(21)
矢井は外へと出るために最寄りの外出ハッチへ向かった。
「隔壁解放。最寄りの外出ハッチはどこ?」
隔壁が開かれて、待機していたヒロガリに、現状を伝えると、すぐに通路を空けてくれた。
後ろの部下が、矢井に答える。
「この先を右に曲がってください」
「この先を右ね」
十字路を右に曲がると、すぐに扉があり、宇宙服が置いている部屋になっていた。
「では、私についてくる人は」
宇宙服の部屋に着いた時、その場にいる4人に聞いた。
全員がうなづいた。
宇宙服をひとつ手に取ると、自動的に船内への扉がロックされた。
「空気が漏れないようにする措置ね。手順通りね」
矢井が、宇宙服を今着ている服の上から着ながら言った。
白色の超強化ビニールで作られた宇宙服は、全身をすっぽり覆うことができる雨合羽のような感じだ。
背中には生命維持装置を背負い、全身どこからも空気が漏れないように、接合部はゴム膜でおおわれる。
微小隕石が来たとしても、電磁バリアの範囲内であれば、そもそも船に近寄る事さえできないし、大きめの隕石が来たとしても、あらかじめ警報を発してくれるため、避けることができる。
「これでよし」
矢井が着替え終わると、周りを見回す。
順次ビニールの密閉作業が終わっていくようだ。
「全員、相互の密閉を確認せよ」
そう言って、前にいる班員の腰のところにある赤いスイッチを押す。
これが、船内の空気を吸い上げて、密閉されているかどうかを確かめる。
空気が漏れないのであれば、入った空気が外に漏れないということなので、パンパンになる。
一定の気圧になれば、自動的に外へ排出され、もとの状態へと戻る。
これを前後の人に押してもらい、2回確かめる。
両端の人は、同じ人に2回押してもらい、確かめることになっている。
1分で、全員の確認が終了した。
「確認終了を確認。艦長、矢井中佐です。これより外へ出ます」
「了解した。ハッチを開放する」
ハッチは、艦長の手元から出ないと操作ができない仕組みになっているが、外から中へ入る時は、すぐ横にあるパネルに、10ケタの暗証番号を入れることによって入れる。
一瞬で空気がなくなり、残った水分がきらきらと光り出す。
「…おそらく、ヒロガリ大佐が見たのは、これね」
そう言いながら、開かれたハッチを通り、船の外へと出ていく。