(17)
それから20分後、無事に1回目の跳躍に成功した。
それから3日開けて、2回目、3回目と回を重ねた。
「いよいよラストね」
佐々井が矢井に指示をしながら、エネルギーの回収をしていた。
「ええ、でも…」
「でも、どうしたの」
「なんだか、この恒星、ずっと同じような感じがして…」
「気のせいじゃない?だって、AIは、ちゃんと9万光年進んでいることを示しているわよ」
「うーん…そうなんでしょうか……」
その時、艦長が連絡をしてきた。
「様子はどうだ」
「ええ、こちらは順調です」
「そうか。エネルギーが120パーセントになっているから、ちょっと気になったんだ」
「ちょっと待ってください、こちらは60パーセントになってますよ」
「表示がおかしいのか?」
艦長が、コンソールを触る音が聞こえてくる。
「ダブルチェック、トリプルチェックをした結果、異常は見当たりませんでした。そちらはどうでしょうか」
「こちらも異常なしと出てきているな。誰か、エネルギー貯蔵庫を確認する必要があるようだ」
「では、自分が行きます」
ヒロガリ・バルドン大佐の声が、艦長の後ろのあたりから聞こえてくる。
「…一人では心配だな。チームを作れ。エンジンに詳しいのは、前に聞いた3人だったな。その3人に対して、命令する。現在の作業を中断し、または別の人に託し、エンジンのエネルギーシステムを緊急に点検せよ。なお、このために必要な人員は、全てヒロガリ・バルドン大佐の指揮下に入る」
「はっ」
バッと靴を鳴らして、どうやら敬礼しているようだった。
「特に、シバリエ・サスカット大佐を副指揮官とし、ガルバイ・エンタードン中佐を連れて行け」
「了解しました。自分が指揮をとり、エンジンのエネルギーシステムの緊急点検を行います」
それだけ言うと、タッタッタッと走っていく音が聞こえた。
「とりあえず、矢井中佐は、船内に戻ってきて。状況が把握でき次第、今後の対応を決定する」
「了解、では、これより帰還します」
撤収と言う矢井の声が、佐々井のところにまで響いてきたような気がした。