(22)
ハッチから出ると、速やかに穴があいているであろう場所へと向かう。
「穴を発見。これから中に入る」
矢井が佐々井へ連絡を入れる。
「了解、どうなっているか分からないから、気を付けて」
「了解しました」
矢井が佐々井へ返事をしてから、穴の形状を確認しながら、穴のふちに立つ。
重力が船の中心へ向かって発生しているため、穴にふちに立てるのだ。
「穴は、普通の大人が5人ぐらい縦になって入れるほどの大きさね。私なら7人分は余裕ね。横はその半分から3分の1ぐらい。内側から外側に向かって、明確に爆風が飛んだように、外側に向かってめくれてるわね。中は薄暗いわ。ライトをつけましょう」
そう言って、背負っている生命維持装置の横についている懐中電灯を部下に取り出してもらい、矢井がすぐに前を照らし出す。
「鉄骨や隔壁がごちゃごちゃになってるわね。ケーブルも千切れたものが散乱してるわ。穴のところから内部の爆発残留物の検査をしましょう」
矢井が言うと、後ろで待機していた部下の一人が、爆発物の残留濃度を調べるための装置を矢井に手渡した。
穴の近くで装置を起動させ、アンテナ部分を中へ静かに入れる。
「HNIW、HMXその他爆薬の痕跡は無し。RDXのみ、顕著に反応してます」
矢井が佐々井と艦長へ報告を行う。
「どこにあるか分かるか」
「お待ちください…中にあるようなので、捜査を開始します」
「分かった、許可しよう」
艦長がそう言ったのを受けて、矢井は穴の中へと入った。
「電気はすべて消えてるわ。破片がそこここに浮かんでいるわね。結構危険よ。でも、エネルギー貯蔵庫は無事のようです。あ、ここ濃度高い」
矢井がアンテナをしまい、探知機を濃度が高い方向へ向けながら調べていた。
「あ、爆弾がありますね…すごい量ですね」
「どういうことだ」
「これもってて」
艦長が聞いているが、矢井はそれよりも部下とニッパと装置を交換した。
「オフホワイト色をしたレンガ状のものが、1mの立方体になるようにして置かれてます。おそらくC-4でしょう。あ、全てに雷管が刺さってるみたいですね。リードは、近くの木の箱の中へすべてつながっています。箱の中は…ああ、起爆装置ですね。電線がまとまって一つの装置につながってます。これを止めればいいと思います」
ニッパをもちながら、矢井が艦長と佐々井に言っていた。
「では、これから解体作業に移ります」