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異常を感知したのは、佐々井が率いる班だった。
「敵発見、応戦中」
「セクタを」
「A-01区。第1食糧貯蔵庫にて、敵、視認できるのは3名」
「了解、すぐに向かわせる」
ガルバディは、佐々井からの報告にすぐに反応した。
「矢井中佐、聞こえたら返事を」
「はい、何でしょうか」
わずかなノイズとともに、ガルバディのところへ声が届く。
「佐々井大佐が敵と交戦中。A-01区、第1食糧貯蔵庫だ。すぐに班を率いて応援しろ」
「分かりました、A-01区、第1食糧貯蔵庫へ向かいます」
矢井が返事をすると、すぐに移動を始める。
「現在地は、G-11区だから、6階上って、3つセクタを移動したところね」
銃口を前に向けながら、矢井が駆けだす。
コンマ以下の差もなく、矢井が率いていた班員も全員が同じ方向へ走った。
階段の踊り場で、上に敵がいないかを確かめる。
「敵は」
班員の一人が鏡で向こう側を確認し、首を横に振った。
「よし、なら進もう」
そんなことを、12回繰り返すと、Aフロアにたどり着いた。
すでに銃声が遠くから聞こえてきている。
「いくわよ」
後ろを振り返り、階段のドアを開ける。
すぐに右と左へ銃を振り、敵がいないかを確かめる。
「よし、こっちへ」
敵がいないことを確認し、再び走って銃声が聞こえる方向へ向かう。
食糧貯蔵庫前は、緑色のスライムで壁が見えないほどだった。
「矢井中佐」
「佐々井大佐。状況を」
「敵は、確認できただけで5人。それぞれ武器を持っていることは把握。ただし、武器はこちらと同じ物のようね」
「武器庫から奪ったとか…?」
「それを今考えている場合じゃないわ。それよりも、今は、前の敵を倒すだけ」
矢井は班員に目配せをして、佐々井がいる場所とは反対側から攻めることにした。
第1食糧貯蔵庫は、乾燥食料と長期保存食料が貯蔵されている場所である。
主に干物や缶詰を保管しており、水や生鮮食料は第2食糧貯蔵庫として、4階ほど下に別室を作って保管していた。
第1食糧貯蔵庫前の廊下は、曲がり角がない一直線で、両端から攻めたら、逃げ場所はないと判断をしたのだろう。
そこへ、ヘッドセットから矢井と佐々井に対して声が聞こえてきた。
「こちら、ガルバイ・エンタードン。砲術中佐。付近に人が通れそうな通路はないか。それか下や上へ抜けられるような通路は」
「いえ、第1食料貯蔵庫は、乾燥させるために、人の出入りをできる限り減らす構造になっています。それ故に、巨大乾燥機が貯蔵庫内に設置されており、外気とは一差に触れないようになっている上に、上下左右前後の全方向は、シリカゲルを敷き詰めた壁が張り巡らされているため、そこから脱出することもできません」
「なら大丈夫です。失礼を」
プツリと音声が途切れ、矢井は何事もなかったかのように、遠回りをして敵にばれないように反対側へ向かった。