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とても寒い朝の、暖の取り方

北関東がいくら寒い、とはいえ、春は必ずやってくる…俺はそう信じていた。

大寒前後は仕方ないにせよ、それを過ぎれば少しは緩むだろう…俺は固く信じていた。

朝、仮住まいに設置してある「世界最大手の通販会社が出している、家庭用アシスタント電子機器」に気温を尋ねるまでは、俺は本気で信じていた。


“現在の気温は、マイナス6℃です”


「非常に芸達者な有名女性声優さんがまねた声に似た声」で、さらっと絶望的な気温を教えてくれる。

窓を開ければ、そこかしこがカッチカチに凍っているようにしか見えない。


…バイクも階段も、ホントに気を付けよう


俺は、水冷式のスクーターのエンジンを…嫌がるそぶりを見せるエンジンを…なだめるように始動した。

普段よりも本当にゆっくりにスクーターを走らせる。

ところどころで動作するトラクションコントロールにひやひやしながら、研修所に向かう。


食堂に向かう前の儀式でもある「あちこちの暖房運転」も、今日も24度強風設定にして回り、食堂へと向かう。

屋外に通じる通路も、あちこちがキラキラと光っていて「足元注意、よし!」の掛け声が本当に必要なほどだ。

やっと暖房のきいた食堂につき、人心地をつく。


ホットケースに手を伸ばすと、かじかんだ手が少し緩む。

これですらもうありがたい、と思えるくらい、今日の屋外は冷え込んでいる。

そんな、冷え込みが極端に厳しい朝の「一汁三菜」…今日の献立を現物で確認する。


『今日の献立』


主菜:見ただけで豆腐が思いっきり練り込んであるのが分かるつくね団子(ゴルフボール大)

副菜①:冷蔵パックで普通に売っているだし巻きたまご(100円くらいの消しゴムサイズ)

副菜②:小松菜と人参の油いため


一見普通に見えるが…どいつもこいつもよく冷えてるのが、丸わかり。


俺の視界は、ここぞとばかりにじわっと狭まる。

当然ながら、寒さからくるヒートショックなどではない。

どうして「こうも冷えた、しかも、辛さブースト皆無なもの」ばかりをマイナス6℃の朝に出すかな。

ただでさえ寒いんだ、もうちょっと暖かいものが欲しい…それが無理なら、せめて七味が効いてるものとか出せないものか、という怒りが、俺の血圧を押し上げているだけだ。


だが…カバンの中の「青唐辛子なめたけ」等各種ヒミツ兵器の存在を思い出し、俺は怒りを鎮める。


あれは相当に辛い…口の中に電撃が走り、しばらくすると汗ばんでくるほどだ。

しかも…今日からは「青こしょう醤油」も持参した。

北関東の地方駅で開催されていた物産コーナーで見かけた、信州の激辛醤油…現地で味見をしたが…ほんのひとなめで、頭頂部に汗をかくほどだった。

俺は何事もなかったかのように「配膳担当のオッサン(推定年齢70歳+α)」から、白米の配膳を受ける。


「おざっす(としか聞こえない)、センセ、今日もホントさみぃねぇ!(北関東風)」

俺は「おはようございます。スクーター通勤だからことのほか応えます…あ、普通盛り1つ、普通の普通で。」と丁寧に返す。


オッサンは数秒フリーズしたが、気を取り直し「えと、これっくらいかい?」と、ごく普通に白米をもって渡してくれる。

となりにいる、汁椀担当の東南アジア女性スタッフも「フツー、ノ、フツー」と言いながら、ごく普通に汁物を渡してくれる。


…そうそう、こういう、普通がさ、一番いいんだよ、ホントに。


俺はトレーをもって席に着き、朝食を摂り始めた。

つくね団子…よーく、冷えてる。団子に絡んだみたらし風のたれも、そこそこの硬度を保っている。

だし巻きたまご…コンビニで買ってきたそのまま食べるくらいに冷えてるし、口の中にほとばしる出汁は「冷たっ!」と声が出るほど。

小松菜と人参の油いため…これはさすがに冷えてる、とは言わないものの…それでも「全般的にうす味で、しっかりと冷めている」状態。


俺は意を決し、つい最近購入した「青こしょう醤油」を、小松菜と人参の炒め物に少しかけて食べてみた。


…うん、これ、辛いがうまいな

…あっ!後追いでめっちゃ辛さ来たぞっ!

…でも、おかげで体がしっかり温まるなぁ!


俺は成功に気をよくして「青唐辛子なめたけ」を手に取り、白米にかけようとする。

だが、折からの寒さのおかげで、相当固い。

無理もない…なにせマイナス6℃…冷蔵庫の中よりも寒い…基本半液状のなめたけは、気温影響を受け、固く締まっている。


…瓶の口から箸を突っ込んで、出すか


大きく瓶を傾けて、箸を入れようとしたその刹那…事故が起きた。

白米の温かさを青唐辛子なめたけが欲したかどうか…それは青唐辛子なめたけに聞くほかないのだが…青唐辛子なめたけは白米めがけて一気にダイブした。


…どさっ


白米の姿は…見えなくなっていた。

茨城県産の白米は、長野県産の唐辛子なめたけに全面制圧…いや、蹂躙された。


みるともう…茶碗一面…隙間なく…まんべんなく…あふれんばかりに…これでもか…かかってこいや…というほど、青唐辛子なめたけだらけ。


…うわぁ


それでも俺は勇気を振り絞り、一口食べてみる。

白米に全くたどり着かない…口の中、すべて青唐辛子なめたけ。


…どわぁ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


辛さが俺を襲ってきた。

これでもか、というほど青唐辛子に叩きのめされた。

もう、頭も顔も背中も汗だらけ…インナーシャツは湿気を強く感じるほどだった。


それでも俺は何とかすべてを食べきり…食堂を出る。

出がけにオッサンは「あ、センセ、顔真っ赤だよ! 汗もすごいよ! 熱あるんじゃない?」と真顔で心配してくれる。

東南アジア女性スタッフも「センセー、ネツ? カゼ?」と目を丸くして俺のことをじっと見る。


…はやりの風邪なら、たしか休めるんだよな。


俺は見当違いのことを考えながら、食堂を後にする。


北関東の冬は、今日もとことん容赦ない。

空はどこまでも青い。

雲一つない。

そのおかげで放射冷却が起き、ここまで冷え込みが厳しい。


そんな中、上着を脱いで汗を拭きながら歩く、初老おれがいた。

大汗をかいている俺の心は…未だ厳冬…まさに真冬だった。


こういう「ごはんのとも」は、子供のころから大好きです

ごはんはもともと好きで、それこそ塩だけでも割と行けちゃいますが…どこかに出かけた際に見かける地域特産「ごはんのとも」…大人になった今は、それこそ「オトナ買い」しています


また、ポチろうっと…明太子なめたけっておいしいのかな…試してみるかな。


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