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ツナ

北関東の地方都市…秋が深まるのは早く、それにつられて朝夕の冷え込みが厳しくなるのも、やはり早い。

前日の夜から晴天、無風がつづくなんてことになれば、濃霧もやたらと発生する。


…いや、今日は視程が10mくらいしかないぞ。


道路の上の歩行者すら、服装次第ではまるっきり見えない。

俺は「早め行動」「目立つ服装」「ひたすら低速走行」を心がけ、出勤した。


今日は特に研修の計画もなく、前日から泊まり込む研修生もいない。

研修所の中は閑散としている。


開店時刻を待って、俺は食堂へ向かった。

そして今朝の415円の「一汁三菜」、献立を現物で確認する。


『今日の献立』


主菜:ツナとキャベツをしっかりと和えマヨネーズで締めた感じのもの

副菜①:ごぼうサラダ(マヨネーズ風味)

副菜②:クラッシュトマト、フリルレタス、オニオン等の入ったサラダ


うーん…微妙…


俺はここで腹を立てるかどうか悩んだ。

だが、自分一人のために来てくれる食堂スタッフのことも考えたら…まぁ、これはこれで…と思い、白米配膳を受ける。


「おはようございます、今日は濃霧ホントすごいねぇ」と、配膳担当のオッサン(推定年齢70歳)に声をかける。

オッサンは機嫌よくそれに応じながら「来るときに、ホント事故にあいそうになったよ(北関東風)」とぼやきながら「センセ、今日、おかず、ショボいでしょ? ご飯どうする?」と尋ねてくる。


…いや、提供する側が「ショボい」とか認めてどうするよ?


「じゃ、普通盛りを2つ貰っておくよ。さすがにおなか空きそうだから、これだと」と肩をすぼめて見せると「はいよ、センセ!」と茶碗二つに白米を普通に盛って渡してくる。

東南アジア女性スタッフは「フタツイル?」と尋ねてきたが、さすがに汁椀二つは多いので、それは丁重に断った。


「縦30m×横10m」の食堂で一人朝食をとる。

テレビをつけるなんてこともせず、一人静かに朝食をとる。

当初、戸惑いもあったが、今ではすっかりとなれてしまった。

広い食堂を貸し切って、スタッフ二名に専属で世話をしてもらう食事。

むしろ今は「なんだか贅沢だなぁ」と思えるようになってきた。


早速主菜(か、どうか怪しいけど)の「ツナとキャベツのマヨネーズ和え」を食べてみる。

時間経過ゆえか、キャベツが水を吐き、そこそこの水っぽさと、マヨネーズ感がやたら強い印象を受ける。

ごぼうサラダ(マヨネーズ風味)に手を伸ばす。

水っぽさはないものの、マヨネーズ感が結構強い。

クラッシュトマトが見え隠れするサラダにも手を伸ばす。

酢をベースとした味付けが施されている。


………んとさ、ツナマヨ系だよね?

……えとさ、マヨ系だよね?

…これさ、いわゆる、ベーコンレタストマトの手抜きだよね?


疑念が…頭の中を…東北新幹線「はやぶさ」の全力走行小山駅通過のような勢いで、突っ走っていく。

これ、どう見ても…サンドイッチ…薄切り12枚ミミなしが似合う、あれだよね?


その考えがあっているかどうかを確かめるために、俺は汁椀に手を伸ばす。

一口飲んでみると…ゴマと、本当に細かく刻んだベーコンのようなものが散っている「コンソメスープ」…だった。


「これもうほんとにおれひとりだからってぱんもってくるのやめたやつだよね」


いや、これでも白米食べられないってわけじゃない…それはわかる。

むしろ「マヨラー」なら白米の上に「パイルダー的にオーン」するかもしれない…それも、わかる。

たださ、BLTサンド系の中身を皿に盛られたって、これはさすがにご飯のお供にならないじゃん!

俺の視界…一挙に狭くなる…その端に映った「お茶碗二つ」


…やべ、白米、二杯貰っちゃった


一挙に視界が元に戻る。

俺は慌ててオッサンのもとに駆け寄り、納豆を出してもらう。

鞄に手を突っ込み「対納豆ヒミツ兵器(弐號)の、柚子胡椒なめたけ」を取り出し、白米に対処する。


…量的な満足感は当然あった…白米二杯だし…


今日のおかず…味は本当に悪くない。

どれだって「単体」で見たときは、本当に普通においしく食べられる。

肉や魚が少ない(あるいは、ない)のは目をつぶるし、文句もない。


…でも、これホントにパンだよな。


窓の外に視線をやると、太陽が昇り気温が上がるにつれ、先ほどまであんなに濃かった霧はどこかに消えている。

だが、俺の心は…深い霧に閉ざされたままだった。

当社の研修所の学食って、なんか社員に言わせると「もっとこうなんか」なんて印象を持つ人も多いようです。自分としては「朝早く起きてごはんの準備」「昼、わざわざ外に行かなくていいORお弁当準備」とか考えなくていいので、頼っています。今回のような「これホントはパンが相手だよね?」は月イチくらいは必ず出ます。たいてい、食べ終わってから気づきます。

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