25、伝説の斎藤と2度目のCM撮影
「おはようございます!エターナルプロダクション所属、天原久遠です!今日はよろしくお願いします!」
「おうよろしくねー」
今日は人生2度目となるCM撮影に来ている。
仕事は講師の許可制だが、マナーが問題ない人は、演技や踊りが必要無い仕事ならしても問題ないらしい。
ちなみにこの仕事を取ってきたのは、正式に専属マネージャーとなった斎藤である。
「斎藤ちゃん久しぶりー。いやー良かったよ誤解が解けて。現場の人間はみんな信じてたけど、あの燃え上がりでしょ?どうにも出来なくてねぇ」
「いえ、ご心配をおかけしました。今後も変わらぬお付き合いをして頂ければ十分です」
「もちろんだよ、斎藤ちゃんの担当なら僕らも安心だしね」
「ありがとうございます」
顔見知りらしい斎藤が監督と親し気に挨拶を交わす。
おお〜凄い、出来るマネージャーって感じだ。
っていうかもしかして斎藤ってかなり有能?
「?どうしました久遠様?」
私がジーっと見てると斎藤に気付かれた。
「斎藤ってもしかして有能なの?」
思ってることをそのまま言ってしまった。
「どうでしょう、でも現場経験や人脈はそれなりにありますので、久遠様のお役にきっと立てると思いますよ」
「ははは!久遠ちゃん、こう言ってるが斎藤ちゃんほど有能なマネージャーは滅多にいないよ。なんたって担当アイドルのことごとくを、トップアイドルまで押し上げる伝説のマネージャーだからね」
「で、伝説?」
「その手腕に惚れこんで、色んな事務所からスカウトされたってのに、義理堅いもんだから全部断ってさ、まあ前回はそれが災いしたんだけど」
「ほへー」
「か、監督、その辺で……」
感心してたら斎藤が会話を止める。
そうなんだー、へー伝説ねぇ……
他にも挨拶に回るとみんな似たような反応だ。
「斎藤ってほんとにすごかったのね。でもそんな人が私の専属でいいの?」
私は斎藤相手だと何故かお嬢様言葉になってしまう。
「もちろんです。今の私の望みは久遠様のお役に立つことですから。ただ、今まではアイドル専門だったので、子役や女優にどこまで通用するかは……久遠様はアイドルは目指さないのですよね?」
「アイドルに興味はないわね」
「ですよねぇ。久遠様なら一瞬でトップを取れると思うのですが……」
「そんな分かりやすいトップはいらないわ。私は誰も見たことのない遥か高み、頂天を目指すのよ!」
「……さすがでございます久遠様、私も久遠様に置いて行かれぬよう、精一杯精進致します」
私が適当に大げさなことを言うと、斎藤は手を合わせて拝み始める。
斎藤はたまにこうして私に対して拝んでくる。よく分からないが彼は相当なブッディストであるようだ。
「さて、仕事の話を始めますか。確か今日はオモチャのCMよね?」
「はい、最新のブロックタイプのおもちゃです。なんでも知育方面にかなり力を入れたとか」
「へーブロック。〇ゴみたいなものかしら」
「ええ、ぶっちゃけ大きい〇ゴです」
まあこのジャンル、〇ゴ一強だからね。
どんなに工夫を凝らしても、世間一般の認識では全部〇ゴだ。
「今日は他にも2人の子役がいるので、カメラの前でその子達と仲良くブロックで遊んでいただければOKです」
遊ぶだけでOKか、もちろんちゃんと幼児らしい姿を見せる必要があるだろう。
前回は子役を使う意味を理解しておらず、演技力をアピールしすぎて失敗してしまった。
だが今回は違う。
私は二度も同じ間違いはしないのである。
今こそリベンジの時!
「りょーかい」
そしてカメラや自分の立ち位置などを確認していると、他の子役、男の子2人が現れる。
しかし……
「びえぇぇーーー!!」
「やだやだー帰るーー!!」
2人ともギャン泣きしていた。
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