27、くおんちゃんねる
「きのうは、子供服のモデルをしました、たのしかったで、す、と」
カタカタカタカタ……ッターン。
軽快にキーボードを叩く音が響く。
「後は画像を貼り付けて……完了っと」
私は今自宅で日記を書いている。
ただの日記ではない。
ネット上で誰でも読める日記、そうブログだ。
今の情報化社会、ただ受け身で他人のメディアに出させてもらうだけでは到底足りない。
自分のメディアを作り、SNS等も活用し、多方面から積極的に情報発信をしないと、この世界は生きていけないのだ。
兼ねてからそう思っていた私は、夏休みの後半にノートパソコンを買ってもらい、タケルの記憶を頼りに自力でホームページを立ち上げたのである。ちなみにサーバー代などは事務所持ち。
活動報告となるブログでは、毎日自撮り写真や今日のご飯、気になったものなどの写真を上げている。
開設から2ヶ月目となるブログだが、PV数も少しづつ伸びて、順調な滑り出しといったところか。
他にも定番SNSである「×(ペケ)」や「インスタント」などもやっているが、伸びは微妙。
やはりまだCMをちょっと撮っただけだし、知名度がほぼ0なので。
先日子供服のモデルをしたが発売はまだ先だ。
作業がひと段落し、私は父のゲーミングチェアにもたれ、今後の展開を考える。
「そろそろあれをやるか……」
あれ、動画サイト「Yo! Tube」デビューである。
うまく当たればブログやSNSなんて目じゃないくらいPVを稼げて、まったくの無名でも一気に有名人になれる夢のあるサイトだ。
だがその分ライバルは非常に多い。
余程興味を引くコンテンツでないとヒットさせるのは至難の業である。
そんな世界で私が提供できるコンテンツとは?
私がおもちゃで遊ぶ動画?幼児向けではよくあるが、幼児しか見ないから却下。
私が様々なバラエティ企画に挑戦?ウケそうだが、ネタ出しがめんどくさくて、結局他で流行ったものの模倣になりそうで嫌。
ゲーム配信?定番だがありきたりすぎる。それに他人の作品に乗っかるだけで生産性がなく、私のクリエイターとしてのプライドが否定する。
オリジナリティがあって、私にしかできないもの、それは一体……。
と色々悩んでいたがこの夏休みにヒントがあった。
あれならイケるかもしれない、と。
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「はい、というわけで今私は都内某所の廃ホテルに来ていまーす」
「あの、久遠様、やっぱりやめません?危ないですし」
私が選んだコンテンツ、それは心霊動画である。
曰くのある廃墟や神社などを巡り、視聴者に恐怖体験をお届けする動画だ。
これが意外と定番ジャンルで、根強い人気がある。
じゃあオリジナリティないじゃん、と思うだろうがそれは違う。
私のは悪霊退治動画だからだ!
普通は一般人が怖い怖いとワーキャーする動画だが、私は幽霊を退治出来るのだ。
前半に視聴者をドキドキさせつつ、後半では原因をスパッと退治するカタルシス、しかも戦うのは美幼女退魔師、これである。
能力バレたらやばいんじゃないか、と一応月詠家に確認したところ、別に問題無いらしい。
そもそも大昔は普通に人前で除霊してたし、本来は隠すことでもないとのこと。
それにどうせ誰も信じないだろうから、派手にやってしまえ、と祖母のお言葉。
それでいいんかい、と思わなくもないが、許可が出たなら遠慮なくやらせて頂こう。
というわけで私は巫女っぽい衣装に身を包み、手頃な心霊スポットに赴いたのだ。
ちなみに移動カメラその他諸々は斎藤。
「なぁに斎藤、怖いの?」
「ぜ、全然⁉そんなことないですけど⁉私はただ久遠様の身を案じて!」
「そう、じゃあ行きましょうか」
普通こういった女優が出る個人動画では男を映すのはタブーだが、私は斎藤を動画に出すことにした。
だって私まだ幼児だし、それになんだか面白くなりそうだから。
出すと言っても声だけで、斎藤はヘルメットにライトとカメラを付けて、私の後をついてくるので、視聴者は斎藤目線になる形だ。
ただ斎藤を伴う以上私はお嬢様口調になってしまうのだが、それも幼女退魔師としてのキャラ作りに一役買うことだろう。
「じゃ、配信始めるわよー。しっかり撮ってねー」
「あわわわ……ナンマンダブナンマンダブ……」
美幼女退魔師くおんちゃんねる、スタートである。
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