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14、エタプロオーディション2

「6番!内山きゅ、きよみでしゅ!4歳でしゅ!です!」


「きよみちゃんねー緊張しなくていいからねー」


「はい!」


面接が始まってこれで6人目。

子供が相手ということもあり雰囲気は優しく、全員女性面接官。

というか母とメイドの楓さんと私だ。

流石に今日はメイドの姿をしていない、一応TPOはわきまえているらしい。


オーディション以前に事務所のスタッフ大丈夫なんかと思うが、

当面はツクヨミプロから人を派遣してもらうらしい。


色々とルールなどを整備してから正社員を募集するとのこと。


今日も受け付けとか列整理の人はツクヨミプロの人たちだ。


「きよみちゃんはなにが得意なのかなー?」


母が子供に優しく色々質問をする。


子役になって何がしたいのか、何が出来るのか、好きな芸能人は、将来の夢は、等々。


「お母さんにお聞きします。まず……」


親もまた審査の対象だ。


子供の性格、どう育てたいか、どんな道へ進ませたいか、サポートは出来るのか、

またなぜこの事務所を選んだのか、お仕事は、等々。

ガチっぽくてタケルのトラウマが疼く。


ちなみに私は隅っこでニコニコしてるだけだ。

一応「当事務所の子役です、後学のために同席させています」

と説明されている。


確かにすごく勉強になる。


能力でゴリ押しの私と違って、純粋に頑張ってる子供たちを見るのはほっこりすると同時に胸が痛い。


テンパってる子供を見ると頑張ってと思うし、落ち着いてる子供を見るとすごいなーと感心する。

下手に大人の記憶があるだけに完全に親目線になってしまうのだが、多分これではいけないのだろう。

プロを目指す子供をしっかり観察し、自分のものにする。

そして才能のありそうな子は仲間に入れる。

これだ、これこそが今日の私の役目。


ちなみに母と楓さんは、私に対して敵意を向けた子供に対しては容赦なく×を打ち、笑いかけてきた子供には加点をしている。

まさか試金石にするために私を置いてるわけじゃないよね?


「はいありがとうございます、お疲れ様でした。結果は郵送しますので、今日はお帰り頂き結構です」


「「ありがとうございました」」


ボーっとしてたら6人目が終わった。

一人大体約5分。残り94人。休みなく続けてあと8時間……。

これ、本当に終わるんかいな。


「んぁ~疲れたぁ~」


20人目が終わって10分間の休憩。

廊下に出て伸びをする。

3歳の出す声ではない。


しかしどの子も初々しいねぇ。

私にそんな時あったっけ?


ジュースを飲んで廊下の長椅子でたそがれてると。

「あ~コネの子だぁ~」と指を刺される。


顔を向けると6歳くらいの子供が立っていた、面接で見た顔だ。


「こら、やめなさい」


母親がやんわり止めようとするが、あまり本気ではないから、内心納得いってないのだろうなぁ。


「なんで~?コネって悪いことなんでしょ?悪い事しちゃいけないんだよ?」


「う、うーんそうなんだけど……」


おーい、そうなんだけどじゃないよ、ていうか止めないとヤバい。

こんな場面を母や楓さんが見たら、この子の芸能人としての未来が完全に絶たれてしまう。


「コネって、どうしてそう思ったの?」


しかたない、穏便にお帰りいただこう。


「だってあなた、オーディション受けてないんでしょう?みんな頑張ってるのにずるいって、みんな言ってるよ?」


「みんなねぇ……」


多分面接が終わって、一部の人が噂を流したんだろうなぁ。流石に皆ではないだろう。


コネ、ねぇ。まあ私がここにいるのもほぼ100%親の力だし間違ってはいないな。

でもそれは愛であって悪意ではない。

あの優しい両親の愛を、何も知らない他人にとやかく言われたくはない。


「うんまあコネだね。だからなに?」


「え?なにって、だってコネは悪いことだって……」


「別に悪くないよ?だって私社長の娘だもん。この事務所も私のために建てたんだから、私のオーディションするのっておかしいでしょう?」


そこまで言うと母親が顔を真っ青にする。


「そ、そんなのずるい!」

「ちょ、ちょっとあーちゃん!」


「全然ずるくないけど。それより大丈夫?あなたは事務所のオーディションに来て、その事務所の社長の娘を糾弾している。心象は最悪で、あなたのせいでオーディションは絶望的、お母さんに申し訳ないと思わないの?」


「え?きゅうだんって?お母さんわたし何かしちゃったの?」

「ああごめんなさい!ごめんなさい!申し訳ありません!悪気はなかったんです!」


「はぁ……もういいから行って。あと噂を流してる人も教えて、一緒に落としてあげるから」


「ご、五番の方の親が噂を流していました!まだあまり信じてる人はいません!」


「ん、ありがとう。じゃあ早くここから離れて。母には内緒にしておくから」


「ありがとうございます!ほら!行くわよ!」


「う……グス……ご、ごめんなさい…うぅ…」


あー泣いてしまった……やり過ぎたか?

でも別に我慢する必要ないと思うんだ。

子供同士がケンカするなんて普通のことだし、こちらが大人になって言われたまま我慢するなんておかしいでしょう?

それに本当に危ないこと言っていたから早く黙らせたかったし。


と色々言い訳をしているが実際はただムカついただけだ。

3歳の煽り耐性は0なのだ。


しかしちょっと可哀そうか。

私はふっと笑って。


「少し言い過ぎたね。でもね、私は確かにオーディション無しで事務所に入れたけど、これからは全部実力だから。あなたが納得するくらい私頑張るから、あなたも頑張ってね」


「う……グス……うん……」


バイバイと手を振って別れる。

なんとかフォロー出来ただろうか。


それにしても……

あぁ〜ムカムカする。

とりあえず5番さんにもしっかり忠告しておこう。


後ろから忍び寄って、

私、社長の娘なんですけど、って。



ーーーーーーーーーーーーーーーーー

青ざめた顔でビルを後にする5番親子。

その姿を影から見つめる謎の2人。


「流石久遠お嬢様、鮮やかなお手並みです」


「くーちゃん、飴と鞭をすでに使いこなして……!

まあくーちゃんに免じてあの親子は落とすだけに留めておきましょう」


「そうですね。さて会場に戻りますか」


「……明日にしない?」


「だめです、今日中に終わらせます」


「絶対終わらないって~~」


ズルズルと引きずられていく社長らしき人だった。


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