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この世に大切なのは…

今日も「国でいうところの危険有害作業」に該当する部分をフォローする、安全衛生教育を開催している。

庭やらなんやらの草を刈り取る刈払機…あれは「個人の敷地を、個人の範囲で使用する分には、特に資格制約などはない」

でも「企業が、業務として従業員に使用させる場合は、指定された時間の教育を施すことが義務づけられている。


…これ、新卒の子でも、実家が農家さんだったりすると、意外と使ってるんだよな


そういった意味では、非常にやりにくい部分が存在する。

「正しい、正しくない」「法が求める規制」以前に「成功体験」が研修生の中に存在することになるので、自己流が横行することも本当に多い。

ましてや「ご実家で今までトラブルなく使用を続けてきた」があれば、企業の言うことよりも「実家での成功体験」が優先されることは、想像に難くない。


…さて、たとえ話を持ち出すか。


俺は、テレビあたりでよく持ち出される「台風なんかの自然災害中継の変遷」を持ち出した。


いまにして思えば、だが…昔の台風中継というのは、今思えば不思議な文化だった。

「非常に危険です!」と言いながら、わざわざ海岸に立つ。

波にさらわれそうになりながら、カッパ姿のリポーターが風にあおられている。


…いや、危険ならそこに立つなよ。


最近は「安全な場所からお伝えしています」が定番になった。

たぶん、どこかで労基に怒られたのだろう。

悪天候時の屋外作業禁止に、どう考えても引っかかる。


危険というのは、本来「避ける」ためにある。

だが、人間というのはどうしてこう、危険の前にわざわざ立ちたがるのか。


「法的制約は、この部分に由来しています。成功体験はもちろん大切ですが…その成功体験にだけ頼ると…とんでもないしっぺ返しをもらうこともあります。」

「まずは、正しい形をきちんと覚えてください。そのうえで、成功体験を生かしてみて、再度考えてください。あなたの指先、手先、体を守るためにも、どうぞ今一度よろしくお願いいたします」


俺は、この時間をそう締めくくり、俺は「いつもの昼食分散策」を発動した。

「朝にお知らせした、班ごとに分かれて下さい。午後の作業実習のプラン…書式に従って記入して、自分のところまで持ってきてください。出来上がりが確認できたところから、昼休憩にします。」

研修生は班ごとに集まり、作業プラン作成に取り掛かった。


…よしよし、これでいい。


じっくり考えるチームもあれば、適当にパパッと書いてきちゃうチームもある。

きちんと目を通して、危なければ「この点については、再度考えないと危険。対策等はこの資料を再度見直してください」と、突き返せば、それなりに時間はかかる。

結果「食堂に大挙して押しかける」は、リスクとして減らすことが十分可能。

不出来であれば、午後は時差スタートを宣告することで、きちんとした安全担保も十分とることができる。

あまりにもかかるところは、やんわりと介入し、誘導することで、極端な作業開始遅れは回避できる。


時計を確認すると…11時30分を超えたところ…10分程度は間違いなくかかる…今日もおそらく食堂は分散利用が可能だ。


11時35分を超えたところで、さっさと持ち込んだ班があった。

計画書を見ると…どこをどう見ても「字が形を成していない」…「シ」なのか「ツ」なのかすら判別できないし「刈」は「メリ」と、しか読めない。

清書をする時間はあるだろう、ということで、再度持ち込むように指示をする。


11時45分を超えたあたりで、ぽつりぽつりと食堂に向かう作業班が出てきた。

俺はつどつど「お替りはご飯と汁物だけ」と告知をして、午後の開始時間を伝えて昼食をとらせた。


11時55分を超えたあたりで、一番最後の班が提出をしてきた。

出来は可不可なしの普通…朱筆で注意事項を書き加えて返却してから、午後の開始時間を伝えた。

俺は、一番最後に計画提出した班に同行し、食堂に入った。


そして…いつものごとく…今日の昼飯のメニューを現物で確認する。


主菜:笹蒲鉾(2枚)

副菜①:五目ひじき(大豆や糸こんにゃく少なめで、ほぼほぼ真っ黒)

副菜②:糸状の昆布の佃煮

副菜③:500㎖ペットボトルのキャップの大きさくらいの、まるこいがんもどき2個


…おのれ笹蒲鉾めっ!

…貴様、何のうらみがあって、この俺の昼飯のおかずとして毎日毎日立ちふさがる?

…確かに貴様は味わい深いが、それでも3日連続2枚は、ないっ!


白米をもらう前から…配膳担当のオッサン(推定年齢70歳+α)は、俺を見ようともしない。

汁物担当の東南アジア女性スタッフは、もう、寸胴鍋の中身しか見ようとしない。

一昨日は昨日は唐揚げ横取り、昨日はアジフライ墜落事故…前々日、前日とも確かに事故由来ではあるが…俺は本当に憤懣やるかたない。


…でもなぁ、オッサンだって女性スタッフだって、俺を窮地を救うための笹かま、だったもんなぁ

…「何も出さない」は、学食運営会社にとって、自腹客に対する不義理、企業としては「ぼったくり」とも言われかねない危険行為、と、判断はするもんなぁ。

…台風中継に、女子アナあたりにカッパ着せて海岸あたりに立たせるという判断より、よほどまともだもんなぁ


でも、それで引き下がった俺に対する「成功体験」の積み重ねだったら、ホント、いやだよなぁ、などとベクトル違いなことを考えながら、俺は能面のような表情で白米をこう要求した。


「大盛りご飯の半値八掛で」


オッサン、しっかりと計算しながら「大盛りの半分よりは少ないくらい、でいいのかな(北関東風)」で確認をしてくる。

俺は「まぁ、そんな気分でお願い」と告げ「大盛りの半値八掛」を受け取った。

汁椀担当の東南女性スタッフは、と言えば「半値八掛」などという言葉の意味すら解釈せずに、わかめの味噌汁、具の大盛り、というとんでもないコンテンツを俺に提供する。

副菜ラインナップを考え見れば、どう見ても「髪の毛を大切にしよう」と言われているようにしか思えない。


…本当に「この世に大切」なのは。

…確かに「わかめとこんぶだけ」なのかもしれないが。

…それを本当に「髪の毛は教えてくれる」のかもしれない…が…それはそれで余計なお世話だ!


俺は、なおも能面のような表情のまま、表面的に「アリガトオ」と言って、席に着く。

窓に映った自分の姿をじっと見つめる。


…うーん、まだ「ある」よなぁ

…刈払機取り扱いを教えているから、と言って、髪の毛刈り取ってるわけでもないし

…基本、バリカンは資格いらんはずだし


空を見上げると「ピーカン」という言葉がふさわしい好天…ピーカンの空と、俺の頭皮の反射率は、どちらが勝っているのだろう


…いやいや、俺は反射衛星砲などでは、断じてないっ!


でも第三者からしたら…俺の頭は、やっぱり光を反射しているのだろうか…それが、気が気でならなかった。

うちの学食、ホント海藻類をよく出してくれます

長くいる人に聞くと、自分が着任してからは「笹かま」「海藻」の頻度が爆上がりそうで…長くいる人が食堂を使わなくなりだしたのは、ここらにも原因はあるのだ、とかなんとか。

単身赴任の自分にしたら、重宝ですので…ええ…

個人的には「わかめ昆布は嫌いじゃないけど、もっともっと好きなものがある」ので、自分を見る目をまぶしそうにせず、そちらを優先してくれたらな、と…

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