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数光年先へは、装置を使うことによってあっという間に行けた。
「A型恒星ですね。恒星大気の成分比は、太陽と似ています。推定年齢70億ですから、主系列星の後期に差し掛かったところですね。我々がここにいるあいだはこの恒星はフレアを出すこと以外攻撃をしてこないものと思われます」
艦橋に来たコルイットを見つけると、すぐにガルバイが近寄り、簡単に報告をした。
「では、すぐに燃料の調達を行え」
「すでに実施しております。補給艦を収容するまでは、船を動かすことはできないそうですが、途中で切り上げて、要員を回収して出発することは可能です」
「そうか、ならば、現在はそのまま行え」
「了解です」
ガルバイは、外で作業をしている作業員に、現在の船の燃料要領を知らせた。
「今のところ、2パーセント充填できた。補給管を固定し、交代してくれ」
向こう側で、作業員の班長が現状を報告しながら、母船へ寄港する。
代わりの要員は船の中で出発をするための最終確認をしていた。
「気圧服、よし。コントロールメーター、よし。えっと後は…」
一つ一つを確認しているのは、次の作業員のリーダーをすることになっている矢井が、必要な装備の最終確認をしていた。
その後ろでは、佐々井がその様子を確認している。
「ダブルチェックは当然だからね」
「ですね」
そして、確認作業が全て完了すると、矢井を通して佐々井へと報告が入った。
「確認終了、出発します」
「了解、では、艦長へ報告をしてから、出発を許可する」
艦長へは、すぐに連絡が行き、即座に出発許可が下りた。
矢井は、許可が下りてからすぐに船外へと向かい、作業を引き継いだ。
作業と言っても、14次元跳躍飛行装置の燃料回収はほぼ全自動のため、止まらないように見はるだけだ。
途中にある中継器に4人の作業員が出て、燃料回収のデータを監視するのだ。
母船においては、その中継器のデータと母船のデータをつきあわせて、正常に燃料が入っているかを確かめているのだ。
燃料は、恒星から放出されている電磁波を、特殊な鳥もちのようなもので巻きつけ、逃がさないようにしてから、中継器へと収納する。
そこから、鳥もちを取り除き、電磁波を電気信号へと変換してから母船に送る。
母船につくと、電気信号を再び電磁波へと変換し、必要に応じて、電磁波にレーザーガンを当て、素粒子を作り出し、そこで同時に発生する反粒子を、素粒子と対消滅した瞬間に発生するエネルギーを、燃料としてその場で消費する。
なお、使わない電磁波は、トカマク式核融合炉のような、強力な電磁場によって、管理されている。