「モザイク防衛」でイラン戦争は長期化!? 日本の石油戦略はどうしたら良いのか?
筆者:
本日は当エッセイをご覧いただきありがとうございます。
今回はアメリカ・イスラエルとイランとの戦いが長引きそうだという事と、日本の原油について語っていこうと思います。
◇長期化する要素ばかりが点在している
質問者:
でも、トランプさんは「ミサイル攻撃は9割減少」「ドローン攻撃は8割減少」「予定より早く進んでいる」「勝利した」などと結構楽観的な発言を連続してされていますよね?
筆者:
トランプ大統領は株価に敏感で株式相場に悪影響を与える事態が起きていないという印象を市場に与えたいのでしょう。
※将来のことは分からないという事と26年3月13日現在だということを前提に僕の話を読んでいただけたら幸いです。
質問者:
最高指導者のハネメイさんは殺されて、後を継がれたモジタバさんも表舞台には出てこないじゃないですか? (イラン国営放送が声明を発表しただけで本当にモジタバ師が生きているかも不明の状況です)
筆者:
確かにイランは最高指導者という絶対君主のような存在がおり、事実上今は機能していない状況と言えます。
しかし、イランというのは2008年ごろから最高指導者をいつ失っても戦えるような体制――いわゆる「モザイク防衛」というシステムが構築されているんです。
このシステムはイラン全土を32の地域に分割し、今回のように最高指導者や軍幹部が一度に殺されてしまってもそれぞれの地域が独自の判断でゲリラ戦など徹底抗戦をすることが可能なのです。
32地域の独自の指揮権や兵站を確保しているためにどこかを空爆すれば崩壊するという事も難しい状況です。
ロイター通信の情報ではイラン首脳部は革命防衛隊の支配権を維持しており政権崩壊の兆しは無いという分析を出しています。
そのために僕は地上部隊を投入しない限り早期に決着をつけることは困難だと思っています。
ミサイル攻撃やドローン攻撃が減ったのは弾薬が尽きたことや攻撃能力を失ったという見方も出来ますけど、「イランが本土決戦に備えている」という見方も出来なくは無いので何とも言えないというのが僕の感覚としてはあります。
質問者:
なるほど……強権的なトップを倒したからと言ってすぐに崩れるような体制では無いという事ですか……。
筆者:
その上で恐らくはアメリカとイスラエルはこの体制そのものを転覆させようと画策しているために目標は非常にハードルが高いと言えるでしょう。
しかも、過去にアメリカが侵攻したアフガニスタン65万㎢、イラクの43.5万㎢よりも遥かに広い165万㎢もイランの面積があります。
イランはザグロス山脈を始め山も多く、空爆だけではどうしても駆逐することは難しいので地上部隊の投入が必須でしょう。アメリカの友軍と思われるクルド人部隊などでは制圧できるとも思えませんからね。
質問者:
お話を聞く限りでは何だかアメリカとイスラエルの攻撃でイランが降伏する可能性は低そうな気がしますね……。
トップをやられてむしろ士気が高いような気もしますし……。
国内の革命か何かでイランの政権が転覆されるという事は無いんでしょうか?
去年はデモが起きて弾圧があったりして不満も大きいと思うんですけど……。
筆者:
昨年のデモによる弾圧は報道によって差がありますけど5千人以上が殺害され、5万人前後が逮捕されたという見方が有力です。
そのためにイラン国民の不満は降り積もり、政権転覆の可能性は確かにあると思います。
しかし、例えそれが実現したとしても「アメリカの思い通りの政権」ができるとは限らないのです。
1953年のクーデター以来アメリカがしきりにイランに介入してきたために「反米感情」というのはそれ以上にあるようなんです。
そのために、イランの混乱やホルムズ海峡の事実上の封鎖というのは続く可能性は高いと思います。
質問者:
ところで、アメリカって戦争は議会を経なければいけないのにどうして攻撃できているんですか? アメリカが自発的に攻撃をやめて終結するということは無いんですか?
筆者:
確かにアメリカ合衆国憲法第1条第8節は、正式な戦争を開始する権限を、議会の専権事項としています。
しかし、議会の宣戦布告や承認を得ていない場合には、軍事行動は60日以内に終了しなければならないと定めており、撤退のためには30日間の猶予も当時に認められているのでまだまだ猶予があるんです。
更にその期限を過ぎたとしてもイランがアメリカ軍に対して攻撃を続けている限りにおいては「自衛権行使」「先制抑止」の名目で持って攻撃することは可能になると思います。
先ほど僕が申した通り、32の行政区でイランは個別の戦いをしているので同時に反撃をやめるという事は最高指導者が機能していない状況下では難しいと思います(利点でもありリスクでもあるという事でしょう)。
そのために戦闘というのは何かしらの名目でもってアメリカは半永久的に続けることは可能では無いかなと思います。
トランプ大統領は「イスラエルの言いなり」状態なのでイスラエルの納得が得られる状況にならないと攻撃をやめることは無いでしょう(イスラエル国内でのイラン攻撃の支持率は8割なのでイスラエル側から辞める可能性は極めて低い状況です)。
◇原油は「精油」の問題から「輸入先を変える」だけでは根本解決しない
質問者:
世知辛い世の中ですね……。
様々な要素を考慮してもアメリカ・イスラエルとイランの間の戦闘が長引く公算が高いという事だけは分かったのですが、
そうなると日本において影響が大きいのは中東からの原油の輸入が止まることです。
イランからは輸入していないにしてもイランが抑えているホルムズ海峡には8割の原油が通過している状況です。
筆者:
まず一番注目されると思う電気についてですが、火力発電のうちに石油での発電割合が2.5%ほどとかなり低いために原油が止まっても直ちに電気がブラックアウトすることは考えにくいです。
※近隣のカタールやアラブ首長国連邦からLNG(液化天然ガス)を輸入しているので石油以外の影響も出ると思いますが7%ほどのようです。
しかし、ガソリン価格の上昇(最悪は3倍などもあり得る)や石油製品の価格上昇が考えられると思います。
輸送費は全体価格の1割~2割を占めていることが多いので、あらゆる製品においてコストプッシュインフレの要因になります。
豊かになっていないのに物価上昇をするという最悪のインフレの仕方をしかねない状況になるのです。
質問者:
そうなるとアメリカなどから輸入することになるんでしょうか……?
ただアメリカから値段を吊り上げられそうな雰囲気もありそうですけどね……。
筆者:
僕もその流れになるのかなという読みだったのですが、
色々と情報をアップデートした結果、最近ではそれも難しいのではないのかな? というのが考えとしてあります。
というのも日本の原油から石油に変換する精油の設備が、中東の原油を精油することに特化している技術みたいなんですよ。
中東の原油は硫黄分が多く、粘り気があるのに対し、アメリカ産の原油は硫黄分が少なくサラサラしているので性質が全く異なるんです。
大枠で言えば「原油」という同じカテゴリではあるのですが、
なんと日本の設備ではアメリカ産の原油を精油できない可能性が高いみたいなんです。
アメリカ専用の精油設備を建設するために最悪は数千億円金額・数年単位の建設期間がかかる可能性もあるようなのです。
※参考までにナイジェリアが2023年に稼働した精油施設は年間1000万トンを精油できるそうですが建設に190億ドル(約3兆円)、建設までに6年ほどかかったそうです。
質問者:
なんと……ニュースではあまり言われていませんが、輸入先を変えるだけでそんなに深刻な問題があるかもしれないんですか……。
筆者:
精油の問題が中東産の原油に拘っている最大の要因なのかなと思いますね。
当然、他国に精油を委託すればその分価格に転嫁されるでしょうしね。
そのために一朝一夕でこの問題を解決できることでは無いと思います。
高市総理が1月末に解散して2月に選挙したのもある意味「最善」だったと言えますね。
正月休みのトランプ大統領と電話会談をした際に、
「今年はベネズエラとイランに仕掛けるぜ!」
みたいな一報を高市総理は受けて解散を決断したのかもしれませんね。
質問者:
今までのお話を総括すると高市さんのせいではないとはいえ、イランとの戦争は長引き、原油が入ってこないと支持率が低下する可能性は高そうですからね……。
筆者:
そういった事前情報をトランプ大統領と安倍元総理の友好関係を引き継いだことから引き出せたのだとしたら、ある意味高市総理はツキを持っていると思いますよ。
ただ、それが日本国民にとってプラスになるとは限らないと思いますけどね。
なぜなら「過大評価」されて選挙結果に反映されたに過ぎないわけですからね。
質問者:
ただ、これから起きそうな難局を議論ばかりして何も決まらないという状況にはならないですよね?
筆者:
そうですね。自民党が衆議院で単独で3分の2という状況ですから迅速に決定することが出来ると思います。
「高市政権の実力」が分かると思います。
ただ予算が衆議院を通過しましたが、本当に原油などに関する追加の対策予算を入れる必要は無かったのかな? と言いたくなりますけどね。
戦闘が長引けば秋の臨時予算の頃に原油備蓄が尽きるのでそのタイミングなのかなと思いますけどね。
短期では精油が可能な原油の供給網を確保し、それで追加でかかる分を政府が負担すると言った措置をとる必要があるのかなと思います。
長期では石油製品代替品の確保、太陽光発電をしながら運転できる自動車の普及や水素エンジンなどガソリンの代替製品の推進などを行うべきなのかなと思います。
戦略面では自衛隊の派兵も含めてどうなるのか? イラン情勢からは目を離せないという感じですね。
ということで今後も日本に大きく影響しそうな国際情勢について個人的な意見を述べていきますのでどうぞご覧ください。




