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プロローグ
ふいに、世界のすべてを見ることも聞くことも知ることもできないということが、とても悲しく切なく、とてつもない世界の大きさに圧倒されるようなときがある。
「あ、綺麗だ」
誰に聞かれるでもなくそうつぶやき、いつも持ち歩いているカメラを構えてレリーズのボタンを押す。 撮れた写真はなんてことはない、ただの木。マンションの隙間から差した太陽の光に照らされて、なんとなく綺麗だなと思って撮った写真。 僕は、光の存在を感じた瞬間に撮りたいと思うことが多いような気がする。
ザックリとしているけれど、美しいものが好きな僕は、音楽を聴くことも、絵画を観ることも、詩を読むことも好きだけど、自分で創り出すことにはどうも向いていないのか、基本的に享受する側にいる。 そういうものを受け取りながら生きれることは幸せだと思っているけれど、やっぱり何かは表現したい。
写真は、自分が見た世界の美しさを語れる表現だと思っている。