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10/22

自己否定する「塩」~学食編

「北関東にある研修所」に異動して2か月ほどが経過…当地にも当然のごとく、梅雨が来た。

夏は暑い…「北関東内陸部は、海から100kmは離れている」こともあって非常に暑い、と思っていたが…梅雨の時期はとにかくうすら寒い。

湿気に冷気が混ざり、それが肌にまとわりつく、そんな印象だ。


そんな梅雨寒の朝…俺はいつものように学食へと向かう。


「あ、先生、おはようございます…今日はなんか寒いっすね」とTシャツ1枚にスウェット姿で現れる研修生。

若いっていいな、と思いつつ「おはようございます」と返しつつ「上着、来たほうがよくないか?」と返す。

「そなんですが…僕、南関東なんで…ついつい上着とか忘れちゃって」とばつの悪そうに頭をかく。


…風邪なんか引くなよな、研修終わって風邪ひいて休み、とか、上司の目がきつくなるぞ


そんなことを思いながら、おかずの配膳列に並び…朝400円の「一汁三菜」、今日の献立を現物で確認した。


『今日の献立』


主菜:サバの塩焼き(半身ではなく、1/4身)

副菜①:れんこんのきんぴら(鷹の爪の存在が確認できない)

副菜②:たまご焼き(ただし、本当に「絵にかいたような黄色」。だし巻き、ではなく、ホントに焼いただけ、の完全プレーン。)


サバの塩焼き…これ1/4か…せめて半身ぐらいは欲しいよな…1/4って当たりはずれまで出そうだし…


そんなことを思いながら、白米配膳列に並ぶ。

配膳担当のオッサン(推定70歳)に「おはようご」普通盛りドンッ「おざっす(北関東風味)」…もはやコミュニケーション取る気なし…とも受け取れる早業で白米を出される。


……建設業でも製造業でも、職長って「コミュニケーション力」は大切なんだがな

…あ、次回の職長研修の「お笑い系つかみ」で、オッサンネタ入れてみっかな


そんなことを思いつつ、着席する。

サバの大きさの問題はあるにせよ、とりあえずはまともに見える、今日の献立。

おかげで視界は狭くならず済んだし、今日はいいな・・・と思いつつ早速たまご焼きを食べてみる


………あれ?

……味が全くしないぞ?

…しいて言うなら、油味?


俺はあっけにとられた。

そう…本当に…プレーンだった。

焼く際に「こびりつき防止のための油」は回したと思われるものの、味付けは一切なし。


俺の視界はここにきて一気に狭まった。

いつもの通り…病気ではなく…「とことんプレーンなたまご焼き」に対する怒りが、俺の血圧を「これでもか」というほど押し上げただけだ。


…いや、だし巻きにしろ、とは言わないよ

…大根おろしつけろ、とも言わないよ

…せめて…塩気くらいはさ


と、一人視界を狭くしていた俺は「とある存在」を思い出した。

つい先日に「よく行くスーパー」で見かけて、その存在感と自己否定能力の高さに圧倒されて購入した「緑色のキャップのニクいやつ、自分で自分の存在を否定している減塩の塩」の存在…俺は「研修の合間の話のネタになるかも」と思い、かばんに瓶ごと入れていたことを。


早速取り出して「プレーンなたまご焼き」に「自己否定する塩」を軽く振りかけて、食べてみた。

甘いたまご焼きも否定はしないが、俺個人は「塩派」だ…やっぱり、塩はたまご焼きによく似合う。


うっすらと塩味が付いたたまご焼き…その味わいに一人満足していると…俺の手元をじっと見ていた研修生が「それ、なんですか?」と尋ねてきた。

瓶を手渡しながら、俺は「入手のいきさつ」「入手動機である、立ち位置のあいまいさ、自己否定っぷりに惚れてしまい、衝動買いした」ことなどを説明する。


「塩なのに、減塩・・・」

「無糖の砂糖・・・みたいな?」

「何の哲学だ、これ」


俺は「口にしたらわかるけど、塩は塩だよ。普通の塩・・・あ、普通じゃないのか…『自己否定する塩』だよ」とつぶやいた。


研修生は瓶をじっと見つめながら、やおらキャップを取り外し・・・白米に振りかけだした。

その行動、断りもなしに他人の物を勝手に使うのはよくないだろう、これは教育的な指導も、やんわりレベルでいいから必要だ

そう考えた俺は「おいおい」と声をかけるが、研修生は意に介さず「白米に塩、これって合いますよね!」


…え? そっち?


「コンビニでもおにぎりに『塩』ってあるじゃないですか!」


…だから、そっち?


「コンビニのおにぎりの袋に『減塩塩』って書いてあったら、カオスっすよね!」


…もう…いいか…


さほど持ち合わせていない「講師の威厳」など、そこらにかなぐり捨て、うっすらと塩気をまとったたまご焼きを食べながら、俺は窓の外に目をやった。

また、雨は本降りの様相を呈してきた…俺の心中と、同様に…

「減塩塩」は、持って生き方次第で「研修のネタにも使える」と思い、職場に持っていきました。学食で活躍することは想定外でした。ですが、存在が面白いので、適当に使い分けています。腎臓に病気のある方は注意が必要らしいです。今でも、思い出したように使っています。「単身赴任の食卓」のほうにも、自己否定する「塩」、として掲載してます。

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