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94、久遠と企画会議

※グーグルドキュメント君が毎回誤字指摘してきてめんどいので

今回から「高天ヶ原」を「高天原」に変えます!


「こちらにどうぞ、久遠様」


「ええ、ありがとう」


係の人に案内され重苦しい雰囲気の部屋に入ると、途端に静かだった室内がざわめきだした。


「久遠様だ……」


「もう会議に参加されるのか?流石に速すぎるんじゃ……」


「でも久遠様だからなぁ……」


「ミュージカル見たか?まさにトップに相応しい姿だった」


「だが演技が上手くても仕事が出来るとは限らんぞ」


ここは高天原本社の超高層ビル、その上階に位置する会議室。

今日は重役会議が開かれるとかで、そろそろ私も動き出そうと参加することにしたのだ。

しかし広い上に景色がめちゃくちゃいいな、流石大企業の会議室である。


次期総帥候補ということで上座に近いところに席が用意してあり、そこに座る。

後ろには私の秘書として斎藤が座る。

というかマネージャーだけでなく秘書も出来ることに驚きだ。

ほんとに頼りになる男である。


そんなことを考えつつ、今日の資料を読んでいると祖父である総帥と伯父の天原高彦がガチャリと入ってくる。


「全員揃っているな、では会議を始める」


進行は実質ナンバー2の伯父がするようだ。

祖父は基本腕組んでだんまり。

みんなの意見を聞き最終決定をくだすスタイルなのだろう。

ちなみにもう一人の伯父は欠席、というかあまり会議に出ないようだ。


「その前に、今日から姪が会議に加わる。久遠、挨拶を」


「はい。本日よりこの栄誉ある会議の末席に加えて頂きます、天原久遠です。微力ながらも社の一助となれればと思います。若輩者ではありますが、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします」


私がシャラリとお辞儀をするとパチパチと上品な拍手があがる。

全体的に好意的な雰囲気だが一際大きな拍手の音の方を見ると、


満面の笑みを浮かべた父がいた。


瞬間、顔が真っ赤になる私。

余所行き全開のおしゃまモードを親に見られることほど恥ずかしいものはない。


(くぅ!何故こんなところに……!)


まあ考えて見れば当然か。

父は総帥の三男であり、トップクラスの実績を誇る主力社員なのだから。

席が後ろの方なのは総帥レースを降りたからなのか、適当に座っているからなのか(多分適当)。


「久遠、派手に暴れてるそうだな」


「それ程でもありませんよ伯父様」


「ふん、まあいい。妙なことをして社名に泥を塗るようなマネはしてくれるなよ」


「もちろんです」


こんな敵意全開な伯父だが、会社の利益になるようなら敵であろうと容認する懐の深さはある。

才能至上主義で苛烈な性格だが、私はそんなに嫌いじゃない。


「さて、まずは報告から聞こう。家電部門から」


「はい。今期の売り上げは……」


そうして時計回りで各部署から売り上げなどの報告があがり、気になる所があると方々から指摘があがる。

会議なんて皆やる気無いと思ってたけど、全員ちゃんと話を聞いて活発に質問が出る。伊達に大企業の重役ではない。

ちなみに私は報告することはないので飛ばしてもらう。


「ふむ、順調に推移しているな。では次」


一通り報告が終わったら、次は企画や要望のある部署がプレゼンをしていく。

こちらは事前に申請しておき、恐らく先着順に発言していく。


「~~なので予算を頂きたいと思います」


「なるほど、よく分かった。如何ですか総帥」


「うむ、許可する」


腕を組み目をつむっていた祖父が初めて喋った。

寝ていると思ったがちゃんと起きて聞いていたようだ。

でも私から見ても悪くない企画だ。

これが天下の才が集まる高天原の会議か。


「次は……通信事業か。そういえば新スマホはどうなったんだ?凪」


伯父が父に向けて質問する。

父は今Pフォンを駆逐するスマホの開発に携わっている。


「まだまだ調査段階だよ。スタッフ全員にPフォンを持たせて、何が優れていて何が足りないのか、なぜウケたのかを徹底的に検証してる。まあ予想はつくけどもう少し時間がかかるよ、ただ……」


「ただ?」


「サイボーグフォンに慣れ過ぎてPフォン使いにくい……はやく戻したい……」


「そ、そうか、では次」


父の泣きごとはスルーされた。


たこ焼きの時も自分でたこ焼き屋の屋台を長い間やってたし、父はこうして実際に触れて研究してから一気に仕掛けるタイプなんだろう。

新スマホの開発は私も要望を伝えてるので楽しみである。


「えー最後に……うん?久遠もあるのか」


「はい」


「久遠様が……?」


「だがまだ部署を持っていないぞ?」


返事をして立ち上がると会議室がどよめいた。

期待半分不安半分ってとこか。


「ほう久遠、何か考えてきたのか?」


「はい総帥、私なりに社に貢献できればと思い考えてきました。確実に売り上げ上昇が見込める一手です」


「大きく出たな。大企業の企画とはそんな簡単なものではないぞ」


「もちろん分かっていますよ伯父様」


「ふん。で、どんな内容だ?」


「私が高天原の広告塔となり、CMを作ることです」


「ふむ……久遠、詳しく教えてくれ」


未だ幼稚園児の私に会社のために出来ることはなにか。

そう考えると私の子役としての知名度を利用する他無い。

ということで私を使ったCMをバンバン作ろうと思ったのだ。


「身内だから出演料もタダでいいですよ」


「そういうわけにはいかんが、融通は効きそうだな。しかしお前にそれ程の宣伝効果があるか?確かに最近話題ではあるが、自惚れていないか?」


「あら伯父様、私の宣伝効果はすごいですよ?なにしろ私の才能は宣伝にうってつけですからね。私が身の回りのものを高天原製で揃えて、ちょっと使ってるところを見せれば売り上げが上がるはずです」


「そうか『扇動』の才能か……」


実際私がCMに出るとその商品はよく売れるし、私が高天原の次期総帥候補だと世間に知られた頃から会社の収益は跳ね上がった。


「ふむ、悪くないな。だが何でもかんでもCMに使うわけにはいかんぞ。何か考えがあるのか?」


「もちろんです。私は『シリーズもの』でいきたいと思います」


「シリーズもの?」


シリーズもののCMとは、同じ世界観やキャラクター、ストーリーを共有し、連続して放送されるCMのことだ。

わかりやすい例だと「フ〇イト一発」のアレとかだろうか。


「部門の垣根なしに今一番売りたい商品のCMに私が出て、共通のシリーズで統一するんです」


「何か意味があるのか?」


「まずブランドイメージの強化です。現状多岐に分かれすぎて一般人は系列会社を認識してないですが、このシリーズが流れれば高天原の商品だと分かりやすいです」


「まあ確かに」


「それにキャッチーで興味を引かれますし、記憶に残りやすいです」


「ふむ」


「それになにより」


「まだあるのか?」


「楽しそうじゃないですか!」


「う、うむ?」


私が笑顔でそう言うとたじろぐ伯父。

ここでまくしたてる。


「街頭テレビで私のCMが流れるたびみんな立ち止まるんです。『このシリーズ好き』『面白いよね』とか『あの商品の見た?』『見てない、今度調べてみる』とか皆で語り合ったりして」


シリーズが面白ければ若い世代を中心に話題になると思う。

特に子供はCMのモノマネが大好きだ。


「それで話題になり、新CMが流れると誰もがCMに釘付けになって。ネットやリアルの仲間と感想を言い合ったりして口コミ効果を狙えます。当然商品も『あのCMのだ』って爆売れ確定!会社のイメージも『久遠ちゃんの会社』として信用度爆上がり!出せば出すだけ売れる大好景気時代に入るのは間違いないでしょう!」


私がテンション高く拳を振り上げて熱弁すると会議室がシーンとする。


あれ?私また何かやっちゃいましたか?


すると何処からかパチパチと手を叩く音がして、次第に大きな拍手へと変わっていく。


「確かにこれは楽しそうだ」


「効果は確実に見込めるでしょう」


「流石久遠様ですな」


「以上です、検討をお願いします」


手ごたえを感じたので、ペコリとお辞儀して着席する。

斎藤を見ると何やら諦めたような顔をしていた。


「いいだろう。久遠、やってみなさい」


祖父が満足そうに許可を出す。


「これが『扇動』か……恐ろしいものだな……」


伯父が静かに私を見る。


「確かに有効な手のようだ。それで、どんなシリーズにするか考えているのか?」


「はい、私の考えるCMシリーズ、それは」


この間キャンプであの人に会った時ビビッときたんだよね。




「『お嬢様とじい』シリーズです」

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