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18、霊能修行

「まずは一番大事なこと、神霊が勝手に入ってこないよう防御することからね」


「はい」


あの後ゆっくり休んで、翌日からさっそく修行が始まる。


ちなみに次期当主に決まったことを母に話すと


「あらーおめでとう、くーちゃんなら世界最高の当主になれるわ」


と言われた、軽い。


でもあの母が言うならそうなるのだろう。よし、力を付けて世界最高、いや、いっそ宇宙開発までして宇宙最高の当主になって母の予想を超えてやろう。

と決意を決めたのが昨夜の話。


今は月詠家の離れにある道場で祖母と向き合って座っている。

格好は陰陽師が着るようなあれである。


「霊から身を守るには霊気を体に纏う必要がある。腹の底に感じる何だか温かい力、霊気をうすーく伸ばして体全体を包み込むように広げるんだ。コツは、ググっとやってハーーっと気合を入れることだよ」


ばぁば説明ヘタ!!!!


腹の中の力はラノベでよく見る丹田とかいうやつだろう。

それを意識して目を閉じると、暗闇に光が見えた。


光に意識を繋げると自由に動かせることに気付く。

纏うということだから、体を守るようにググっと薄く広げて、

ハァーーっと気合を入れる。


「お?できた?」


「おお久遠!このばぁばの説明で一発で成功するとは!さすがあたしの孫!」


説明下手な自覚あったのか……


全身に薄い膜のようなものが張っている、これが霊気か。

特に行動に違和感は感じないけど、これ常に張っておかないといけないの?


「初めは違和感があるかも知れないが、そのうち慣れて、むしろ張っておかないと落ち着かないと思う様になるさ、それまで常に張るように意識してな。特にあんたは憑依されたら大変だからね」


ふーん。

そういえばよく見ると祖母の体にも膜が張ってある。

本当に微かで、意識しないと気付かない。


「この技は便利でね、霊だけじゃなく、ある程度の衝撃も緩和してくれるよ。大人の拳程度じゃ全然効かないね、さすがに車に轢かれたら痛いけど」


マジかよ、一気にジャンルが変わったな。

とは言え普通にしてたらそうそう効果を実感できないだろう。

精々私に嫉妬した誰かが、私を刺した時助かるくらいか。



「また霊気を足に重点的に纏ったりすると脚力が強化されるし、腕に纏えば腕力が強くなったりするよ、人間の男程度じゃ戦ってもまず負けないね」


バトル漫画かよ!

憑依ならまああり得るかもって思うけど、そこまでいくともうファンタジーでしょ!


「ちょっとすごすぎない?」


「まあ普段使うことは滅多にない。でも質の悪い悪霊と戦う時は必須だ、昔は山のようにデカい悪霊相手に槍を持って戦ったもんだ」


やっぱりあるんだバトル展開⁉


「はははそう微妙そうな顔をするな。あんたが戦わなくても、月詠家の親戚や使用人たちが戦ってくれるよ。ここはそういう家だからね、世に害をなす悪霊たちと人知れず戦ってるんだ」


「親戚は分かるけど、使用人も?」


「ああ、霊能力が強いものは月詠家が引き取って育ててるんだよ」


へー、じゃあ楓さんもそうなのかな。


「警察と手を組んでオカルトの調査したりね。まあそれ専門の分家もあるから、当主は全体を把握して、命令を下すだけでいいさ」


「う、うん、分かった」


タケルの記憶含め、今までの世界観と違いすぎてツッコミが追いつかない。

どうか今後の人生で、バトル編とかに突入しませんように。


「よし、次は攻撃だ、やり方はさっきの応用。武器を持って、霊気を武器の先端まで纏わせる。素手ではダメだ。霊には極力触れない方がいいからね。さ、やってみて」


木刀を持って霊気をうにょ~んと刀身に纏わせる。

うん、出来た。


「簡単だろう?あとはこの木刀で殴れば弱霊なんて一発さ。このように霊能力=霊気の扱いだ。霊気があればなんでも出来るよ」


「へ~」


「あんたは以前憑依された時、浄化の力を無意識で使ってる。かなり強い力を持ってるから、それを上手くコントロールしないと、普通の憑依も使えないよ」


たしかにタケルは即成仏した。

でもそれだけでも記憶は残ってるからいいのでは?


「善意で知識を与えるために残ってる霊もいるからね、それに神を降ろすと神まで消しそうじゃないか」


神降ろしかぁ。

私はさらに遠い目をした。

世界観が崩壊する音がする。


「神様って、降ろしたら何するの?」


「まあ占いだね、道を指し示してくれるのさ。国単位の大きな選択をする時に頼る。人間の霊は専門家に知識を貰ったり遺言を聞いたりする程度だけど、神の予知は強力だ、そのかわり負担も大きいから滅多なことでは降ろさない。あたしも若いころに二度降ろしただけさ」


「道を指し示すってママがやってるようなこと?」


「そう、だからここ何十年も神降ろしはしてないよ。伊波の力はほんとに神懸っていてすごいんだ。あれで憑依さえ使えれば……」


「ねえママってさ、もしかしてずっと神様に憑かれたままなんじゃない?」


「え?」


「え?」


「……確かに憑依の修行は弱い霊から始める。あの時はその弱い霊すら憑依出来なくて、それで伊波には能力が無いと思っていたんだけど……」


「ええ……?どう考えてもママの能力おかしくない?」


「ううーん、たまに勘のいい子は分家にも現れるからね。でもあそこまで強力なのは……」


「確かめてみたら?」


「そうだね、誰か伊波を呼んできておくれ」


パタパタと女中さんが動き、母がやってくる。


「なによお母さま」


おお、祖母相手にはいつもよりフワフワ度が低い。


「伊波、あんたには神がずっと憑依してるんじゃないかって久遠が言ってるんだが……」


「ええ?そんな訳ないって、だって私憑依能力ないもん」


「確かめる方法ないの?例えばこう、胸に手を当てて語りかけるとか」


「う、うーん、まあくーちゃんが言うなら……別になんとも……いつも通り霊気の光が2つ見えるけど……」


「ていうかそれじゃない?私一つしか見えないよ?そのもう一つに霊気伸ばして見たら?」


「え?くーちゃん一つなの?大丈夫?」


「いやあたしも一つしかないが……っていうか普通一つだ」


「ほんとに?……あっなんか反応した!え?ウソぉ⁉え、ええはい……え?出ていってくれたりは……ええはいはい、えーそうですか……あーはいわかりました……はい……」


なんか会話しとる。


「くーちゃん、お母さま……」


呆然とした母が応える。


「私憑依能力あったみたいです……」


「おお!おお!まことか……!やはりお前は失敗作などではなかったのだ!おお良かった良かった……!」


「お母さま……うん…うん…心配かけてごめんねぇ」


「伊波、例え憑依が使えなくてもあたしも伊万里も気にしてはいなかったというのに、この家のせいで苦労をかけたね……」


祖母が母を抱きしめる。

失敗作か……掟に厳しい家だし、分家の誰かに言われたりしてたんだろうな。

母も長女なのに能力が無いと思い込んで、長い間苦しんだのだろう。

解決して良かった。


「じゃあ次期当主はママだね」


「それがねーこの神様出ていこうとしないのよー。産まれた時からいるから、今更出ていかれてもママ困るからいいんだけど」


「えーでもその神様がいれば十分じゃん」


「いや、当主はそれだけじゃいかん。経営の様々な知識を霊から仕入れ、一族を正しく運営してこそ当主なのだ。その点で言えば久遠ほど相応しい当主はいない」


「でもせっかく……」


「いいのよくーちゃん、昔は当主になれないのを悩んだりしたけど、今はもう全然平気だし、くーちゃんがなってくれた方が嬉しいわ。っていうか当主なんて忙しそうだから絶対なりたくないし」


「伊波……」


絶対後半が本音でしょ!ばぁばも複雑な顔しちゃってるよ。


「はぁ、わかったよ、そのかわりママにも手伝ってもらうからね」


「もちろんよ」


何だかよく分からないが、月詠家の問題を孫パワーで一つ解決したようである。

本当に何だかよく分からない。

なんなのこのファンタジーな家は。


私はイマイチのり切れないまま、修行を続けるのだった。


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