それは既定事実
空が蒼かった。
少女はその目に染み込む色を眺めながら、ふと、心に宿る哀しみを感じた。後悔はしていない。それでも果てのない哀しみが彼女を襲う。覚悟していた――はずだった。
「赦してください、なんて言いません。だから、だから……」
それ以上、少女の口から言葉が漏れることはない。願う事も、救いを求める事もできず、ただ自らを嘆き前に進む事も叶わないのか。
――こんな運命……。
さらさらと流れていた風が突然、ごうっ、と強くなった。髪が靡き、双眸から雫が溢れる。その瞬間、自分が弱くて儚い存在に成り下がってしまった気がした。否、すでにもう、あのときからそうだったのかもしれない。
少女は背に聳え立つ大木の鼓動を感じながら、そっと後ろを振り返る。もう彼と今生で逢うことも無い。できない。自嘲の笑みが、自然と少女の口元に広がる。
いくら万物が澄み渡り、この土地が豊かになろうと、血が絶えず続こうと、この世に不変のものなどないのだ。
「さようなら、――」
最後の呟きは風に呑まれ音にならなかった。それ以降、少女がこの場所を訪れることは二度となかった。
そして哀しき運命は、因果は、因習は、今日も覆る事無く巡り巡り、廻る。