34、久遠の休日1
「瑞希ちゃーん」
「くおんおはよー」
お渡し会が終わった次の日曜。
私は久々に羽を伸ばすことにした。
丁度タイミングよく、お友だちの瑞希ちゃん達から遊びのお誘いが来たので、出かけることにしたのだ。
ちなみに斎藤も着いてきている。
遊びに行くと母に言ったら斎藤を連れていくように言われたからだ。
こんな休日にご苦労様である。
「くーちゃんおはよー」
「くおんちゃんおはよう……!」
杏奈ちゃんと悠里ちゃんともご挨拶。この3人はいつも一緒だ。
「ていうか斎藤さんも一緒なんだ」
「そうなんだよーママったら過保護で」
「いや普通3歳児を一人で行かせないでしょ、私たちも助かるし」
「さいとうさんよろしくお願いしますー」
「斎藤さんよろしくお願いします……!」
「ええ、よろしくお願いします。私はいないものとして楽しんでください」
にっこりとデキるマネージャー風に挨拶をする斎藤。
「ていうかみんな斎藤のこと知ってるの?」
「臨時で何度かお世話になったことあるわよ。他のみんなも大体そう」
こくこくと頷く杏奈ちゃんと悠里ちゃん。
「斎藤って便利に使われ過ぎじゃない?ちゃんと休めてるの?」
「いつも久遠様に着いてるわけではありませんし。マネージャー部のみんなで回してるだけなので大丈夫ですよ。少なくとも前職よりは遥かに休めてます」
前職どんだけブラックだったんだろう。
「じゃ、どこ行く?カラオケ?ボーリング?」
「そんな不良なとこいくわけないじゃない」
「不良……⁉」
「わたしたち小学生が行くとこなんて一つしかないわ」
「というと?」
「公園よ!」
というわけで公園に着いた。
ちなみに公園に縁がある斎藤は微妙な顔をしているが、
ここはあの公園とは別の場所である。
わーいと遊具に群がる私達。
そして遊びながらおしゃべりするのが女子小学生流である。
「みんなは最近どうしてるの?」
一先ず近況報告会だ。
「わたしはひたすら歌とダンスのレッスンね。アイドル志望の子達と組んで、色々試してるの。相性がいい子がいたら、ユニットを組んでデビューするんだって」
アイドルの日常は歌と踊りの練習漬けでほんとうに苛酷そうである。
ぶっちゃけ私がアイドルやりたくない理由の何割かはそれだ。
「でもこの前はジュニアアイドルのバックダンサーをやったわ!」
「おおーすごい」
「わたしはねー子供番組のエキストラに何度か出させてもらったよー」
「ほうほう」
バラエティ志望の杏奈ちゃんは小さい現場から場数を踏んでいくようだ。
「わたしはウォーキングのレッスンしたり、子供服のモデルを少しやれたかな……!」
モデル志望の悠里ちゃんはさっそくモデルとして働いているようだ。
「みんな頑張ってるね!」
「そういうくおんは……なんだか凄いことになってるわね」
「怖かったけど見たよー、カッコよかった」
「あの巫女服すごくいいと思う……!」
「て、照れますな」
「なに照れてんのよ、すごいじゃない!」
バシッと背中を叩かれる。
えへへ。
「でもまさかヨーチューバーになるとは思わなかったわ。あれ考えたの斎藤さん?」
「いや?全部自分プロデュースだよ、ブログも動画チャンネルも自分で作ったし」
「その時点でマネ出来ないわ……あれって子供が作れるものなの?……」
「でも絶対作った方がいいよ、これからはネットが主流なんだから、自分であれこれ出来るようになって、どんどん発信していかなきゃ!そもそも……」
「ほへー」
私がネット社会の生き残り論を展開していくとみんながほへーとなった。
いかん熱が入り過ぎた。
「まあみんなもそのうちスタッフが作ってくれると思うから、その時になったらみんな私とコラボしようよ」
「ええーコラボは嬉しいけど幽霊怖いよー」
「いや普通にお部屋でおしゃべりしてるだけでいいから」
「くおんちゃんの着せ替え配信やりたい……!」
「それいいかもね」
こうして姦しくおしゃべりしてるうちにお昼となった。
「そろそろお昼だけど、瑞希ちゃんたちご飯どうするの?」
「ふっふっふ。今日は最近巷で人気の屋台に皆で行こうと思ってね」
「屋台?」
もったいぶる瑞希ちゃんたちについていく私。
なんだろう、屋台?クレープとかかな。
と考えてる間に足が止まる。
「ここよ!」
バーンと手を向けられた先にあったのは
「たこ焼き高天原」と書かれた屋台と、
せっせとたこ焼きを焼いている父の姿だった。
私の目は死んだ。
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