にいいさ」
その言葉に、二人の表情は全く対照的だった。涙を振り払い笑顔になるマリーメイアと、一転不機嫌になるアリア。
「わたし、あの人きらい……」
「知ってるよ。仲良くしろとは言わないさ。ほっとけばいい」
「うー……」
不満げに唸るアリアを下ろして、後は頭をがしがしと乱暴めに撫でる。そうすると、彼女は不機嫌な時にいつもするように、胴体に張り付いてきた。甘えたい、けど気分が悪いから邪魔をする、そんな所だろう。なんだかんだ言って、これで許してくれるあたり子供であり、またかわいい。
歩き始めて、ついでに背後に声をかけた。マリーメイアは、服の袖で目元をぬぐっている最中だ。
「あんたも、そんな所にいると置いてくぞ」
「待って下さい!」
小走りになって追いつき、隣に並んだ時。目は赤いままだったが、しかし元の気の強さは取り戻していた。
「あと、あんたと言うのはやめて下さい。私のことはマリーでいいです」
「はいはいマリーマリー」
「返事は一回!」
と、言いながらも。どこか機嫌が良さそうな、軽快な足音。
やっぱり、この娘はちょろかった。
そこから少し。多少時間を食っても、冒険者ギルドにはすぐにたどり着く。と言うよりも、すぐにたどり着ける立地に住居を求めたのだ。冒険者ギルドの近くは、そういう人間が集まっている。つまり、ならず者のたまり場だ。希望をするのも、手配をしてもらうのも、時間はいらなかった。
相変わらずの壊れかけたドアを開く。中身まで、いつものままだった。
「ちっすラナちゃん。仕事入ってる?」
「今日も来たの?」
呆れたように、定位置のカウンターに座った受付嬢――ラナが声を上げた。
「別に毎日来られても、そう新しい依頼なんて来ません」
「でも、突発的な依頼が入ってるかもしれないだろ? 始めて来た時みたいに」
「……本当に暇なのね」
「仕事が入れば暇じゃなくなるのさ。と言うか、ここで暇じゃない冒険者ってそんなにたくさんいるの?」
「そう言われちゃうと、それまでなんだけど」
カウンターに(やはり、アリアに張り付かれたまま)肘をついて話しかける。おどけたような言い方に、彼女も軽い調子で返してきた。
出会いこそ問題があるものであったが。今ではこうして軽口をたたける程度にはなっていた。
「ところで……」
カウンターにつかれた肘を払いながら、ラナは目配せをした。
その先にいたのは、マリーメイア。彼女は一瞬見られたことにきょんとしながら、しかし大人しくしていた。ただ反応の取りようがなかっただけかもしれないが。
「あなた、やっとパーティーを組む気になったのね」
「マリーはただの付き添いだよ。それにパーティーなら、最初からアリアと組んでるだろ?」
「何言ってるのよ。アリアちゃん、この駄目人間が何かしたら、すぐに私に言うのよ」
「え? あの……うん」
言葉をかけられて――すっと彼女は、ノスの影に隠れた。一応、それでも顔だけは半分覗かせている。が、やはり逃げられたのには変わりない。
う、と詰まるラナを、にやにやと見下ろした。
「まだお前にゃなれてないってよ」
「うるさいわね」
ぎん! と音がしそうなほど、強い眼力で睨んでくる。対冒険者の窓口だけあって、胆力は相当なものなのだ。思わず目をそらしそうになってしまう。
ふう、と息を吐いて落ちつくラナ。そして、一枚の丸まった紙を取り出した。
「まあ、仕事が全くない訳じゃないのよ。条件付きだけど」
「本当にか!?」
ノスは歓声を上げて、詰め寄った。その分だけ素早く身を引いたラナが、ぴっと指さす。マリーメイアの方を。
「条件がって言ったでしょ? この仕事、浄化が必要だから要神官なのよ。彼女とパーティーを組むなら、あげられるんだけど」
「は?」
身を戻して、少し悩んだ。悩んで、結論など出ず。結局聞いてみる。
「なんでそんな仕事が入ってくるんだよ。ここなら、どっかの教団が勝手に解決するんじゃないのか?」
「さあ? 私はただの受付だし。漏れただけか、それとも教団に持って行けない事情があるのか。判断はあなたに任せるわよ――パーティーを組むかどうかも含めてね」
言われて、嫌な空気を感じながら、ノスは振り返った。
そこにあったのは、マリーメイアの満面の笑顔。それはもう、これでもかとういくらいに眩しく……そしていやらし笑顔を浮かべていた。
「ふふ、ノスが望むのであれば、パーティーを組んでやらんこともないぞ?」
「ぐっ!」
呻きながら、しかし一線は堪えた。
本当ならば、ここで頭を引っぱたきたい。パーティーを組む組まないは別にして。とりあえず、叩いてすっきりさせたい。
だが、今の彼は、お願いをする立場なのだ。まさか「ちょっと態度に腹が立ってぶっ叩いたけど、パーティー組んでね」とも言えない。拒絶したら、それこそ懐の危機だ。これから何があるのか――生産能力を生かして金稼ぎは失敗した訳だし――分からない。稼げるところで稼ぐ必要はある。
「ほらほら、どうしました? お願いをすれば、組んであげない事もないですよ?」
さらに図に乗って――こんな所もアリアにそっくりである――胸を張る。さらに、勝ち誇ったように鼻を鳴らされて、
ノスはキレた。
「いらんわんな仕事ぉぉぉ! いいさ見てろよ! 別のやり方でも、必ず稼いでやるからな!」
絶叫しながら、ずんずんと出口へ進んでいく。
今度はマリーメイアが慌て、ひしっと抱きついて動きを止めた。地味に挟まれたアリアから、ぺしぺしと攻撃をされながら。
「待て、待って! 分かった、組んでほしいです! 私も仲良くしなきゃいけないのに調子に乗りすぎましたごめんなさいごめんなさい謝るから止まって下さいいぃぃ!」
「……騒がしい連中ねえ」
ずるずると、人間二人を引きずるノスの後ろで。ラナはそんなことを呟いていた。
かぁぁん! と音を鳴らしたのは、杖の先端部分である。素早く振り下ろされたそこが、偶然硬い石に当たったのだろう。
打ち下ろした本人、マリーメイアは、杖を持った右手をいっぱいに伸ばしながら構えている。同時に、むやみやたらと威厳を発していた。
彼女の格好は、すでに先ほどまでと違う。どこか野暮ったくも整った私服から、法衣へと着替えていた。装備品自体は、個別魔力領域にでもしまっていたのだろう。少し身を隠すと、すぐに着替えてきていた。ある意味一番簡単で一番強力な魔法ではないか、とも思える個別魔力領域であったが。さすがに使用しただけでは、着替えまではしてくれなかった。
ノスとアリアも同じように着替えて(マリーメイアは着替えにアリアを連れて行こうとしたが、すごく嫌がられて断念した。さすがに中身が12歳ともなれば、それなりに羞恥心があり、別所で着替えたが)集合し、直後の姿がこれであった。
はっきり言って、まるっきり別人だ。ノスはそう、素直に認めた。先ほど何度も涙目にされた人間と同一人物だとは、とても思えない。
彼女を嫌っているアリアですら、目を見開いているくらいだ。
「では、行きましょうか」
「…………」
「…………」
厳かに言いつつ、今度は杖の頭を前方の建物――大きな廃屋――に向けた。それを沈黙して、ただ見ている二人。
マリーメイアーは振り返り、怪訝そうに眉を曲げた。
「どうしたのですか? いきなり黙り込んで」
「いや……」
「ねー」
思わず二人は、目を合わせて言い合った。彼女の眉が、さらに潜まる。
「これから浄化作業に移ると言うのに、なぜそんなに気が抜けているのですか。もっとしゃんとして下さい」
「いや、だって」
ノスはつぶやき、マリーメイアのような誰かを指さしながら言った。
「マリーがさっきまでとほとんど別人になってるから、戸惑ってるんだが」
「ああ、その事ですか」
ふふん、と胸を張って、マリーメイア。
(自覚と言うか意図があるんかい)
言葉は、とりあえず内心に秘めた。
語りたげなので、放っておけば勝手に説明してくれるだろう。それを聞いてからでも遅くはない。もっとも、いつ言ったところで早くも遅くもならない気はしたが。
「法衣を肌にかけると言うことは、つまり神にその身を晒す、という事なのです。これを着ている限り、我々はオルトン神の名に傷がつくまねをするのは許されません。だから、我々は法衣を着たら、己を律するようにしているのです」
ふと、ノスは首を傾げた。実際に言葉にしたのは、アリアだったが。
「見てるのはいつもじゃないの?」
「いいえ、違います。私たちは住まいを正し、そこで始めて主をお迎えいたします。信徒たるもの、神の御前では精白たらねばならいませんから」
二人がオルトン神に興味を持ったと思ったのか、誇らしげに語るマリーメイア。しかし、気づいていなかった。彼らの視線が、言葉が進むごとに三白眼に近く疑わしげになっている事を。
「お前……それって都合のいい部分だけ見せてるって事じゃないのか?」
「なっ!」
言われ、マリーメイアがうろたえる。
「違います! あくまで、私たちはもっとも良き瞬間を神に捧げようと!」
「それが、いいところだけ見せようって魂胆に見えるんだよなぁ」
「つごうがいいことばっかりいって、わるいところ見せないんだ。わるいひとだね、お兄ちゃん」
「あうううぅぅぅぅ……」
ぼそぼそと(ギリギリ聞こえる程度に)囁かれる声に、マリーメイアが情けない声を上げて。そしてついに、地団駄を踏んで叫び始めた。
「仕方ないんです! 神様も暇ではないんです! 常に信者全員を見ているわけにないかないんです! だから自分から見ていただくという姿勢が大切なんですうううぅぅぅ!」
だんだんと音を立てて、ついでに杖も振り回しながら。マリーメイアは息を荒らげた。
ちなみに、この時点でアリアはノスに隠れていた。と言うか、盾にしていた。この子もさりげなく、神経が太くなりつつある。まあ、今のところは、マリーメイアを相手にしたとき限定だろうが。後が怖いものである。
「分かった、俺が悪かったから。落ち着けって!」
杖を奪って動きを制し、なんとか暴れ回るのは止められた。唇は尖ったままだし、完全にふて腐れているが。
ぶすっとして視線すら合わせないようにしている彼女。優しい声色で話しかけ、なんとか気を引く。
「いや、本当に悪かったって。ちょっとからかいやすいから、やり過ぎちゃうだけなんだ」
中身は、完全に駄目人間の言い訳である。言った彼自身ですら、ちょっと正直すぎたかもしれない、と後悔した。
だが、マリーメイアには効果があったようであり。そっと視線を戻すと、微妙に甘えるような上目遣いをした。実際、子供じみたり苦手な態度を取ったりとで目立たないが、恐ろしい美人である。ノスは自分の心が、ちょっと揺らぐ音を聞いた。
「では、神の御言葉に耳を傾けていただけますか?」
「ふざけんな」
「えー……」
まあ、音はすぐに収まったが。
本気でそれでいけると思ったのか、彼女の声は酷く不満そうだ。勧誘活動に熱心でもいかさまじみたことはしないあたり、真面目かつ率直な人間ではあるのだろう。ありがたい相手ではある。だが、なぜこんな奴をよこしたのか、オルトン教の意図が分からない。顔見知りというのも無関係ではないだろう。だからこそ、社交辞令でも家に上げる発現をしたのだし。それを加味しても、もうちょっと人材がいそうなものだが。
(引き込むつもりにしては、間抜けすぎるんだよなあ。やる気が先行しすぎて、空回りしていると言うか……)
あるいは、だからこそかも知れないが。
実直さは時として、強烈な魅力を発揮することがある。下手な手出しをするよりも、そちらに期待する方がいいと判断したのかも知れない。
どちらにしろ、それはオルトン教上層部の判断だ。マリーメイア本人すら把握していない可能性もある。
「ところで、私も聞きたいのですが」
未だ落ち込みから回復しきれず、弱々しい口調。
「……なんで二人してそんな格好なのですか?」
言われて、自分の格好を見直してみる。どこに特徴があるという訳でもない――普通の服だ。やや地味な色合いだという点以外は、本当に言うべきところがない。まあ、さすがに『装備品』ではあるのだが。ゲーム内でセカンドキャラに序盤よく使用されている布防具、である。
「別に変じゃないでしょ?」
「変ではありませんが……なんで輸送任務の時と、装備が違うのです? あちらの方が強力に見えたのですが」
「あんなもん着てられるか!」
と、半ば怒鳴りつけるように言った。
ブルークラスタ・オンラインの装着型アバターは、単体だけだと機能しない。既存の装備品に取り付けると、装備品自体の外見がアバターのそれに変わる、という形式を取っている。だから、装備を変更しても外見を同じにするならば、いちいち設置し直さなければならなかった。かなり面倒くさい使用であり、不評でもあった。なので、これをプレイヤー側が独自に調整した方法がある。と言っても、そんなに特殊な事ではないのだが。要は、よく使う装備品をセットにして、それぞれにアバターを貼り付けっぱなしにする、という方法だった。これならば、装備を変えても、別のアバターセットになる。
しかし、ノスとアリアにとって、これが問題になった。
この世界に来て気がついた事の一つ。アバターと装備を切り離せなかったのだ。装備品自体がそういうもの、という事にされてしまったと言うべきか。とにかく、アバターそのものが装備となってしまったのだ。装備の元の外見は、地味なのだが(だからアバターが売り物になるのだが)。同時に、アバターの外見とは装備のそれと真逆の、一般的な目で見れば真っ当でないものばかりである。
使用頻度の高い装備、つまり強力な装備ほどアバターが貼り付いている。と言うか、所持している全装備に張り付いている。
それは、アリアにしても同じだった。むしろ彼女の方が、外見的には酷い。やたらかわいらしいものや、なぜか無駄にエロいものや、そんなものばかりだ。彼女のアバターは、全てもらい物である。《シーウォーク》の皆が渡したものを使用している。魔法使い系は防具を多く揃える必要があるのだが、それを軽くカバーできるアバターの数だった。趣味で選んだものじゃないのだから、無理に使わなくてもいいのだが……せっかくだからと、全て利用していた。
二人が強さを選べば、無意味に目立つ外見以外に選択肢がなかった。得にアリアなど、エロいタイプのアバターを着用していたら、下手をしなくてもお縄につく。当然、ノスが。
「だからって、その格好はないと思うのですが……」
「いや、これだっていい装備品なんだよ?」
「お兄ちゃんが作ったんだもん。つよいからだいじょうぶだもん」
むっとしながら、アリアが反論する。
確かに、それなりに強力な装備ではある。強化値が外側から見えない事を考慮しても。だが、キャラのレベルと合ってないのも事実ではあった。
「ほら、アリアも言ってるだろ? 大丈夫だって」
言葉を重ねて、説得を試みる。あまり上手く言っているようには見えなかったが。
わざわざ安全を放棄してまで装備を変えたのは、確信があったからだ。浄化任務と言うことは、敵の種類をある程度推測できる。つまり、弱点を突ける。それに、本来教会に回っていたはずの仕事だ。マリーメイアクラスで対応できる敵ならば、大層な装備品は、かえって邪魔なだけだ。
「もっと強い装備があるのに、見た目を気にして装備しないというのは、かなり抵抗があるのですが……」
あごに手を置きながら、むむむと悩むマリーメイア。
ノスたちにしか分からない情報があり、また事情があるとは言え。常識的な判断をしているのがマリーメイアの方だというのは、言うまでもない。安全より外見を優先するというのは、まあ、プロのやる事ではないだろう。
下手をすると、町中でも裸同然の格好をした冒険者はいた。これは極端な例だが、つまりそういうものではあるのだ。
とはいえ、ノスも引けなかった。現代日本人として二十年近く培った羞恥心、それをすぐ捨てられるほど、まだ悟ってはいない。
相手が正しい以上、説得する方法というのも、あまりない。そもそも、正義漢かつ頑なな相手という時点で、説得できる自信などなかった。結局、選択したやり方というのは、
「ほらほら、いいからいいから!」
「ああちょっと、押さないで下さいよ!」
勢いに任せて、仕事を始めてしまう、という事だった。
無理矢理背中を押して、建物の中に入っていく。マリーメイアも抵抗するが、カンストプレイヤーのそれに勝てるわけがない。どんどんと押し込まれて、そのまま扉の中に入っていった。