表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/113

28、初生配信

※【 】は視聴者コメント



「みんな~こんばんは~天原久遠でーす」


【こんばんはー】


【くおんちゃーん】


【ちゃんねる開設おめでとう!】


【巫女服かわいー】


【え、なにこれ怖い奴?】


事前にブログやSNSで宣伝していたこともあり、配信が始まるとさっそく数少ない私のファンが書き込んでくる。

ちなみに宣伝はしたが心霊配信だとは言ってない、サプライズだ。


「私のチャンネルでは色んな怖い場所を回って、悪い幽霊やっつけちゃいます!」


【まさかの心霊動画www】


【や、やっつけちゃうんだ……】


【背景がすでに怖いんだが】


【ええ……?ていうか大丈夫なの?】


「保護者兼アシスタントとしてマネージャーの斎藤が付いて来てます。ちなみに幼児は8時以降働いたらダメだけど、これは趣味だから大丈夫です」


「始めまして、久遠様のマネージャーを務めております、斎藤と申します、よろしくお願いします」


【趣味ならいいの?】


【斎藤呼び捨てにされてんのか、羨ましい】


【斎藤ちーっす】


【マネージャーか、頼りになりそうな声してるわ】


【絶対久遠ちゃん守れよ!】


意外と好意的。まあ流石に幼児にガチ恋もないか。


「と、いうわけで、私、美幼女退魔師久遠が、悪い幽霊、退治してあげるわ!」


私は巫女服に木刀を構え、ビシッとポーズをとる。


「行くわよ斎藤!」


「はい、久遠様」


【なるほどーそういう設定か】


【主人と従者って感じでいいね】


【お嬢様な久遠ちゃんもかわいい】


これでキャラが変わったことを印象付けられたかな?

よし、じゃあ探索を始めよう。


「私は今、都内の有名な心霊スポット、ホテルサンズリバーに来ています。うわー不気味ねー」


午後8時、エントランスは荒れ果て、割れた窓ガラスから吹き込む風の音が不気味に響いている。壁には黒いシミが広がり、ところどころに置かれた家具が分厚い埃をかぶっている。


明かりは私の懐中電灯と、斎藤のヘッドライトのみ。

視界は非常に悪く、暗闇から何かが這い出てきそう。


「く、くくく久遠様?やっぱりもう帰りましょうよ、この企画止めて他のにしませんか⁉」


【斎藤ビビりすぎwww】


【頼りになりそうなのは声だけだったw】


「嫌よ、まあ見てなさいって、幽霊が来ても私が倒してあげるから」


そういってゆっくり進む私。

長く先の見えない廊下を歩く。

カタン、とドアが鳴る。


「うわぁぁぁ!!」


「風で動いただけよ」


【くおんちゃん強い】


【頼もしすぎるでしょこの幼女】


【俺、最初クソ怖かったけど、なんか安心してきた】


む、もう少し怖がるべきだろうか、いやでもなあ、斎藤がここまで怖がってると、逆に冷静になるっていうか。

まあいいか、怖がるのは斎藤担当、私は落ち着き担当で。


ゆっくりと一つ一つの部屋を開け、ホテルにまつわるエピソードを語る。


「この部屋では昔殺人事件があってね……それ以来夜中に不気味な影が徘徊するようになって、それが原因でホテルは廃業、オーナーは自殺してしまったそうよ……そしたら、後日影が2つに増えてたんですって、その後も……」


「や、やめてくださいよ……もっと明るい話しましょう?」


斎藤が大げさに怖がってくれるので、私の語りにも熱が入る。


【こえー】


【ひぃぃぃ】


よしよし、大分恐怖を与えることが出来た。

もうそろそろ悪霊に出てきてもらおうかな。


私は悪霊の気配を探り始める。

ちなみにここまで悪霊はいなかった。

心霊スポットだからと、実際に悪霊が沢山いるわけではないのである。


いても一匹か二匹……いた!


「斎藤、見つけたわ」


「え?なにをですか?」


「悪霊、今あなたの後ろにいるわ」


「え?うわぁぁぁ!!!!!」


「オオオオオオオオオ……」


斎藤の後ろに不気味な姿をした悪霊の姿があった。

振り返った斎藤は叫び、尻もちをつきながら後ずさる。


【え?ほんもの?】


【CGすごいな】


【ガチでこわいんだけど⁉】


悪霊は本来以前見たような黒いモヤだが、ここのような思念がうずまく場所にいると、人々が恐れる姿をとるようになる。

つまり、心霊スポットの悪霊はものすごく怖い。


ちなみにカメラに霊気の膜を張ることで、カメラ越しにも霊が見えるようになっている。

斎藤には霊気を張ったメガネを渡してある。


「ちょ!久遠様⁉なんですかこれ⁉ほんもの⁉うわぁぁぁ南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏!!!」


斎藤はへたり込みながらも、懐から数珠を取り出しお経を唱える。

カメラがしっかり悪霊を捉えているのは、偶然なのかプロ根性なのか。


私はカメラの位置を気にしながら斎藤の前に立つ。


「斎藤、悪霊にはお経なんて効かないわ」


「じゃ、じゃあ一体どうすれば……!」


私は木刀に霊気を通す。


「簡単よ……」


青白く輝く木刀をしっかり振りかぶり。


「殴ればいいのよ!!!」


思いっきりフルスイング。


「ギヤアァァァァァ……!」


刀身が霊体にメリ込み、光の粒子をまき散らしながら悪霊は爆散した。


あ、しまった、もう少し苦戦をするべきだったか。


「あ、あわわわわ」


【すっげーーーー!!!】


【殴ればいいのよてwww】


【金かかってんなぁ】


【すごいスカッとした!】


【ありがとう久遠様!!!】


【斎藤頑張れ、超頑張れ】


うん、意外と反応は悪くない。

じゃあ〆に入ろう。

私は木刀を構え勝利のポーズをとる。


「これにてホテルサンズリバーの悪霊退治、完了よ!」


「え?え?なんだったんですか今の!え?久遠様⁉」


「それじゃあみんな、また次回の動画でお会いしましょう。チャンネル登録、高評価お願いします!」


「え?あ、お願いします……!」


よし、撤収!


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

【なんだかすごいものを見た気がする】


【どうなってんの?ほんもの?】


【CGに決まってんだろ、ピュアか】


【まあCGでもすごく楽しかったな】


【斎藤が意外といいキャラしてたw】


【幼児子役のほっこりお遊戯動画かと思ったら、斜め上の方向に天井突き抜けて宇宙へ飛んで行ったでござる】


【流石久遠ちゃんだよな】


【初見だけどすごいの?この子、たしかにかわいいけど】


【天才だって一部では話題だね、ものすごく記憶力がいいんだって。ていうか3歳児が漢字駆使してブログ書くのもおかしいし】


【え、あれスタッフが書いてるんじゃなくて本人なの?すごすぎない?】


【マジマジ。証拠のショート動画ペケにあげてたし】


【はえー、俺3歳の頃とか文字すら読めなかったのに】


【今回の動画も全部久遠ちゃんが主導して考えたらしいよ】


【もはや天才の枠超えてない?】


【なんにせよ、俺たちは伝説の始まりを見た。これからも可愛くて天才な久遠ちゃんを推していこう】


【だな】


【賛成。さっそく今日の動画を拡散しておこう】


【俺の推してたアイドル、不祥事で解散して落ち込んでたけど、新しい推しができて生きる希望が湧いてきた】


【ゲスールプロwww】



この日を境に、天原久遠の名は一気に広まるのだった。


お気に召したら感想、ブクマ、☆評価お願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ