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地球へ向けての航行方法は、まず通常エンジンがある。
スペースシャトルを打ち上げるために使うような、液化酸素と液化水素をつかってのエンジンである。
しかしながら、このエンジンだと到底生きて帰れることはできないだろう。
本船には、もともと冥王星まで行き帰りが1年間でできるための必要なものも積んである。
それが、14次元跳躍飛行装置という特殊なエンジンである。
このエンジンは、空間に穴をあけ、最大で1万光年を一瞬で進むことができる。
そのため、繰り返し使用すると数時間で往復することもできる。
だが、連続して使う場合は、それぞれの素粒子レベルで分解されるという実験もあり、連続使用は3回までと厳格な規定があった。
船先を地球へ向けてから、再び動き出すまでにわずかな時間しかかからなかった。
艦長室でコルイットが、通常エンジンが動き出したことを聞くと、伝令に対して指示を出した。
「船外活動を許可する。船外の被害および状況報告を。それと、技師を呼んできてくれ。エンジンについて話が聞きたい」
「わかりました、船外活動の許可をだし、船外の状況、被害の報告をします。技師については、どなたがよろしいでしょうか」
「確か、物理の博士号を持っている士官がいたはずだな。えっと、名前は…」
コルイットは、手元に置かれている画面をタップして、全乗組員名簿から該当する人物を割り出した。
「ガルバイ・エンタードン中佐、シバリエ・サスカット大佐、ヒロガリ・バルドン大佐の3人だな。仕事よりもこちらを優先するように伝えてくれ」
「了解しました」
敬礼して、艦長室を出ていく。
すぐに、コルイットの耳にも聞こえるような放送がかかった。
「ただいまより、船外活動を許可します。各部署の船外活動員は、外壁および船外の状況を確認し、被害報告を行ってください。なお、ガルバイ・エンタードン中佐、シバリエ・サスカット大佐、ヒロガリ・バルドン大佐の3名は、すぐに艦長室へ来てください」
それを2度繰り返し、放送は切れた。
呼ばれた3人は、すぐに艦長室へ来た。
「君たちを呼んだのは、14次元跳躍飛行装置の使用に関することだ。今回、9万光年という超長距離の宇宙になぜか弾き飛ばされてしまった。このため、早急に地球へ帰還する必要があると思う。だが、通常エンジンでは、それこそ太陽が赤色巨星になり、白色矮星になったとしても到着することはできないだろう。だから、この装置を使用するしかないのだが、この距離、何度で飛ぶことができると思う」
コルイットは、3人がそろうとすぐに内容に入った。
「本船が積んでいるのは、140kptのものです。9万光年飛ぶためには、最低でも10回は必要となるでしょうし、燃料が途中で枯渇すると思われます」
ガルバイがすぐに答える。
「燃料はなんなんだ」
「赤色超巨星が崩壊する際、スカラーグラビトンというスカラー場に従うグラビトンが発生します。これを使用することになるのが最も効果的とされておりますが、必要量に達することは極めて困難だとされています。現在では、入手が困難なスカラーグラビトンの代わりに、太陽などから恒常的に放出されています電磁場を閉じ込めることにより生じる特異的な反粒子を使用しています」
シバリエが、ガルバイに続いてコルイットに言う。
スカラー場というのは、ポテンシャルエネルギー、すなわち、位置エネルギーを表すひとつのやり方である。
グラビトンをスカラー場であらわすのは、14次元という状態を平面状態からの位置エネルギーとしてあらわして、量子化したものだそうだ。
「太陽か、となると、近傍恒星を探せば、燃料問題はいったんは解決か」
「そう言うことです。ただし、最低でも2回は補給が必要となるでしょう。現在の燃料がどこまで残っているかが分からないので、もしかしたらさらに補給が必要となることも考えられます」
ヒロガリが最後にコルイットへ伝える。
「では、現在の燃料の残存量を確認し、最短経路で帰還できるように調査をせよ」
3人は、敬礼をして艦長室から出て、すぐに指示された調査を行い始めた。