空と大地のカリフラワー
盛夏の候…朝からぐんぐんと成長する入道雲…本当に憎たらしくみえるほどだ。
朝7時の段階で30度を超えることも珍しくない北関東…わずか10分のスクーター通勤ですら、汗になるほどだ。
「水分、塩分、ちゃんと補給しないとだし、させないとだし」
自分ももちろんそうなのだが、各支社から預かっている研修生を熱中症で痛めてしまう、ということだけは本当に避けたい。
俺はそんなことを考えつつ、実習室の空調を24度急冷設定にしてまわった。
食堂へ向かう途上であう研修生も、本当にけだるそうにしている。
まだ、食堂に向かう元気がある生徒はいい。
「朝ごはん」を食べない、という選択をする研修生の割合も、相当に増えている。
ホットケースの皿の減り方もいまいち、のように見える。
415円に値上げした「一汁三菜」、今日の献立を現物で確認する。
『今日の献立』
主菜:明らかに冷凍食品と分かるプレーンオムレツ(ほかの皿のものと比較しても形状が一切変わらない)
副菜①:マカロニとは言い難い、貝殻のような形をしたパスタと枝豆と砕けたトマトの酸っぱいサラダ
副菜②:カリフラワーをカレー粉で炒めたもの(正式名称不明)
こう暑いと…腹を立てなくても視界は狭まるし、目もくらむ。
カレー粉の風味で食欲を増そう、という食堂の心意気は非常にありがたいし、頭が下がる思いでもある。
俺は、カリフラワーをご飯にまぶして「インチキカレー」にできるもんかな、それって難しいかな、などとぼんやり考えながら、白米列…あまり人がいないが…に並ぶ。
配膳担当のオッサン(推定70歳)も、この暑さのせいかかなりばてている様子ではあるが、それでも一生懸命盛り付けをしている。
俺はオッサンに「あまっているようなら、カリフラワーをもらっていいか」と尋ねてみた。
「あ、持って行ってよ。この時間でこれだけ余るってことは、閉店時間には間に合わねぇから(北関東風)」とあっさりした返事をする。
俺は「ごはんさ、今日は皿に盛ってもらえる?」尋ねてみる。
ここで言葉を選ばないと、白米キラウエアが再現されかねない。
「いいけど、どうしたの? そんなにたくさん食べたいの?」
…いや、そうじゃねぇ
「カレー皿にしようか?」
…俺の話を聞けぇ
「横浜あたりでサングラスをかけている渋い声のシンガー」っぽく、オッサンを制する。
俺は「カリフラワーのカレー粉炒めをカレーに見立てて食ってみたい」「飯は普通の量でいい」「茶碗じゃこぼれちまうから皿でほしいだけだ」とまくしたてた。
すると「鍋の中で残っているカリフラワーが、汁っけあるから近いかも」と、わざわざそちらを持ち出してきて準備をしてくれる
皿に盛られた白米は、明らかに普通盛りではないが、それでも常識的な量ではあった。
俺は安心しながら、東南アジア女性スタッフが「若干汁気が多いカリフラワー」を盛ってくれるのを待った。
「エーイ」
彼女は…気合を入れて…オタマですくい取ったカリフラワーを一気に皿にぶちまけた。
白米はすっかり姿を消して、カリフラワーエアーズロックに変貌した。
「コレ、オイシソネ…ワタシ、アトデタベテミル」
いやいやいや…これさ…みんなカリフラワーになってね?
オッサンは「ちょっと薄いかもだから」と、缶入りのカレー粉を上からそっと振りかける、というニクい配慮を見せてくれる。
…いや、そんな配慮いらん
俺は、白米が姿を消した…というか…カリフラワーまみれになって見づらくなったというべきか…なんとも解釈が難しい「インチキカレー」を食べてみる。
なるほど、カレーっぽいはカレーっぽい。
だが、塩っけとかがまるで足りないし、しょせんはカリフラワー、豚肉などが持つコクは皆無だし、芋が醸し出すとろみもないうえに、白米に全然行きつかない。
…ひたすら、苦行
…ただただ、懲食
俺は窓の外をぼんやりと眺める。
あの憎たらしく見える入道雲が、まるでカリフラワーのようにも見える。
鞄にいつも忍ばせている「自己否定する塩(減塩塩)」や「TKG用だし入り高級醤油」を駆使し、なんとか食べきった俺。
「思い付きで変なこと言う。それを実行する。ホント危ないな」と、普段労働安全衛生関連で自分が語っている言葉をかみしめた。
空のカリフラワーは、どんどんと大きくなっていた。
子供のころ、カリフラワーとブロッコリーの区別がつきませんでした。カリフラワーって、触感が面白くて結構好きですが…量にもよります…皿の上のエアーズロック…ホントもう…




