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大臣室では、しばらく祖父と二人で話していた矢井だったが、話したかったことはすべて話したようで、立ち上がり、敬礼をしてから部屋を出た。


それから実家に帰ると、すでに着いていた書類を親から渡される。

「ようやく将官候補生になれたか」

海軍大将の両親は、そう言って矢井に渡した。

「やっとね」

矢井は居間の椅子に静かに腰を下ろす。

略装ではあるが、軍服を着ていた。

「私服には後で着替えるわ。それよりも、おじいちゃんに聞けなかったことがあるんだけど、聞いて大丈夫かな」

「内容によるな」

矢井の父親が、すぐに答える。

「おじいちゃんがいつも言っていた五省って、どんな意味なの」

「海軍では教えているし、他でも教えているとは思っていたがな」

「…ごめんなさい」

「五省とは、至誠(しせい)(もと)()かりしか。言行に恥ずる勿かりしか。気力に欠くる勿かりしか。努力に(うら)み勿かりしか。不精に(わた)る勿かりしか。この5つを常に省みろと言う意味だ。すなわち自らが、誠実でなかったか、言行不一致でなかったか、精神力は十分だったか、努力を怠ってなかったか、不真面目でなかったかという5つを特に重要なものとして、常に反省せよということだ。もとは大日本帝国海軍士官学校にて教えていたものだが、その精神はいまだに息づいている」

「…私はどうだったかな」

母親が静かに語る。

「この5つは、人としても必要なものばかりよ。だから、常にこれらに気を配り、人と仲良くしなさい。将官候補生となったのですから、人の気持ちを考えて、言ったことは実行し、努力を怠らず、真面目に生きなさい」

「…はい」

矢井の決心は、既に固まっていたが、それを両親が後押しした。

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