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241.二人の魔術師の再会

初夏の夕方のことである。


この国一番の宰相である魔術師は仕事をする手を休め、珍しく宮殿の外に足を運んでいた。

宮殿のそばを流れる大河のほとりにある船着場周辺では、たくさんの観光客が近くにあるベンチに腰掛け、休んでいた。

その足元を鳩や海鳥達が、餌を求めて歩き回っている。


この国一番の魔術師である彼女は誰にも気に留められることもなく、船着場の一角に停泊している小舟に乗り込んだ。

彼女がいくつかある座席のひとつに腰をかけると、創造の魔術師によって組み込まれたエンジンが作動し、彼女が何もせずとも、小舟は自動的に動き始めた。


小舟は大河から分岐した支流に入り、やがて小さな地下水路に入り込んだ。

小舟は迷路のように入り組んだ水路を、迷うことなく進んでいく。


しばらく進むと、小舟は地下水路の行き止まりにある停船場に辿り着いて止まった。

彼女は小舟を降り、魔術により消えることのないランプの灯が導く先にある階段を登っていく。

階段の先の地下道の行き止まりには、小さな礼拝堂があった。


礼拝堂の中心に置かれた、古ぼけた椅子のひとつに彼女は座る。

椅子の数は五つ。

彼女が天井を見上げれば、どのような仕掛けか、ガラス越しに満天の星空が広がっている。


しばらくすると、彼女の待ち人が来たようで、礼拝堂の扉がぎしぎしと音を立てながら開く。

彼女の前に現れたのは、中性的でどこか神秘的な容貌の青年であった。

「待たせたかな?…またずいぶんと若返ったものだ、時制を司る魔術師よ」


国一番の魔術師である彼女は、少し眉を顰めて言った。

「貴方は少し歳を取ってしまったのね…今は星見の君と呼ばれているのだったかしら?

事象を司る魔術師である貴方は」


星見の君は笑った。

「極光の調整をしたのでね…久しぶりに私の魔術を使うことになってしまった。


時制の魔術師よ。

まだ先代の王の時代の王の継承時の代償の時は終わらぬのか…」


「まもなく終わるはずなのだけれど、少し時間がかかっているようね。

…創造と破壊、運命を司る魔術師達も、代償の時からの回復のため、まもなくこの国に戻るでしょう。

…私は彼らが少し羨ましい」


「時の代償が支払われれば、また君も新たな歳を重ねられる…もう少しの辛抱だ」


忙しいようだね、と、星見の君は、国一番の魔術師であり宰相である彼女の顔色を伺う。


「この国が起こってもう随分と長い年月が過ぎた。

なのに私は3人の魔術師のように、国から離れて時を過ごすことができない。

国は落ちつかず、重ねた年月は時の魔術の使用で、簡単に巻き戻されてしまう。

私達に生命の終わりは訪れない。


何故かしら?」


「…少し、休むといい。

この場所でなら、君も何も考えずに眠ることができるだろう」


「貴方は逝けぬことを辛いとは…思わない…のかし…ら…」


眠り始めたこの国一番の魔術師である宰相を抱えた星見の君は、礼拝堂横にある長椅子に横たえ、眠りに落ちた彼女を見て、ひとりつぶやいた。

「僕たちはそういう存在だからね…

僕は別に何とも思わない。

君と僕は違うのだろう。


とはいえ、今回の代償の時は少し長くなってしまったな…」

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