表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/18

アルリアとの出会い

「ーーーー!ーーーーーーー!!」


 大きく張り上げた女性の高い声が耳に飛び込み、意識が浮上した。


「ーーーー!!!ーーーーー!!」


 再び鋭く語りかけられ、声のする方へと視線を送る。

 ぼやけた視界には、小さなランタンと、それを掲げる少女の白い指先。琥珀色の光が彼女の輪郭を浮かび上がらせるたび、淡い銀髪が夜気を払い、宝石のような瞳がこちらを射抜く。 


ーーー(ヅィサゥラ)!!!!!ーーーーーーーー(ゥル ヴィニア)!!!!?」


 全く聞き馴染みのない言語。けれどその切迫は、理解できずとも伝わる。少女の手は、腰に携えた刀のようなものに添えられている。このままでは本当に人生が終わってしまうと感じ、背中を冷たい汗がつたう。


「待って、待ってください!Wait Wait!」


 とっさの日本語と英語が口をついて出る。

 すると少女は一瞬まばたきし、訛った調子で問い返した。


「マっtェ……?くdアさぃ……?」


 日本語だ。妙に不自然な発音だが、確かに通じている。

 同じ世界ではあるのだろうか。いや、だとしたら刀を向けられようとしているのは異常か。


「日本語がわかるんですか?」

「ニホンゴ?ニホンゴが何なのかはわからないけど、私はヒイヅルクニの出身だから、東の島国の言葉なら話せる。」


 ヒイズルクニ……。日出ずる国ということだろうか。この世界でもどうやら同じ言語を持つ東の島国があるらしい。


「怒鳴りつけるような真似をしてごめんなさい。魔物かと思ったの。ここ一帯で魔力の歪みが観測されたから、偵察に来ていたのよ。」

「魔物?僕が?」

「ええ。人に化けるような知能を持った魔物なら厄介だから。」


 魔力、魔物。ここまでいろんなことがあったからか、不思議とスッと飲み込める。今立っているこの場所は、自分が知っている世界とは理が違うみたいだ。


「とはいえ、魔力の歪みがあった場所にいたあなたには、事情を話して貰う必要がある。」

「はい。」

「あなたは旅人?」

「いえ、旅人というかなんというか、たぶん違う世界から飛ばされてきた、的な。」

「……。訳ありのようね。とりあえず、朝を待って一緒にギルドにいきましょう。」


 先ほどまでの緊張感はもう和らぎ、彼女は優しい表情で語りかけてきた。


「私はアルリア。アルリア・ルスティリア。あなたは?」

「白崎雄太といいます。」

「シラサキ・ユウタね。あなたと私は少し縁があるかもしれないね。」


 そう言ってアルリアは微笑む。その声は澄んだ響きを持ち、緊張しきった僕の心を柔らかく照らすようだった。


「縁、ですか?」


 それ以上の説明はなく、彼女はただ夜風にその星空のような髪を揺らすのみだった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ