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52、初ドラマ

「久遠様、テレビドラマのオファーが来てますが、どうしますか?」


「え?ドラマ?やるやる」


ある日斎藤がそんな話を持ってきたので、私は二つ返事で受けたのだった。



そんな訳で本日、私は人生初のドラマ出演のため、現場である貸しスタジオに赴いている。

一軒家風のスタジオで撮影するのはこの夏公開予定の半クールドラマ「リトルブレイバー」。


内容はこうだ。


結婚5年目の夫婦がいた。

娘にも恵まれ、一見仲の良い夫婦だったがその関係はすっかり冷めきっていた。

夫は優しいが仕事が忙しく、妻は一日中娘につきっきり。

娘は丁度難しい時期で、毎日泣き叫ぶので妻はノイローゼを発症。夫のサポートもなく精神的に参っていた。


そんなある日、妻は実家に娘を預け久々の休暇をとった。

そして出会ってしまったのだ。

イケメンで明るく、妻を肯定してくれる若い男に。

元々結婚前は派手に遊び歩いていた妻はすっかり男にのぼせ上がり、夫婦は破局。

夫は娘の親権をかけて争うが敗北、娘は妻の預かりになり、新しい父親と暮らすことになる。


ところがこの男がとんでもないDV男で、娘は危うく殺されそうになる。

母も男に影響され、娘を邪険に扱いだす。

パパに会いたい。自分の味方はパパだけだった。

娘はこの地獄のような家から抜け出し、本当の父の元に戻るため、その小さな体で戦うのだった。


こんな話である。


……ちょ、超ヘビー……


ホラーやサスペンスじゃないのかと3回くらい企画書を読み込んだがジャンルはホームドラマらしい。

たしかに家庭内の出来事だけどさぁ、ホームと言う暖かい響きからは程遠い内容だ。


やはりターゲットは昼ドラとかが好きな女性なんだろうか。

シリアス耐性のなさそうな私のファン達が見たら死んでしまいそうである。


もうお判りだろうが私はこの娘役だ。

一応父役が主演扱いだが、もう一人の主役と言っていい。

ネット上はともかく、TVではCMくらいしか出てない無名の私に、いきなり準主演とは思い切ったことをするものである。

そんな私が初ドラマでこんな大役……


まあ……出来ますけど?


ていうか私以外に出来る子いる?

誰にも出来ないでしょう?この天原久遠を除いて!

久々に私の本領を発揮する時が来た。


そうそう、そうだった、私は映像作品が作りたくて子役になったのだった。

それなのに最近はヨーチューバーだの商売だの幼稚園のボスだの。

違うでしょ?、私は世界一の女優になるんだから。


よし、やったる。


そう決意して現場を見渡す。

まずは監督に挨拶だ。


「おー久遠ちゃん久しぶり」


「え?盛岡監督⁉」


なんと監督は私の初CMの時の監督だった、名前は盛岡監督。


「あ、じゃあこのオファーって監督が?」


「そうそう、子役には難しい役だからどうしようかなって思ったんだけど、久遠ちゃんならできるだろってね」


「そ、そうですか?監督の前では変な姿しか見せてなかった気が……」


「別のCMも見たし、何より久遠ちゃんのヨーチューブ見てるからね、もうすっかりファンだよ」


「え、ええーほんとですか?恥ずかしい……」


「ははは、動画ではつよつよお嬢様なのに、仕事ではこんなに礼儀正しいんだから。ファンのみんなに教えてやりたいよ」


「も、もう、当然です。仕事は真面目にやります」


「偉いねぇ。まあ、俺は気にしないからいつも通り自信満々で頼むよ」


「お任せください!あれから成長した私を見せてあげますよ」


私はふんすと胸を張る。


「ははは、期待してるよ。母親役の人とも仲良くね?」


「?はい」


何か含みのありそうな言い方をされた気がするけど、まあいいや。

さて次は、と。


「やあ、君が久遠ちゃん?僕は悟、君のお父さん役だよ」


「あ、エタプロの天原久遠です!よろしくお願いします!」


「よろしくね」


父親役の悟さんと握手をする。顔は普通だが全身からいい人オーラが出てる。

絶対良い父親になりそうでハマり役だ。


「よっす、俺は亮太。間男役ね」


「よ、よろしくお願いします」


ちゃ、チャラ男だー……。


「おいおい引いてるだろ?亮太くんは一見ただのチャラ男だけど、仕事には真剣だから安心してね」


「チャラ男はひどいっすよ悟さん。まあこれで売ってるからいいんだけどね。ダメ男役は俺にお任せってね」


「ほへー」


プロだなぁ。しかしイケメンだけど目が細い人だな。本気だすと目が開くんだろうか。

普段は好青年、実はDV男という今回の役にぴったりだ。


「しかしこんな小さい子に俺暴力振るうの?出来るかなぁ、泣いちゃわない?」


「大丈夫です。まあ泣きはしますけど演技ですので本気で来てください」


「お?はははこれは失礼。よし、一緒にがんばろう」


「はい」


亮太さんが拳を突き出してくるので私も拳を合わせる。

えへへ。


「僕らはこういうドラマ慣れてるから、何か困ったことがあったら相談するんだよ?」


こういう現場の空気感、好きだなぁ。

私はお礼を言って2人から離れる。


さて、あとは女性陣だが……。


「ちょっとぉ、私は仕事始めはコーヒーって決まってんの、何紅茶出してんのよ!ったく使えないわねぇ、首にするわよ」


「すみませんすみません!すぐ買い直します!」


うわぁ、なんか凄いベタな人がいるぅ……。


今日から再開します!

でもストックがないので貯まるまでは日水の週2更新でいきたいと思います……!

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