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大規模な太陽嵐の発生連絡から6時間が経過すると、船の外の色が変わりだした。
「きたようだな」
コルイットが船外モニターを確認しながら言う。
地球側にあるカメラから見た映像には、緑色をした光の帯が、うっすらとあった。
「オーロラか」
「ええ、電磁シールドに接したようです。地球の電離層と同じような働きをしているようなので、オーロラが観測できたのでしょう」
そばにいた参謀長が、コルイットの言葉に反応して、近寄って説明をしている。
「いつまでこの状態が続くんだ」
「地球が抜けるには1時間ほどかかったと報告があります。同じほどかかるでしょう」
「なら、1時間半を見ておこう。その時に、完全に抜けたかどうかを確認する。それまでは、本船のエンジンは一時停止、慣性飛行としたうえで、待機の命令を出す」
「わかりました」
伝令の代わりに、参謀長がマイクで船内に放送をかける。
エンジンを停止するのは、放出するエネルギーによって、電磁シールドに対して影響を及ぼさないようにするという目的がある。
「しかし、ここまできてオーロラが見れるとは思わなかったな…」
コルイットがつぶやいた。
しかし、1時間、2時間、3時間と立ったが、一向に太陽嵐が消える見込みはない。
コルイットは、非常事態を船内全域に布告したうえで、地球へそのことを通信しようとする。
「だめです。地球だけでなく、他のどのアクセスも受付できません」
伝令がコルイットに報告をする。
「磁気嵐のど真ん中だからな、それは想定済みだ。抜けてから報告をすることにしよう。次、この磁気嵐はいつまで続くんだ」
「推定では、すでに終わってるはずなんですが…」
参謀長がいう。
「周囲の測探を進めてますが、太陽嵐の中にいるということもあり、現在位置は不明です。この磁気嵐の帯がどこまで続いているのかを含めて、です」
「なら、不明ということなんだな」
「残念ながら…」
「では、これは我々で何とかするしかない。エンジンを暖めろ。慣性飛行は現時点をもって終了とする。磁気嵐を通過しだい、地球へと連絡を取る。ただし、それまでに連絡がつけばいいんだが…」
コルイットの切なる訴えは、しかし届くことはなかった。