雪の日の朝食
「うーわ、雪が舞っている」
窓を開けて外を眺めると、白い粒がかなりの勢いで舞っている。
駐車場のアスファルトには積もった形跡はない。
だが、このままの勢いで半日も降り続けば、うっすらと雪化粧が施されるかもしれない。
…スクーター、どうしようかな
見た感じでは、行きの通勤は可能。あとは降り方と気温の上昇次第…テレビの予報を見ても、首都圏のことだけ大きく扱っている。
北関東は、キー局の電波が直接入るので、地域密着の予報は入手が難しい。
頼りになるはずの地方局、だがこの時間帯は「よくわからない外国人が、ヒャッハーしながら高圧洗浄機で車を洗っている番組」を延々やっている。
…帰りの足のこともあるなぁ…徒歩なら50分くらいかかるし。
公共交通機関もほとんどないこの地区…帰りの足のことを憂いた俺は、防寒装備をしっかりと固め、スクーターで研修所に向かった。
特に問題もなく研修所にたどり着き、俺はいつものようにあちこちの空調設定を22℃自動にして回った。
食堂に向かう途上の屋外通路にも、ぱらぱらと雪が舞い込んでいる。
そんな今朝の415円の「一汁三菜」、今日の献立を現物で確認する。
『今日の献立』
主菜:オープンオムレツ(円形のものを1/8程度に切ったもの、直線部分10cm程度。)
副菜①:里芋の煮物(3個)
副菜②:水菜と思われるものが中心の、葉物野菜のおひたし
おまけ:みかん
うーん…微妙だが…でも、みかんはうれしいかな
「もう一押し、何か欲しい」とは思ったが、そこは「対納豆ヒミツ兵器群」に活躍してもらえば、と考えることにして、白米配膳列に並ぶ。
すでに来ている研修生は、相も変わらず朝から「ざまっす」「ちっす」「っす」という省略形のあいさつをしてくる。
俺は丁寧に「おはようございます。今朝は雪だね。でも、屋内施設での研修だから安心してね。」とあたりさわりのない会話を紡ぐ。
配膳担当のオッサン(推定年齢70歳)は「センセ、さっき見たよ!この雪の中、バイクで来たよね!(北関東風)」と声をかけてくる。
「あ、今日は普通盛りごはん二つで…このあたり帰りの足持ってないと、仮住まいまで距離があるからね」とあたりさわりのない会話をする。
研修生も「え、この天気でバイクすか?」と声をかけてくる。
…アスファルトって、空気の層がたくさんあるし、意外と熱をため込みやすいんだよね
そんな話をしながら、東南アジア女性スタッフから汁椀を…「具だらけの汁椀」を受け取り、席に着いた。
窓の外に目をやると、雪がどんどん強くなってきている。その粒も、どんどん大きくなる。
そんな景色に目をやりながら、オープンオムレツに手を付ける…まったく暖かくない、というか、完全に冷たいし、かなり固い。
そんな景色に目をやりながら、里芋に手を付ける…これまたまったく暖かくない、というか、歯にしみるし、やたら固い。
そんな景色に目をやりながら、水菜と思われる葉物野菜のおひたし…当然まったく暖かくない、というか、真夏に出したら結構人気出そうなほど、冷たい。
俺の視界がまたじわっと狭まる。
ひさびさだが、もちろん病気ではない。
この雪が降りしきる寒い日に、よりによってどいつもこいつも冷え切っているおかずに対して怒りがこみあげて、ついでに血圧を「これでもか」と押し上げているだけだ。
いや、冷食使ってるんだろうからある程度は仕方ない、と思うよ。
でもさ、オープンオムレツ、箸で普通に断ち割れないとかはどうなのよ!
箸をナイフフォークのように使って、オープンオムレツごしごし切るとか、おかしいじゃない?
里芋に至っては、滑って皿の中で落としたら「カン」とか鳴り響くの、変だよ、もう!
おひたしは、まぁ…仕方ないのかもだが…それでもこれだけ冷たいと、もう、冷菜としか思えない!
白米は暖かく、汁椀もゆっくりと湯気を立てているのは、本当に救いだ。
ただ…それですら、この冷え込みのせいか、普段よりさめるのが早い気がしてくる。
周辺の研修生も…雪にげんなりし、寒さに打ち震え、冷え切った料理に呆然としている。
俺は、ありとあらゆるご飯のお供を駆使して、食事を進める。
話しかけてくる研修生にも「よかったら使ってね」と声をかける。
寒さも手伝って…今日は急がずゆっくりと食事を取っていく。
雪はどんどん強くなる。
みかんの皮を剥きながら…いやこれもなんかえれぇ冷たいんだが…外を眺める。
「冬の果物って、こんなに冷たかったっけ」…と一瞬考えるほど、みかんも冷え切っている。
…しくじった、これはおそらく帰れないだろうな。
外はすっかり雪景色…なおも雪はしんしんつ降り積もる。
だが、今日の朝食は、負けず劣らず…寒冷食…俺の心にも、雪はしんしんと降り積もっていった。
…俺、今日、帰れるかなぁ
箸でつまんでも切れないオムレツ…まぁ、冷凍食品解凍系であればそんなもんかもしれません
ですが、さすがに冷気が忍び寄る日は…まぁ、天候は神の配材…仕方ないのかもです
早めに行けばいいのかも、ですが…割と閉店時刻近いくらいに朝食になることもあるんで…でも、自分でも気を付けよう…里芋がカン、て音したときは…さすがに寂しかったなぁ




