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天才子役!天原久遠のオーバーワーク  作者: あすもちゃん
始まりの3歳児編

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37、久遠とゴスロリ

ロリィタ専門店「エデン」


「ロリィタショップ?くおんちゃんゴスロリ興味あるの……?」


「あーうん、ちょっとね」


正直めちゃくちゃ興味ある。

ファッションに疎い私だが、唯一自分から着てみたいと思った服、それがゴスロリ。

あのダークで幻想的な格好が中二心をくすぐるし、リボンやフリルは見るだけでときめく。

究極の少女らしい服、でもそのハードルは高く、着こなすには本人の資質、環境、お金など様々な壁が存在し、よほど好きではないと扱えない玄人向けのファッション。

いや、そんなことはどうでもいい。

かわいい、ただただかわいい。

服を着たくなる理由なんてそれ一つでいい。

私あれ着たい。絶対かわいいと思う。世界で一番似合うと思う。


「くおんの目が見たことないほどキラキラしてるわ」


「なるほどゴスロリ……!盲点だった……!」


「気になるなら入ってみよー」


「え、そんな私なんかが……」


「いつも自信満々なのにこんな時だけ何言ってるのよ」


カランコロン。

ドアベルがなり、ついに憧れのゴスロリショップに足を踏み入れる。


「ふわー……かわいい……」


そこはとても幻想的な空間だった。

ファンタジックなインテリアで統一され、妖精や天使の置物が私達を迎える。

照明はシャンデリア、棚や窓枠は蔦や花のイミテーションで彩られている。


フロアにはスタンダードな黒と白のフリフリの服の他。

ピンクやイエローのは甘ロリや、パンク風、和風、中華風などのバリエーションも豊富。

こんなのもあるんだ。どの服もとんでもなくかわいい。


それに何だか、想像していたゴスロリよりも、こっちの方が断然良い。

レースの緻密さや、リボンの配置、黒の深みとか。

これは作り手のセンスだろうか。

見てるだけで幸せだ、全部着てみたい!


「あら?可愛らしいお客さんね」


「あ、お邪魔します!」


店長らしき人が現れる。意外にもゴスロリではなく、ズボンに革靴、ベストを着たボーイッシュな中世のテーラー風の格好だ。

思わず頭を下げてしまった。


「ふふ、ごゆっくり」


「着てみてもいいですか?」


服屋に慣れてる悠里ちゃんが気負わずに対応する。


「いいけど……そちらの子が着れるサイズはうちにはないわね」


「がーーーん!!!!」


そ、そんな……そうだった、服はサイズが合わないと着れないんだ……。

私の体は、ちんまい平均的な3歳児。

体力や知力はあっても体は一般の3歳児なのだ。

く、なぜ私は未だ幼児なのだ……!

憧れの服が目の前にあると言うのに……!


「くおんがこんなにショック受けるの初めて見たわ」


「あら、着たいのはその子だったの……うーんオーダーメイドも出来るけど……」


「!それします!オーダーメイドください!」


「ええ?高いから親御さんにまずは相談しなきゃね」


「斎藤!」


「はっ、失礼しますわたくしこちらの久遠様の専属マネージャーの斎藤と……」


私は過去一期待のこもった目で斎藤を見る。


「これはご丁寧に、幡多円華はたまどかと申します。あら子役なの?確かにものすごくかわいいと思ったけど……ん?、天原久遠?」


「は、はい!」


「有栖川蘭子って変態知ってる?」


「知ってます!変態です!」


お世話になったカメラマンさんなのに、思わず変態呼ばわりしてしまった。


「ああ、あなたが彼女の言っていた。確かにこれは……」


「あ、あの、なにか……」


「いえ、最近すごくかわいい子と仕事したって聞いたから、彼女、友人なの」


「そうなんですか?」


「ええ……んーそうね、いいわよ、久遠ちゃんのために服、作りましょうか」


「ほんと⁉」


「ええ、その代わりと言ってはなんだけど、モデルもしてくれない?私の作った服で、是非写真に残しておきたいわ」


「え?モデル?」


私なんかがこのハイセンスなゴスロリ様を着てモデルなんて大丈夫なんだろうか……。

いやいや何を言っているのだ私らしくもない、私は天原久遠だぞ。

世界一かわいい私が似合わないなら誰が似合うというのだ。


「斎藤!!!」


「お任せください」


さっそく斎藤が交渉に入る。これほど斎藤を頼もしく思ったことはない。


「やったわねくおん!」


「ゴスロリ着たくおんちゃん……!絶対かわいい……!」


「楽しみだねー」


「うん!」


こうして私は、この先天原久遠のトレードマークの一つとなる、ゴスロリと出会ったのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


その日の夜。


「もしもし蘭子~?」


「あら珍しいわね、円華から電話だなんて」


「ふふふ~今日会っちゃったんだ~、ねえ誰だともう?」


「な、なによもったいぶって、早く言いなさいよ私は忙しいの」


「あ、ま、は、ら~久遠ちゃん!」


「女王のアリス!」


「いや~すっごいかわいい子だったわね~、私の作った服をキラキラした目で見つめて、はぁ~ゾクゾクしたわ~」


「久遠様があんたの店に⁉へ、変なことしてないでしょうね」


「あなたじゃあるまいししないわよ」


「アタシもしたことないわよ!」


「でね?お店に来てくれたけど、まだ彼女に合う服がないからオーダーメイドすることになったんだけど、あなた久遠ちゃんのこと良く知ってるみたいじゃない、一枚噛む?」


「噛む噛む!っていうか久遠様がゴスロリ⁉それ絶対やばいって!人類みんな尊死しちゃうやつ!」


「尊死はあなただけだと思うけど、気持ちは分かるわ。それでね、ついでに写真撮影も頼んだから、スケジュール開けておいてね」


「円華!同好の士!今日こそあんたの親友でいて良かったと思うことはないわ!」


「あなたに同好の士と言われると非常に微妙な気持ちになるけれど、まあ趣味が似てるのは間違いないわね。じゃあ、頼むわよ」


「任せて!あんたも最高の服、頼むわよ!あ、まず写真集を送るわね」


「りょーかい、ふふ、楽しくなりそうね」


さて、どんな服にしようか。

女王のアリスか……今日の様子はただの夢見る女の子だったけど、その線でいってみようかな?


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