43、久遠と幼稚園
「…………」
わーきゃーー
「はーいみんな静かにねー先生の言うこと聞いてー」
キャッキャッキャッキャ
「お願いだから聞いてー……」
皆様ごきげんよう、久遠です。
今私がいるのは動物園、ではなく幼稚園です。
あれから動画配信したりちょくちょく子役の仕事をしたりしていたら、いつの間にか幼稚園に入園していました。
これで私もお姉さんですわね、うふふ。
今日は入園から1週間ほど。
元気いっぱいの子供たちは暴れまわり、新卒らしい若い女の先生は完全に舐められ、学級崩壊の様相を見せております。
ボカッ
私がただ一人行儀よく先生の前で体育座りをしていたら、お猿さん、もとい園児の遊んでいた柔らかいボールが後頭部に当たりました。
「なに良い子のふりしてんだブース」
…………
落ち着け落ち着けBe Cool……。
精神年齢大人な私は皆の範となるよう振る舞い。
園ではおしとやかに、お嬢様らしくいこう。そう決めたのではなかったか。
「黙ってんじゃねーよブース」
またしても私にボールをぶつけようとするオス猿。
先生は何かを感じ取ったのかアワワとしている。
パシッ。
「あ?」
私はボールを片手で受け止めゆっくりと立ち上がる。
「誰がブスじゃこのクソガキが!!!」
「あいたぁーー!」
全力でボールをクソガキにぶつける。
「はぁーーーーー……」
「あ、あの、久遠ちゃん?」
まるで猿山の猿のような子供たち。
経験不足で統率力のない先生。
このままでは平穏で穏やかな幼稚園生活など送れる筈もなし。
仕方ない。
このクラスは私が締める。
…………
……
「は、はーい静かになったねーじゃあ今日は折り紙を教えまーす」
10分後、教室は私の支配下に収まった。
やり方は簡単だ、力だ、力こそ全てを解決する。
野性的であればあるほど、強者には従うものだ。
男子をボール一つで次々となぎ倒し、敗者は支配下におく、そうすると女子も私に逆らったらマズイと感じ、自然と大人しくなった。
そして最後に私怖くないですよー仲良くしましょうねー。ほら先生が困ってるから、みんなも先生のいうこと聞こうね?
とニッコリ言ったら女子たちはコクコクと頷いてくれた。
「じゃあみんな、折り紙しよっか?」
「「ハイッ!」」
ふう、やっと授業を始められる。
さて、今日は折り紙か。私のクリエイティブな感性は折り紙とて決して手を抜かない。
いや、そういえば折り紙なんて普段滅多に作ることないな。まずは先生の説明を聞くか。
「まずは半分に折って、折り目を付けます、それからこうやってー、はい、紙飛行機ー」
先生が紙飛行機をピッと飛ばすと綺麗に空を舞う。
どうやらそれなりに勉強してきたようだ。
よし、私もすんごいのを作ってやろう。
「うーんできないよー?」
と各地から疑問の声が上がる、まあ幼児にとっては難しいこともあろう。
「ここはこうやってこうだよ」
私はボスとして女の子に優しく教えてあげる。
全体に目を通し、困っている子に積極的に教えて回る。
「すっげーー!くおんさまのすっげー飛ぶ!どうやんの!?」
そして男子には私の実力を見せつける。
定期的に私には敵わないと力を示すのが肝要だ。
「ふっ、子分の君たちには特別に教えてやろう。いい?私に従えばこれからも特別な技を教えてあげる。そうしていれば君たちは特別な戦士になれる。やがてこのクラスは最強となり、最後は我々がこの園を支配するのだ!」
「Fooooo!さすがくおんさま!何言ってるかよくわかんなかったけど、おれたちくおんさまに着いてくぜ!」
「「く、おん!く、おん!」」
「あ、あわわわ……真面目ないい子だと思ったのに、正体は覇者⁉このクラスどうなっちゃうの~」
なんだかノリで変なことになってしまったが、楽しい幼稚園生活を送れそうである。
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