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49、ドラゴントゥース

「はぁ、はぁ、遂に見つけた……クオンの歯、最後の一本だ……」


「やったわねカイト……みんなの犠牲、無駄にしないわ」


「ああミア、これで俺たちは救われるんだ」


西暦26xx年。

人類は宇宙からの侵略者の手により、滅びようとしていた。

突如現れたエイリアンたちは、圧倒的な火力で地球の文明をことごとく焼き払い、人々は地下シェルターでの生活を余儀なくされていた。


エイリアンは巨大で異形の姿を持ち、通常兵器では傷一つ付けることが出来ない、その上目からビームを放つ。

唯一の対抗手段は極少数の人間が持つ、霊力という不思議な力のみだ。


霊力の才能を持つ俺、カイトと幼馴染のミア、他数人は幼いころから特殊な施設で訓練を受け、成長してからは戦士として最前線でエイリアンと戦い続けていた。

しかし地上に大量にいるエイリアンに対し、俺たちは極少数。

何人もの仲間を見送り、歯を食いしばって戦っていたがもう限界が近い。


俺もそろそろ皆の所へ……そう思っていた時ある噂を聞いた。


万病を癒す至宝「クオンの歯」は全部で20本あり、全て集めるとどんな願いでも叶うという。


クオンの歯……聞いたことはある。

その歯の持ち主とその周辺は決して病に侵されることなく、瀕死の重症も癒す奇跡の歯だと。

そんな美味い話があるわけない、その時は追いつめられた人間が放つ妄想だと思っていた。

しかしある任務で偶然、俺たちはそのクオンの歯を手に入れることができたのだ。

青白く神秘的に輝く小さな歯、その歯のおかげで瀕死だったミアの命は助かった。


――本物かもしれない。


俺たちは一縷の望みを賭けて世界中に散らばるクオンの歯を探すことにした。

時に廃病院、時に宗教施設、時に悪の秘密結社のアジト。

歯を狙う他勢力との衝突もあったが、手を取り合うこともあった。

そうして苦労の末、俺たちは10年の時をかけ、19本の歯を手に入れることができた。

最後の一本の場所はもう分かっている。

俺たちはエターナル教の神殿へと向かった。


「教祖斎藤様、19本のクオンの歯を集めてまいりました」


「おお遂に……あとは我々が保管する最後の1本で、全ての歯が揃うことになります。まさか私の代でその時が来ようとは……ありがたやありがたや」


エターナル教のトップ、教祖の斎藤様はそう言って手を合わせ祈りを捧げる。

俺たちは歯の探索にあたり、世界最大の宗教エターナル教の協力を得ていた。

なんでもクオンの歯はエターナル教の神、クオンの聖遺物らしいのだ。


「さあこちらへ」


俺とミア―結局この2人だけになってしまった―は斎藤様に着いて塔を登る。

屋上には赤い絨毯を敷いた祭壇があり、台には20の穴が空いている。


「歯をこちらに」


俺は緊張しながら歯を1つ1つ、思い出と共に穴にはめ込む。


「最後の一つです、あなたが埋めなさい」


斎藤様から教団が大切に守ってきた歯を受け取る。

これが……神クオンが忠勤の証として当時の従者、開祖斎藤に手ずから与えた最初の1本か……

本当に願いが叶うのだろうか……いや、ここまで来たんだ!頼むぞ……!


カッ!


最後の1本をはめた途端、光が溢れる。


「まぶしっ……!」


「カ、カイト!あれ!」


「あ、あれは……!」


「おおお……!」


ミアが天を指さすので見上げてみれば、そこには巨大な龍がこちらを見下ろしていた。


『よくぞ全ての歯を集めた。さあ、願いを言うがよい』


俺たちは息を飲み黙り込んだ。下手なことを言って変な願いが成立する逸話は枚挙にいとまない。

俺たちは目線で語り合い、頷く。

大丈夫、シミュレーションは何度もした。


「俺たちの願いはただ一つ!地球上のエイリアンを全て駆逐し、二度と侵略されないように守ってほしい、そして元の平和な世界をとり戻したい!」


ただ一つと言いつつ、俺は第1目標、第2目標、そして余力があったら叶えてほしいなぁ、とフワっと第3目標を含む願いを叫ぶ。


『いいだろう、その願い、確かに聞き届けた』


そう言うと龍は輝き、眩い光に包まれる。


そして目を開けると、世界は一変していた。

エイリアンに破壊された街が元通りになっているではないか。


「これが……平和だったころの地球……」


「綺麗ね……」


俺たちが産まれた時には既に廃墟だった世界が、今はキラキラと輝きを放っていた。

そして灰色だった空には、青空に薄っすらと青白く輝く膜が張っていた。

もう二度と、エイリアンに侵略されることはないだろう。


「やったな!」


「ええ!」


「クオン様……開祖様……我々はやり遂げましたよ……」


こうして俺とミアは手をつなぎ、仲間たちが待つ場所へ走りだすのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「こんな話はどうかな!」


「私、宗教開くんですか?」


【壮大www元はただの乳歯なのにwww】


【世界滅んじゃうん?www】


【最後、龍だとあれだから女神久遠ちゃんが出る方がいいと思う】


【確かに、龍はあれだしな】


【19本の在処、もっと設定詰めようぜ】


【遺跡や宇宙ステーション、火山の中とか?】


【とある部族の秘宝で、族長の頼みを聞くと貰えるんだろ?】


【ほんとになったらどうしようwww】


【あり得そうなのが怖いwww】


あれから私たちはこうしてネットの皆と、歯についての創作話で盛り上がっていた。

みんなとこうしてワイワイ物語を作るのは楽しいものである。


「まあそんな力はないだろうけど、この歯が世界を救うことになったら最高に笑えるよね!」


私は隙間のある歯を見せてニカッと笑う。


「ははは、そうですね……」


【後世の人がこの動画見たら頭抱えそう】


【いえーい!未来の人見てるー?】


【盛大なフラグにしか見えないんだよなぁ】


【とりあえず2本目確保に向けて俺、働くよ】


この歯が本当に世界を救うことになるかは……ま、500年後に分かることか。


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