(18)
ガルバイたちは、速やかに命令を受けてからエンジンルームへと向かった。
「ここが、エネルギー貯蔵庫だ」
銀色の隔離区域と書かれた扉の前に、防護服を着た人たちが集まっていた。
「レベル2の隔離状態が常時敷かれているため、調査に与えられる時間は、1時間だ。いいか、隊長にわずかでも変化があったり、生命装置から警報音が聞こえたら、速やかに離脱せよ。報告は後でかまわない」
指揮を任されているヒロガリが、その場にいる総勢12人全員に話した。
「では、入ろう」
持っていた軍の身分証を、扉の右にあるカードリーダーにあてる。
ピピッと電子音がし、扉が解錠された。
取っ手に手をかけると、一気に右側へスライドさせる。
「いいか、1時間だ!」
言うと、すぐに煙で満ちた部屋が現れた。
即座に通路にある隔壁が閉じる。
「隔壁が」
「あわてるなっ。まずは、エンジンのエネルギーを検査する。この煙の分光検査を開始せよ」
後ろにいた中佐に命じて、煙の検査から始めた。
「水…いいえ、氷ですね」
「氷だと」
「ダイヤモンドダストです。空気が零下15度以下になった時、空気中の水分が凍りとなる気象現象です」
「どういうことなんだ。ダイヤモンドダストになるような状況ではないはずだ。セ氏20度になるように設定されているんだから」
ヒロガリが部下に聞き返す。
「残念ながら、事実のようです」
ヒロガリはその話を聞きながら、部屋の中へ入る。
「この霧を追い出すことが先だな。空調設備は」
「現状、起動しているようです。乾燥を続けています」
「追いつかないのか…」
「どうしますか」
部下の一人がヒロガリに聞く。
「当然進む。現状を確認次第、復旧作業へ」
「了解」
ヒロガリが入った部屋は、せまかった。
「おかしいな、図面ではもっと広いことになっているのだが…」
覚えている部屋の図面を頭に思い浮かべながら、霧の中を手さぐりで進む。
「だれか、暗視ゴーグル持ってきているか。それか、超音波探知機か」
「ここにあります」
部下からヒロガリへ手探りで渡されたのは、暗視ヘルメットだった。
暗視ゴーグルを、顔全体を覆うように拡大した者で、360度全体が見渡せるようになっている。
機能は暗視ゴーグルと同じだが、超音波による探知機能も付加されている。
そのため、霧があったとしても、周りがよく見えるようになっていた。
「む、これがコンソールだな」
ヒロガリが周りを見回してから、腰ぐらいの高さにある複数の長方形をしたパネルが積まれているのを見つけた。
「安定を保つように命令。音声命令システムを確認。マイクの感度を確認。よし、全て成城通りに働いているようだな」
まずは第1関門を突破した。