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すぐに手元へ引き寄せたマイクを使って、AIへ呼び掛ける。

「ヒロガリ大佐だ。この霧を除けてくれ」

何も答えずに、掃除機のような音が聞こえてきた。

徐々に霧が晴れてくる。

「空気清浄機ではなくて、全部吸い取るようにAIが替えたんですね」

シバリエがヒロガリに言う。

「そのようだな。さて、再び検査を開始せよ。空気はどうだ」

「湿度は急激に低下、現在20パーセント。酸素濃度がやや低いです。窒素は通常通り…ヘキサニトロヘキサアザイソウルチタン|(HNIW)、シクロテトラメチレンテトラニトラミン|(HMX)、並びにトリメチレントリニトロアミン|(RDX)を感知」

「緊急脱出!」

ヒロガリが報告を聞いた途端に叫んだ。

「艦長、船内の爆発物をすぐに確認してください。それと、爆発物処理班を」

「何があった。簡単に報告を」

艦長へ直接電話をするためのスイッチを押しっぱなしにして、早口でヒロガリが伝える。

「爆発物の残留物を感知。RE係数1.7以上の物が3種類もあります」

RE係数とは、TNTを1とした時に、どれほどの量が必要になるのかというひとつの指標である。

この計算式を分母とし、分子を1とすれば、TNT1kgと同程度の爆発を引き起こすことができる。

今回は1.7ということなので、約0.59kgでTNT1kgに匹敵する爆発を引き起こすことができるということである。

なお、TNT換算でどれだけの爆発力をもつかを知りたいのであれば、そのもののRE係数をかけることになる。

例えば、ペンスリットという爆薬であればRE係数1.66のため、ペンスリット1kgはTNT1.66kg双頭の爆発を引き起こすということとなる。

「分かった。では、すぐに砲術から数名を行かせよう。隔壁を解除。15秒で閉じるから、その間に脱出せよ」

「了解」

ヒロガリが叫んでから30秒以内に全員がエンジンのエネルギー貯蔵庫から廊下へ移り、そこから15秒間開けられた隔壁から、さらに船内の深くへと移動をした。


5分後までに、緊急招集をされた砲術からの派遣された人たちが集まった。

ヒロガリのところには、すぐに矢井が聞きに来た。

「爆発物が感知されたそうですね」

「ああ、そうだ」

「何が感知されたか、聞いてもいいですか」

「HNIW、HMXそれにRDXの3種類だ。全て空気中で感知された」

「なんでそんなものが…」

「俺に聞かれても分からん。だが、前出てきた敵らと関係があるかもな…」

「まだいるんでしょうか…」

心配そうにしている矢井に、すぐ後ろから佐々井が声をかける。

「そんなことよりも仕事よ、仕事。爆発物を処理しない限りは、こちらの方々の作業ができないんだから」

「敵を探すのは、それからでもできるしな。それに、すでに全艦を調査したけども、誰一人として見つからなかっただろ」

「そうですね。では、これから爆発物の処理をはじめます。すいませんが、次の隔壁より向こうまで下がっててもらえますか」

「分かった」

ヒロガリは、矢井にそう言って班を率いて隔壁を示す黒色のラインの向こう側でこちらを見ていた。

「佐々井大佐、隔壁を」

「分かったわ」

佐々井が指示をして、隔壁を閉じさせた。

「では、これより爆発物処理を開始します」

矢井の指示で、霧がすっかり晴れたエネルギー貯蔵庫へ入った。

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