表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/31

(24)

矢井の耳には、佐々井からの言葉が聞こえていた。

「おめでとう、合格よ」

「…え?」

目をゆっくりと開けると、目の前にいた部下たちが、宇宙服を着たまま拍手をしていた。

さらに、艦長からも音声が入ってくる。

「これで、全員合格だな。今回は、9回目までで終わったか。ま、いつも通りだな」

そう言って、艦長が指示をした。

「矢井中佐、撤収せよ。そして、着替えたら、艦長室へ」

「はい、了解です」

矢井がそう答えると、部下がその場でC-4を片づけ始めた。

「…どういうことですか」

佐々井に矢井が聞く。

「後で分かるわよ。ちゃんとね」

佐々井は、この時にはあまり語ろうとしなかった。


宇宙服を一人で脱ぎ、近くにある洗濯機にいれておく。

乾燥までは自動で行ってくれるため、3時間ほどは放置することになる。

それから先は、再び戻って、ハンガーに掛けたりして、整備をすることとなっている。

だから、それまでは矢井は艦長室へ行き、話を聞く事となる。

「失礼いたします。矢井中佐、ただいま参りました」

ノックを2回して、中にいる艦長へ言う。

「入れ」

ドアを開け、中へ入る。

「失礼いたします」

一礼をしてから、ドアを閉めて、艦長が座っている机のすぐ前におかれている椅子のところへ行く。

「座れ」

艦長が言うと、矢井はその椅子に座る。

「君のおじいさんが、出発する前によろしくと言っていた。孫娘をよろしくと」

艦長が机の下にある引き出しから、茶色のファイルを取り出した。

「さて矢井中佐。今回の航行の目的を述べたまえ」

「はい、将官となるため、それぞれの兵科に応じた力量を試す訓練航海と聞いています」

「その通りだ。そして、今回のテロや攻撃は、その力量を調べるためのフェイクだ。簡単に言ってしまえば、全ては芝居だ」

「…つまり敵もいなければ、あの爆弾も偽物と言うことですか」

「そういうことだ」

艦長は、矢井にあっさりと言った。

「将官になるためには、友人より1通、所属部隊長より1通、さらに訓練航海の艦長より1通の計3通が必要となる。推薦状を発行する者は、発行される者と同等または上級の階級である必要がある。その上で、君の友人の佐々井大佐より、推薦状が提出されている」

「佐々井大佐から…」

「そして、私からも、君の昇格についての推薦状を出すつもりだ。すでに矢井中佐所属の師団長より推薦状はいただいている。この航海は、私が推薦状を出し、将官となるにふさわしいかを見定めるためのものだ。君は、それに合格した。おめでとう」

艦長が立ち上がると、矢井はばね仕掛けのように立ち上がった。

「はい、ありがとうございます。将の位に恥じない行為をいたします」

「それでいい。では、戻りたまえ。これから地球へ帰還してから、正式な航海へと出る」

「了解しました」

椅子のところで敬礼をし、そのまま扉のところへと戻り、再び敬礼をした。

「失礼いたします」

浅く礼をしてから、艦長室から出た。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ