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48、国宝級の乳歯

「こんばんは~今私は隣町の廃教会に来ていまーす」


【くおんちゃーん】


【ばんわー】


【今日の服もカワイー】


今日も今日とて配信である。

服装は円華さんに作ってもらったエクソシスト風のロリータ服でテンション上がる。

巫女風のロリータ服もあるが、それは寺とか神社とか和風な現場の時に着る。

今日は教会だからエクソシストだ。


「じゃ、入りますかー」


「ひぇぇ~……あ、久遠様足元」


相変らずおびえる斎藤に声をかけられ下を見ると、木材が落ちていて少し躓く。


「おわぁ!っと危なーい」


「大丈夫ですか?」


「大丈夫大丈夫ー」


うーんあとちょっとなんだけどなぁ……。

私は口をモゴモゴさせて上の空。

いかんいかん集中せねば。


【なんか今日久遠ちゃん調子悪い?】


【いつもよりぽーっとしてるな】


視聴者にも心配させてしまったか。


「ちょっと気になることがあってねー。タイミング次第で報告できるかもだから、待っててね」


【なんだろう】


【偉い人に怒られたとか?】


【チャンネル終了とかじゃないよね】


私は敢えて答えず探索を続ける。


「あ、悪霊。悔い改めよ!」


悪霊が出たのでレイピア風の模造刀を振るう。


「ギヤァァァ……」


「ぎゃ!ぁ…お疲れ様です」


一撃で消え去る悪霊。

うーんもう少しなんだけどなぁ……。


【瞬殺www】


【俺が驚く暇もなかったw】


【一体どんな霊だったんだ……】


「うーーん……あ!」


【お?】


【なんぞ?】


「乳歯が抜けましたー」


私はやっとこさ抜けた歯を掴み、テッテレーと掲げる。

そう、朝から歯がグラグラして、抜けそうで抜けなくてずっと気になっていたのである。

やっと抜けて非常に晴れやかな気分だ。


【おおー乳歯】


【おめでとう!】


【上の歯なら地面に、下の歯なら屋根に投げるんだっけ?】


「あ、聞いたことあるかも。今回は下の歯だから屋根に投げるの?」


【そうそう】


【後で誰かが回収に来るんじゃ……】


【有り得る。ていうか欲しい、いや変な意味じゃなく】


【正直俺も欲しい。変な意味じゃなく記念にね?ホントだよ?】


【お前らwちょっと車にガソリン入れてくるわ】


おや?意外と需要がある?

もしかしてこれお金になるんだろうか。

需要ある所に商機あり。

なんか、急に惜しくなってきた。


「うーん……これ、オークションに出したらどうなるかしら」


「え!?……えー欲しがる人はいるでしょうが……変な団体から怒られそうな……」


斎藤が微妙な顔をする。


【乳歯オークションwww】


【百万まで出せます!】


【流石久遠ちゃん、儲けのチャンスを見逃さない】


【これは醜い争いになりそうだ】


【変な使い方しないから!神棚に入れて飾るだけだから!】


「だめ?」


大金が手に入るなら多少変なことされてもまあ……ただの乳歯だし。


「そうですね……完全に煮沸消毒して、毒素の強い素材で防腐コーティングすれば大丈夫なのではないでしょうか」


「それなら飾る以外できなさそうね」


【斎藤ぉ!】


【べ、別にそれでもいいよ?元々飾ろうとしてたし?】


【正直ペロペロしたかった】


【男子さいてー】


【私女だけどペロペロしたかった】


【もうダメねこのチャンネル】


む、視聴者の反応が芳しくない、このままでは価値が下がってしまう……。


「あ、そうだ!この歯の持ち主は病気にかからないよう祈りを込めるのはどうかしら!」


「え?」


付加要素を付けて価値をあげるのだ。適当に霊気でも込めておけば何らかのご利益はあるだろう。


「まっててね?えー無病息災家内安全、周りのみんなが健康になりますよーに」


私は歯を両手で包み込み、額を当ててちょっと強めに霊力を送り込む。呪文は適当だ。

すると歯はぼうっと青白く光り、神秘的な輝きを放つ。


「どうこれ、高く売れそう?」


これだけ綺麗なら売れるでしょ!


「う、売れると言いますか、もはや国宝級の乳歯と言いますか……」


【これ絶対ヤバいやつでしょwww】


【世界がこれ巡って戦争不可避www】


【いったいいくらになるんだ……?】


【今ならそれ程気付かれてないから無理してでも買うべきか……?】


そんな効果、常識的に考えてある訳ないのにみんなノってくれて優しい。


「おおげさねー、そうだ!ついでに乳歯20本全部集めると何でも願いが叶うってのどう⁉」


【wwwwwww】


【どうなっちゃうのーー?www】


【完全にあれじゃんwww】


【流石にそこまでの効果はないよね?ね?】


「よーし、20本集めたら何でも願いが叶いますよーに……いや、いきなり全部集められたら面白くないし、今の歯の力で願いごとは無理がある……あ、それなら歯が癒した人々の感謝の気持ちを受けると、徐々に力を増すようにしたらいいんじゃない?それで500年くらいたって全部集めたら、その力でどんな願いでも叶えられるほどすごい歯になるの!うん、この設定で行こう」


【伝説が始まったな……】


【これどうにかして後世に語り継がないとダメだな】


【悪い奴に渡らないように俺らで色々考えないと……】


【久遠ちゃん商売のことしか考えてないんだよなぁ】


「よしっと、記念すべき1本目は斎藤にあげるわ」


「え?」


「これで健康になって末永く私に仕えるのよ、大事になさい」


「は、ははぁーーー」


斎藤は跪いてポケットを漁り、清潔な白いハンカチを掲げるのでそこに青白く輝く歯を置いた。

まったくノリのいい奴である。


【斎藤ーーー!!!】


【てめーーーこのやろう!!!】


【お前が代表してルール決めろよ!】


【残り19本……!】


偶然だと思うがこの日以来、斎藤はまったく病気にかからなくなったらしい。


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