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地球の軍港に到着すると、すぐに艦長が放送をかける。
「これより、休憩のため上陸する。帰還日時を指定する。3日後の1200には持ち場についているようにせよ。以上、解散」
解散の命令を受けると、艦長含めて、乗組員全員が船から降りた。
それからそれぞれが行きたい所へ、バラバラに散っていった。
矢井は、海軍省の大臣室へ向かっていた。
海軍省受付で、自らの所属と名前をいい、IDを見せると、すぐに省員が案内してくれた。
「こちらでございます」
省員は、エレベーターに矢井を乗せ、12階にある大臣官房の部屋まで案内をした。
大臣室には、秘書と矢井の祖父と中将の肩章を付けた人が椅子に座って話していた。
矢井は、中将の左目の下に明確に縫った痕が残っているのを見て、すこしびくついたが、すぐに気合を入れ直した。
「将官候補生 矢井中佐来たか。こちらに来なさい」
矢井は海軍大臣としてこの場にいる祖父に言われるがままに、祖父の隣にある空きスペースに座った。
「何でしょうか、海軍大臣閣下」
「まずは祖父として、孫娘が無事に将官候補生になれたことを誇りに思う。これで、後はひ孫の問題だけだな」
「ひ孫は妹が産んでくれましたので、大丈夫だと思いますよ」
四十路を6年ほど前に通り過ぎた矢井は、嫌味な口調で言った。
「まあ、早く結婚しなさい。それよりも、今は旧友の息子から、今回の航海についての話を聞いていたんだ」
矢井は立ち上がって、敬礼をする。
その中将の人は、答礼を矢井に返すと、さきに中将が座り、それから矢井は座った。
「申し訳ないですが、崑崙に乗船していらしたのですよね」
「そうだ。だが、一番暇であることが求められる部署に所属していたが」
中将は言った。
「…医務部ですか」
その時、海軍大臣がその中将を紹介した。
「衛生中将の崑崙喜一郎だ。崑崙の医務部の部長を務めており、副艦長を兼ねている」
「どうぞよろしく。と言っても教育師団にいる間だけとはなるが」
社交辞令を言いあってから、矢井は崑崙中将に聞いた。
「そういえば、聞きたいことがあったのですが、よろしいですか」
「ああ、いいよ。答えられる範囲で答えよう」
「今回の試験で、最初に撃たれた方は、どうやったんでしょうか。あれは、実際に撃たれた感じでしたが」
崑崙中将は、にやりと笑って、そのからくりを話した。