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69、父の正体

今回は父の話でもしようと思う。


ご存じの通り「たこ焼き高天原」というたこ焼き屋を営む父、天原凪であるが、ちょっと見ない間に、都会の繁華街、老若男女の集まる公園の一等地に屋台を構え、連日大繁盛、1時間待ちは当たり前、SNSでも「ここに来たなら絶対たこ焼きを食べるべき」と拡散され、今や名物屋台として確固たる地位を築いていた。


そんな中、満を持して発表したのがあのオリジナルたこ焼き「高天原スペシャル」だ。


普通のたこ焼きとは一線を画す味わいと、その珍妙な名前が話題を呼び、たちまち大ヒット。遠方からたこ焼き目当てに人が訪れるほどだった。

客は爆増し屋台で対応できる限界をとうに超えていたが、父はあらかじめ周辺の屋台を吸収し、5店舗体勢で怒涛の対応。


そこに更に燃料投入、私だ。


私がブログやSNSで「ここ実はパパのお店なんだ~高天原スペシャル大好き~」とダイレクトマーケティングしたところ私のファンが殺到、そのファンが更に拡散し、大バズり。

父は更に屋台を吸収し、最早この公園の敷地半分がたこ焼きの待機列となるほどだった。


高天原スペシャルを一度食べたら最後、もう普通のたこ焼きには戻れない。その魔性の味に憑りつかれた客は多く、ニュースにも取り上げられ、各県の知事から「ぜひうちにも」とオファー殺到。


父はその声に応え、たこ焼き高天原を会社化。 地方展開も怒涛の勢いで進め、デパートや駅前のたこ焼き屋を次々吸収。 日本全国のたこ焼きシェアは、あっという間に塗り替えられた。


恐ろしいほどの短期間で父は「たこ焼き王」として日本に君臨したのだった。


高天原スペシャルには高いポテンシャルがあると思っていたが、予想を遥かに超える結果に、流石の私も驚きである。

一時期はお姫様の母と駆け落ちした貧乏な平民だと思っていたが、どうやら評価を改める必要がありそうだ。

今では商才のある素敵なパパだ、尊敬さえしている。


―――――――――――――



「頼む、神よ!来てくれ……!」


とある休日、私はリビングでスマホを両手で持ち神に祈っていた。

霊気を大放出して真剣に祈祷を捧げる。


「こいッ!」


画面をタップ。

クリスタルが光りその色は――金色!


「ぐあぁぁぁ!」


今日もソシャゲのガチャで盛大に爆死する私だった。

余りのくやしさに床をゴロゴロと転がる。やはり神などいないのだ。


「はぁはぁ」


しかしげに恐ろしきはこのガチャシステムよ、一体これにいくら吸われたことか。

頭では「買い切りゲーの方がコスパ良い」と分かっているのに、回すのを止められない。

このシステムを考えたやつに出会ったら、私は100回殴るだけでは気が済まないだろう。


「はぁ~」


そんな私がゴロゴロとしてる横で、父は父で休日をゴロゴロ過ごしていた。

今日の父はなんだかお悩みのご様子。


「パパどうかしたの?」


「たこ焼き屋、もう飽きたなぁって」


「え?」


今なんと?

小さな屋台から始めてその剛腕でたこ焼き史を塗り替えたたこ焼き王が飽きた、と。

もう今は家でこうしてゴロゴロしていてもお金が入ってくる状態。

むしろ今が一番面白いところではないのか。


「そんな飽きたって言われても」


「そろそろ新しいこと始めたいなぁ」


「ええ?今の社員さんどうするの?」


「そこは大丈夫、当てはあるから。そうだなぁ……うん、よし久遠、おじいちゃんのところに行こう!」


「はい?」



こうして連れて来られたのは日本トップレベルの大企業「高天原グループ」の本社ビルだった。

天高くそびえる超高層ビルは、こうして見上げても果てが見えない。


「えーっと、ここは?」


「お爺ちゃんがいるところだよ」


「はぁ」


もしかしてたこ焼き高天原って、名前被りとかじゃなくて本当に高天原グループと関係があるのだろうか。

じゃあ父は高天原グループの社員で、フードコート業界に参入するために、今まで単独で動いていたってこと?

そこで祖父も働いていると。


そう考えているうちにビルの中に慣れた様子で入っていく父。

守衛さんにサッとカードを見せると深く挨拶をされて通された。

やっぱり社員なんだ。


エントランスも受け付けを通さず素通り、勝手知ったる足取りでエレベーターに乗る。

かなり上の方、というかほぼ最上階まで登る。


そのままスタスタと歩いてたどり着いたのは会長室だった。


「ただいま~」


そのままノックもせず扉を開ける。

いやいやいやいや!会長って一番偉い人のとこじゃないの⁉

それをこんな、実家に帰るような気軽さで!


「ノックぐらいしろ、凪」


そこにいたのはとっても怖い顔をした壮年の男、多分高天原グループの会長、すんごく偉い人。


「まあいいじゃん今更。それよりほら」


固まっている私をぐいっと前に出す父。


「娘の久遠」


「あ、えーっと、久遠です……」


「…………儂の、孫?」


「えと、多分、はい、孫です」


「……そ、そうか、儂はお爺ちゃんだ、会えて嬉しいよ、久遠」


「えーとパパ?え?高天原グループの会長がお爺ちゃん?」


「正確には総帥だけどね」


総帥、つまり会長より上、一番偉い人。

しかも日本トップ企業の……。


「なんだ教えてなかったのか」


「その方が面白いかなって」


「全然面白くないよ!あれ?じゃあパパって高天原グループの?」


「御曹司ってやつだね」


マジかよ。

お姫様と駆け落ちした平民かと思ったら身分を隠した王子さまだった?

しかしそうなるとあの異常な商才も頷ける。


「そういえばパパの一族は何かしらの才能があるって言ってたけど、ほんと?」


「そうだ、天原家は昔から特殊な才能を持つ一族。その力で会社を築き、日本経済を支えてきたのだ」


「パパも才能持ってるんだよね?全然教えてくれないけど」


「うむ、こいつは――金儲けの才能がある」


「おおーーー!!!凄い!パパすごい!」


めちゃくちゃ凄い才能じゃん!私も完全記憶とか地味なのじゃなくてそっちがよかった!

すごいすごい!私の中でパパ尊敬ゲージが限界値を超えた。


「うーん、そんなに良いものでもないよ?」


あれ?なんだか微妙な顔。


「確かに才能は途轍もないのだが、中々癖が強くてなぁ。それで悩むこともあった」


「そうなの?」


「うむ、例えば……ソシャゲのガチャシステムを作ったのは凪だ」


「は?」


パパ尊敬ゲージが一気に底辺まで下降した。


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