プロローグ 星降る島の目覚め
ようこそ、世界一小さな共和国ナウルへ──
この作品は、地球の片隅にある小島に突如として「宇宙規模の注目」が集まり、
銀河の要人をおもてなしする羽目になった、ごく普通の青年ボウイの騒がしくも心温まる物語です。
テーマは「おもてなしが地球を救う!?」。
SFで、任侠で、観光ラブコメで──
ジャンルも種族も文化も飛び越えて、人と人(と異星人)が分かり合っていく、
そんな物語を描きました。
プロローグから壮大な展開ですが、基本は「明るく楽しく」読めるものを目指してます。
どうぞ、ナウル共和国のちょっと未来の物語、楽しんでいってください!
南太平洋に浮かぶ、小さき緑の宝石。ナウル共和国。
かつて、島の中央に眠るリン鉱石が島の行く末を照らす光だった頃、ナウルは世界でも指折りの富める国としてその名を馳せた。 だが、資源は尽き、栄華は遠い記憶の彼方へ。 今、島の中心に広がるのは、まるで巨人が掘り返したかのような、白く無骨な奇岩群が連なる荒涼とした大地。 緑豊かな海岸線と、この異世界じみた内陸部。 ナウルは、繁栄と衰退のコントラストを内包する、二つの顔を持つ島だった。
物語の始まりは、そんな時の流れから取り残されたかのような、リン鉱石採掘場跡地の、さらに奥深く。長年の風雨に晒されながらも、異様な存在感を放つ「それ」は、唐突に、しかし確実に姿を現した。
それは、常識を超えた巨大な石板だった。 滑らかな表面には、幾何学的でありながら生命の息吹を感じさせる、奇妙な紋様が深く刻まれている。 どう見ても、地球上のいかなる文明が生み出したものとも異なる。 数百万年…いや、それ以上昔の技術で造られたとしか思えない代物だ。 島の学者たちは、この驚愕の発見に色めき立った。 これは古代文明の遺物か? いや、それでは説明がつかない技術レベルだ。 ならば──人類がまだ樹上生活を送っていた遥か太古、この青き星を密かに訪れた、異星の存在が残した痕跡なのか?
期待と畏れが交錯する中、石板に対する本格的な調査が始まろうとしていた。 だが、その瞬間を待つことなく、「事態」は起こった。 突如として、巨大な石板が、淡い、しかし確かな光を放ち始めたのだ。 その光は、地中の奥深くから湧き上がるように、石板全体を覆い、やがて眩い輝きとなって夜の闇を切り裂いた。 光の柱は、まるで意思を持った生命体のように力強く、一直線に夜空へと伸びていく。大気圏を突破し、宇宙空間へと突き抜けた光は、そこからさらに広がりを見せ、ナウル共和国の小さな島全体を、そしてその周囲数百キロに及ぶ広大な海域をも包み込む、巨大で複雑な「サイン」を宇宙空間に描き出したのだ。
地上から見上げれば、それは燃えるようなオーロラのようでもあり、天と地を繋ぐ架け橋のようでもあった。 宇宙空間からは、それは特定の周波数を持つ、誰かに向けられたメッセージのように見えたのかもしれない。 光は昼も夜もその輝きを失わず、およそ二十四時間、宇宙に向けて信号を発信し続けた。
後に知られることになるが、この巨大な光のサインは、かつてこのリン鉱石採掘場を、宇宙船の発着場──すなわち「宇宙港」として利用していた、数百万年前のある宇宙種族が、去り際に残した「再起動信号」だった。 特定の条件下で起動するようプログラムされていたその信号が、偶然か必然か、今、この時、発動したのだ。
数百万年の眠りから覚め、宇宙へと放たれた強烈な光。それは、広大な銀河の片隅で、気まぐれに、しかし飽くなき好奇心を持って宇宙を旅する、たった一人の「旅行家」の、退屈を紛らわせる光景として目に留まることになる。
──こうして、地球という惑星に、宇宙規模の注目が集まる、全ての始まりの鐘が鳴り響いたのだ。南十字星が瞬くナウルの夜空の下で。
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