(15)
反対側へたどり着くと、佐々井の方ばかりをうかがっている敵の背中が見えた。
人数は5人、部屋の中から2本の銃身が見えている。
「ライフルが2丁、短銃も何丁かあるようね。一気に制圧することが良いと思うわ」
「そっちは任せたわ。三で、こちらが斉射するから、矢井中佐は斉射と同時に裏から突入を」
「了解」
銃の弾倉を確認し、慣れた手つきで銃を手におさめる。
それから、班員に先ほどの内容を繰り返し伝え、佐々井大佐が斉射するのを待つ。
数分間、散発的にパンパンと銃声がしていたが、その静寂が一瞬にして破られた。
矢井が通れるような道を除いた場所に、次々とスライムが生まれていた。
「よし、いくぞっ」
矢井がそんな状況の通路へ飛び込んでいき、真っ先に第1食糧庫へ突入する。
「包囲している。観念しろ…あれ」
意気込んで部屋の中に入ったのはいいが、先ほどまで銃を構えていたはずの人たちが、一人もいなくなっていた。
「どういうこと…?」
そう言いながらも矢井は佐々井へ連絡を入れる。
「佐々井大佐、こちら突入した矢井です。誰もいません。捜索を行います」
「分かった。捜索を許可する」
矢井が段ボール箱の間を、銃を振り回しながら捜索している間に、佐々井が艦長へ連絡を入れる。
「艦長、佐々井です。敵が突然蒸発しました」
「…そんなことあるのか」
何か楽しんでいるような声で、艦長は佐々井へ返答をする。
「現在は、部屋を捜索していますが、見つかるかどうか…」
そこへ、ガルバイの声が割り込んだ。
「AIで確認すると、まだその部屋の扉にいると言うことになってます。そのあたりを重点的に探してみてください」
「分かったわ、やってみましょう」
銃をしまわせてから、矢井へ連絡を入れる。
「矢井中佐、あなただけ扉のところへ来てもらえる?」
「扉ですか。分かりました」
佐々井は班を率いて、第1貯蔵庫の扉付近を捜索し始めた。
矢井もそこに合流し、さらに5分ほどしてから矢井の班員も捜索を終えたらしく、合流した。
「…これか」
矢井が何かの装置らしきものをつまみあげた。
「これ、何なんでしょう」
5cm角の立方体で、コードもなにもついていない、灰白色をしたものだった。
「調査部へ持っていって、調べてもらいましょう」
調査部は、文字通り、さまざまな事柄を調査する部署である。
大概の事は、そこを持っていけば分かるというものであった。