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91、久遠の学校改革

「皆さんこんばんは、司会の恵子です!本日も夜の討論番組『バトロン』の時間がやってきました、さあ早速今日のゲストを紹介しましょう、今話題沸騰の子役、天原久遠ちゃんでーす!」


「こんばんわー天原久遠でーす」


「専門家の先生として経済学者の『数独先生』、PTA界のお局『あけみさん』、最後に教育省の『半月なかつき議員』をお招きしています、先生方、今日もよろしくお願いします」


「「「よろしくお願いします」」」


あの公演から1週間、今私はニュース系バラエティ番組に出ている。

巷で話題の人を呼んで、話を聞いたり討論したりするちょっと真面目寄りの番組だ。

今日は劇の成果や意義なんかを発表し討論するためこうしてやってきた。

園長?園長はなんか燃え尽きて縁側で微笑みながらお茶を啜っていたので置いてきた。


「久遠ちゃん久しぶりー」


「お久しぶりです恵子さん」


ちなみに司会のお姉さんは以前初めてのCMで一緒になった女優の恵子さんだ。

あけみさんは息子3人を東大に入れ長年PTA界を牛耳っていた普通の主婦、でも本を何冊か出してるらしい。半月議員は苗字に月が入ってるし、多分月詠家の分家、集会で見た気がする。数独先生はよく知らないが難しそうな顔をしているおじさんだ。


「さて、日本中が注目したミュージカル公演でしたが久遠ちゃん、どうですか?その後は」


「そうですね、みんな今も興奮冷めやらぬといった感じで、毎日舞台の思い出を楽しそうに話したり歌ったりしていますよ」


「私も見に行きましたけど、素晴らしい出来でしたね」


と半月議員、この人は多分私の言うことに全肯定しそうな気がする。


劇の反響はものすごく、少し高めのチケットやグッズ類は即完売してとんでもない売り上げを叩きだした。

さらにこの後は円盤の販売や配信も控えてるので今から楽しみである。


「ありがたい話で再演のオファーも大量に貰ったりして、今後どうするか検討中です」


「再演!すごいね」


あまり劇ばかりやるのもどうかと思うので、まあやっても一回(一週間)くらいかな。


「これは幼稚園劇団誕生かな?みんな将来の夢が役者になったんじゃない?」


「うーん、そういう子も増えましたが、それはちょっと趣旨とは外れるので困るんですよね」


「そうなの?」


確かに多くの子が私みたいに子役になりたいと言ってきた。


「私としてはこんなギャンブル性の高い職業に就いてほしくないわけですよ」


「分かるけど、自分で言うな(笑)」


恵子さんが同意する。


「今回はこの活動で自信を付けて、将来様々な分野で活躍して欲しいというのが目的なので。まあ一過性であることを願いますね、まだ園児ですし」


頼むからこれからの学生生活で役者以外の道を見つけてほしい。

本気ならいいけど、この道はいばらの道なので気軽におススメできない。


ひとしきり思い出話をしたあと、スタッフからカンペで「次へ」と指示が出たのであけみさんが進める。


「子供たちにお金を渡したようだけど、効果はあったのかしら?」


「そりゃあもう。絶対自分が欲しい物を買うようにと言って渡しました。中には親のために使った子もいたようですが、それも含めて自分の力で欲しいものを手に入れたことで、大分自信が付いたと思います。みんな自分の成果を自慢しあってますよ。」


「うーん、私には学校行事でお金を稼ぐのは教育に悪いというイメージがあるのだけど……今回のことは良いことのように思えるわ」


「私はそのお金儲け=悪というイメージが嫌いなので、なんとかして変えていきたいと思っています」


「ほう」


数独先生が反応する。


「正しくお金を稼ぐことは善い行い。これからの価値観はこれです」


「まったくその通りだな。俺は常々このままでは日本はダメになると声を上げていた、だがこの価値観が崩されることはなかった」


「そうでしょうね、みんなそう育ってきてますから。それに清貧は悪いことでもない。だからこそ、私はここで大鉈を振るう必要があると考えています」


「大ナタ?」


「今回のように、私が内部から大規模なイベントを企画して世間の常識に訴えるのもいいですが、企業側、政府側からアプローチが出来たらと思います」


「久遠さ、久遠ちゃんの実家はツクヨミグループと高天原グループに強い影響力を持っているから企業側は可能かもしれませんね。政府側とは?」


半月議員がフォローを入れつつ質問してくる。


「有用性をアピールして、教育制度を変えるとかですね」


「そうは言っても難しいぞ、あいつらめちゃくちゃ頭固いし」


数独先生は苦労してそうだ。


「例えばですね、今回我が白鳥幼稚園はとっても儲けが出ました」


「だろうな」


「その儲けを使って、老朽化した建物の修繕や設備の充実、職員の待遇の改善、オモチャや遊具を増やしたりすることが出来たわけです」


「それは素晴らしいわね」


「つまりはですね、金は自分で稼げばいいんです!」


「え?」


あけみさん困惑。


「学校は生徒を使ってお金を稼ぎ、その予算で運営すればいいんです。そうすれば生徒は経済感も養えるしお金も貰えて嬉しい、学校も設備が充実して嬉しいし生徒の為にもなる、先生も給料が増えて嬉しい、国も予算が削れて嬉しいと良いことづくめなんですよ!予算が無い?無いなら稼げ!甘えるな!」


「で、でも今は学校は営利目的の活動は禁止されてますし……」


「法律変えちゃいましょう」


「そう簡単に言われましても……⁉」


困る半月議員。


「具体的な案はあるのか?」


「よくぞ聞いてくれました。私が提唱する新教育制度、それは……学校ギルド(仮)です!」


「学校ギルド(仮)?」


ふふふ、これはweb小説廃人だったタケルの知識にある「異世界転生もの」からインスピレーションを得た画期的なシステムだ。


「住民や会社が近所の学校に簡単な依頼を出し、生徒がそれを有償で手伝う制度です。学校側は手数料を貰います」


「なるほど、手軽に安い人材が欲しいときに活用するわけか」


「その通り、もちろん素人の学生なので相場よりも安いですが、学生なんて遊ぶ金があれば十分ですから」


「しかし仕事があるかね?」


「農家の手伝いとかはあるんじゃないですか?倉庫整理とかの単純作業とか、人雇う程でもないけど手伝いは欲しいみたいな」


「ふむ、色々考えつくな」


「でも学業がおろそかにならないかしら。うちの子がそればかりしては困るわ」


もちろん対策は考えてある、異世界テンプレに隙は無いのだ。


「そこでランク制度です」


「ランク制度?」


「仕事を沢山こなすと試験を受けることが出来て、受かればランクがアップし、より高報酬の仕事を受けられます。高ランクになると社会的に信用も得られ就職にも有利になります」


「なるほど、その試験に学力テストもあるわけだな?」


「数独先生さすが理解が早いですね!」


「面白そうじゃないか」


私と数独先生がテンション高くあれこれ話しあってると、やはりあけみさんが心配ごとを口にする。


「ランクによって格差ができて、イジメが起きたりしないかしら」


「問題ありません。イジメた奴は問答無用で降格です」


「こ、降格?」


「体罰がダメならペナルティを課せばいいのです。高ランクには人間性も求められますから、それに相応しくない行いをすれば取り下げればいい。イジメをするような奴は地位や金に固執しますから、ランクダウンは避けたいと思いますよ、停学とかより効果的です」


「はぇー、久遠ちゃんよく考えるわね」


司会の恵子さんはさっきからポカーンとしている。

劇の感想を聞こうとしたら、いつの間にか新制度のプレゼンが始まってた。


「学生のうちからお金を稼げると良いことが一杯ありますよ」


「例えば?」


「まず自信が付きます。これは今回の劇で実証されましたね。隠れてバイトするより健全ですし。それから親も経済的に助かります」


「それは確かに、親の経済格差の問題も解消するかもしれないわね」


「学生が犯罪を犯す危険性も減ると思います」


「十分な稼ぎがあれば怪しいバイトにもひっかからないか、もちろん理想論ではあるが」


私の前では言わないだろうが、体を売る人も減るだろう。


「積極性も鍛えることが出来、ニートになる確率も減らせる、かもしれません」


「うーん……」


まあこれ希望的観測だが。ニートの生態は複雑怪奇だし。


「そしてなにより、皆さんは学校の勉強が必要だと思ったのはいつでしたか?」


「それはやっぱり働き始めてから……ハッ、そうか!」


「ええ、早めに仕事をすることにより勉強の重要さを知り、より勉学に身が入ることでしょう。大人になるともっと勉強しとけばよかったと後悔するものですからね」


「なぜ4歳児がそんな発想に……⁉」


流石の数独先生もドン引きだ。


「将来なりたい仕事を色々プチ体験出来ますし、農業や伝統工芸に興味を持つ子も増えるかもしれないですね」


まあ依頼主側に理解が必要かもしれないが、その辺は時間が解決するだろう。


「どうですか半月議員、この制度」


「次の国会で提出させていただきます」


即答。


「ちょ、いいんですかそんなこと言って?」


困惑する恵子さん。


「非常に素晴らしいお考えです、流石は久遠さ、久遠ちゃん。考えれば考えるほど可能性のある制度だと思います」


「ううむ、実現は難しそうだが……面白い!俺もこの制度がもたらす経済効果を研究してみよう」


「そうねぇ、子供たちがまっすぐ育つなら、いいかも知れないわね」


「ありがとうございます」


ククク、中々の好感触。

なるべく早く実現させておくれよ半月議員。

具体的には3年以内、私が小学生になるまでに!


そう、全ては私が楽しい学生生活を送るため!

普通に学校通うだけではつまらない、今の内に打てる布石は打っておくのだ!

そのためには労力を惜しまない。

月詠家の力が通じる政府関係者には話を通しておこう、丁度総理とも知り合いになったし。


色々楽しく議論してたら番組終了時間になった。

そういやこれテレビ番組だったね。


「本日のゲスト、天原久遠ちゃんでしたー」


「どーもー」


あー小学校でのギルド活動、楽しみだなー!

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