レンコン三連星
このところ特に朝が寒い北関東の地方都市。
通勤時の服装、会社のブルゾンくらいでは防寒も難しい。
…そろそろ防寒着と、防風対策もしなきゃだな
今朝からスクーターのハンドルにカバーをつけた。
見た目非常にダサいが、手首をしっかりと覆い、上着の袖口までおさえてくれるハンドルカバー。
たとえみてくれが「高齢者向け丸出し」になろうとも、非常にかっこいいナックルバイザーよりも「高齢者仕様」のほうが、防寒性能ははるかに高い。
…俺、厚労省的には「高齢者」だしな
自分で自分を納得させながら、バイク置き場から食堂に直行した。
通路も何となく寒々しく、中庭のケヤキの落ち葉がそこかしこに落ちている。
食堂の扉をエイヤッと押し開け、中に入る
…おお、あったかい
いい感じで空調が効いている。
指先にわずかに感じていた、冷えからくる軽い痺れがゆっくりと溶けていく。
ホットケースに手を伸ばすと、わずかに触れた指先がそのぬくもりを歓迎している。
朝415円の「一汁三菜」、今日の献立を現物で確認する。
『今日の献立』
主菜:レンコンのはさみ揚げ(レンコンの厚みは紙ベース)
副菜①:レンコンのきんぴら
副菜②:レンコンと青菜の炒め物
…なっ…なんだ、このレンコン推しはっ
俺の視界がまたじわっと狭まる。
ひさびさだが、もちろん病気ではない。
あまりにも、な、レンコン推しへの怒りが、俺の血圧を押し上げているだけだ。
いくら霞ケ浦が近いといってもだな、東京方面に蓮田とかいう地名があったとしてもだな、このレンコン推しはなかろう!
しかも朝から、レンコンの三連星が「きんぴら!はさみ揚げ!ヤツに猛烈な流れの攻撃をしかけるぞっ!」な状態じゃないか!
だいたい北関東じゃ…あ、北関東、レンコン…名産品か…
地元の名産品を推すのは、まあ、わかる。わかるんだが、よりによって朝から三連星で来る必要はあるのか。
俺は…レンコンの穴を数えながら、白米配膳列へと並んだ。
配膳担当のオッサン(推定年齢70歳)は、今日も元気そうだ。
「お、センセ、今日のその服、あったかそうだね」と言いながら、白米を茶碗に盛って手渡す。
東南アジア女性スタッフも「イイネ、Nice Orange!」と服の色をほめてくれる。
…色か、ほめるところ…色なんだ
なんだかもう自暴自棄になりながら、着席をする。
はさみ揚げのレンコンは、確かに「紙ベース」の薄さだが、香りは悪くない。
きんぴらも、炒め物も、見た目はちゃんとしている。
…悔しいけど、うまそうなんだよな、これが
怒りの熱や、色をほめられた切なさが…すっと引いていく。
レンコンの断面を眺めて「うん、確かにうまいんだよな」とか思っている。
…はさみ揚げ、もうちょっとレンコンも具も増やしてくれたらいうことないなぁ
これだけ冷える、晩秋の北関東。
今は、温かいものが食べられるだけでありがたい。
はさみ揚げをさらにひと口かじる。
サクッとした衣の奥から、ほのかな甘みが広がる。
…ちくしょう、うまいじゃないか
外の寒さも、ハンドルカバーのダサさも、レンコン三連星への怒りも、全部どうでもよくなる瞬間だった。
レンコン…北関東あたりはわりと産地が近いせいか、学食に限らずよく見かけます。地名見たって蓮田とかあるわけで、レンコンだらけなのかな…はさみ揚げは好きです できたら集めがいいです あんまり薄いとちょっと寂しい気はします。学食のは「若干薄い気がする」けど、悔しいくらいおいしいです。
食材にスポットを当てて「あるはずのない人格」を持たせて、その視点で何かを語る、というものを実験的に始めました。よかったら、そちらも読んでみて下さい。単身赴任の食卓~食材たちの想い~ ってやつです。




