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矢井が爆発物処理用の装備に身を包みながら、エネルギー貯蔵庫へ入った。
「ここの隔壁が閉じてますね。爆発を探知して閉じたんでしょうか」
矢井がすぐ後ろを歩いている佐々井に振り返りながら聞いた。
「そのようね。向こう側できっと爆発が起こったのよ。問題は、ダイヤモンドダストが発生した原因ね。なにがある?」
「断熱膨張による気温低下。それに伴う飽和水蒸気量の低下により、空気中の水分が析出。壁などに結露として生じる前に、さらなる気温低下により、空気中で凝結した。そんな感じでしょうか」
矢井が佐々井に言いながら、隔壁を開ける前に、まずは、そのあたりに爆発物がないかどうかを調べている。
「機械によれば、このあたりに爆発物は観測できないわ。やっぱり、この隔壁の奥ね」
エネルギー貯蔵庫は、中央に隔壁がある以外は小さな体育館ぐらいの大きさのエネルギー保管装置があるだけだ。
壁面には、走査をするためのコンソールが付いているが、普段は全て格納されている。
必要に応じて、音声操作か手動操作によって取り出す仕組みだ。
今回は、音声操作ができるため、矢井がAIに向かって言った。
「隔壁の向こうの状況を教えて」
直後に、流暢な日本語で話しだす。
「本船、エネルギー貯蔵庫、隔壁外側の状況は、セ氏マイナス260度、カ氏マイナス436度、人間が居住するにはきわめて危険です。ほぼ真空状態であり、空気成分は感知できず」
「そう、ありがとう」
矢井がマイクをその場に置いた。
それから、佐々井と相談をする。
「ここを開ける前に、外から修復するのが先のようだな」
「そのようですね。艦長に言ってから、外から検査を行います」
「分かったわ。艦長からは私から伝えておくから、現場の指揮をお願いね」
「はいっ」
矢井と分けた班員達を見送ると、佐々井は艦長へ連絡をした。
「佐々井です。ええ、今外へ向かわせました。次は矢井中佐の番ですね」