9、撮影終了
「はーい久遠様こっち向いて~、はい笑って~いいよいいよ~」
パシャパシャと何度もポーズを変え写真を撮られる。
「こんな感じでどうですか?」
「最高よ!」
最初妙に顔がこわばっていたカメラマンの蘭子さんだが、
今ではすっかり打ち解けたご様子。
流石プロのカメラマンはノせるのが上手い。
私も楽しくなってきた。
何故か様付けされてしまったが、気にしないでほしいらしい。
「一旦休憩でーす」
「くーちゃんおつかれー。はいジュース」
「ありがとーママ」
ふう、なんだか疲れた……。
椅子に座ってジュースを飲み一息付く。
「すっごく可愛かったよくーちゃん」
「ふふん、まあ当然ね」
「謙遜しないところがママ好きよ」
ん?
ふとスタジオの方に目を向けるとなにやら真剣な目で、写真をチェックしている蘭子さんが見える。
せっかくなので声をかけてみよう。
「はぁ~尊いわぁ~、オゥフ…このショットなんて最っ高……」
「蘭子さんお疲れ様です。どうですか?私変じゃなかったです?」
「は!こ、これはアリ、じゃなくて久遠様。変なんてとんでもない。久遠様は完璧よ。写真写りもすごく良いし、どれにしようか迷うほどよ」
「へー、あ、これかわいいかも」
「あーこれいいわよねぇ、この角度がいい味出してるわ。でもこっちも良くないかしら?」
「おおーこれもいいかも。蘭子さんってすごいカメラマンさんなんですね」
「フ、フヒュッ、ま、まあそんなことも、あるかしらぁ」
一瞬なんかキモくなった気がしたけど気のせいだろう、女性だし。
「でも宣材写真ってこんなに何枚も撮るものなんですね」
ポーズ変えたり衣装変えたり背景セット使ったり、かなり時間をかけて撮影していた。
タケルなんて一瞬で終わったのに。
私が美幼女だからか?
「そ、それはコレク、いや、久遠様があまりに素材が良くて。色々試したくなっちゃったのよ~」
やはりそうか。
それなら仕方ない。
私は腕を組みうんうんと頷く。
「それより久遠様。写真集作らない?」
「写真集?まあいつかは作りたいですけど」
「いつかじゃなくて今」
「今⁉でも私まだデビューもしてないし」
「大丈夫!モデルから始めても問題無いし。それに久遠様ならすぐ売れっ子になるでしょう?それなら今!3歳の姿を撮っておかない手はないと思うの!」
若干テンションに引いたがそれには同意。3歳の時間は短いのだ。
「それで歳を重ねる毎に、写真集を出すの。天原久遠3歳、天原久遠4歳、みたいに。
これぞ王の軌跡……絶対売れるわ!未来のファンはアタシの判断に感謝するでしょうね!」
「うーん……」
途中ボソッと何か言ってたけど、悪くない話だ。だって私銀河一可愛いし。その価値はある。
私が大女優になった暁には幻の超貴重本とかになって、今サインを書いておけば『これは天原久遠が3歳の時に書いたサインです』とか言ってプレミアが付いて、百万円とかいっちゃうに違いない。
でもなー、せっかくなら子役デビューしてからにしたい。
先に写真を撮ってもいいけど、やはり違うと思うのだ。
「なんの話?」
「あ、ママ」
母が様子を見に来たので説明する。
「写真集ね。いいんじゃないかしら」
母はいつも一秒で即決する。
「でもぉ」
「大丈夫、宣材写真が出来ればデビューなんてすぐだから。ていうか1週間後撮影だから」
「1週間後!?あれ?オーディションとかは?」
「そんなのくーちゃんには必要無しよ!」
「ええ……?」
すごいなコネって。
タケルがこの話を聞いたら泣いちゃうぞ。
「というわけで写真集の撮影は後日よ」
「え、ええ構いません。どの道準備とかも必要ですし。デビューを楽しみにしています。アタシはちょっと山に籠もってきます」
山?
こうしてトントン拍子に仕事が決まって行くのだった。
さて、ようやく子役デビューか。
長いようで……いや、超短いな、決意してから2週間でデビューとか、有り得ない超スピードだ。
ここはしっかり仕事をして、コネだけじゃない所を見せつけねばなるまい。
(見せてやるわ、天原久遠の実力を)
私は来たるべき子役デビューに向けて、静かな闘志を燃やすのだった。