表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天才子役!天原久遠のオーバーワーク  作者: あすもちゃん
進撃の小学生編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

131/131

131、久遠の初陣(ガチのやつ)

兵舎生活1週間目。

私は実力を認められ小隊を預かることになった。

兵士20人からなる隊の隊長である。


馬鹿か?


なんでフラッと現れた日本人の幼女を小隊長にしようと思ったの?

たしかに最近隊内では敵なしだし、銃は百発百中で実力はあると思うけどさぁ、おかしいだろ。


ちなみにメンバーにはキャシーやジョン、ギークボーイもいる、しかし斎藤はいない。

奴はそのマネジメント能力を買われ作戦司令部に回されている。

斎藤は頭脳担当のエリート部隊、方や私は脳筋の突撃部隊。


解せぬ……。


そんな私の小隊、久遠訓練小隊だが士気は異様に高い。


『小隊長!隊員20名全員揃いました!』


『ごくろう。これより野外演習を始める!行進始め!』


『サーイエッサー!』


物々しい装備に身を包んだ大人たちを率いる幼女の私。

場所は近くの森。

今日はここでサバゲーとキャンプ、もとい野外演習をするのだ。


『ヒット!』


『ファッ〇!』


『おい!いま当たっただろキ〇ガイ野郎!』


『シット!また残像だ!』


昼はサバゲーで遊んで。


『隊長めっちゃ野営手慣れてるな』


『えっ、今日はカレー食ってもいいのか⁉』


『ああ、好きなだけ食え』


『日本のカレーうめぇ!』


『おかわりもいいぞ』


夜は皆でキャンプ。

隊員たちとワイワイ焚き火を囲む。


『いやーまさかあのニンジャリトルガールの部下になれるなんて、夢のようです』


『SNSには上げるなよギークボーイ』


『モチロンであります!』


『ていうかクオン、妙に隊長慣れしてねぇ?』


『キャシー、まあ幼稚園で似たようなことしてたし』


『どんな幼稚園⁉』


『ニンジャの里の幼稚園に決まってるだろう。クソッ、俺も日本に産まれてそこに通いたかった!』


『普通の幼稚園だよジョン』


何だかんだで楽しんでいる私だった。


そんなある日。

食堂でランチを食べていたら施設内に警報が鳴り響く。


『なにこれ?』


『緊急招集だ!クオン、集会場に急げ!』


キャシーと一緒に急いでご飯を掻き込み、教官の元へ向かう。


『集まったか。喜べ貴様ら、初陣だ』


初陣?

教官の言葉にざわめきと緊張が走る。


『つい先ほど通報があった、近くのモールで武装テロ組織の立てこもりだ。民間人の人質もある、現場から一番近いのは我々しかいない。諸君らはまだ訓練生だが、本隊が来るまでの牽制と足止め、可能ならば制圧が任務だ』


『ガッデム……』


『マジかよ……』


ここにいるのは兵士と言っても実力も覚悟もまだまだな訓練生たち。

いきなり実戦と言われて浮き足立っているようだ。


『心配するな。相手は敵兵ではなくテロ組織。人質もあって通すべき主張があるなら戦闘になる確率は低いだろう、貴様たちは被害が広がらないように包囲し、敵をなだめすかしてやるだけでいい』


『それなら……』


『まあ……』


どうやら銃撃戦にはならないようで安心する。


よかった……じゃない!


これもしかして私も出撃しなきゃなんないの⁉


『久遠小隊は先行して対処にあたれ』


やっぱり!

しかも先行。

私のような幼女に先陣を任せるとかどんな判断だよ、と教官の後ろにいる斎藤に目を向けると奴は笑顔でグッと親指を立ててきた。

お前の仕業かよ。

何だその「お仕事取ってきました」と言わんばかりの顔。

後で覚えてろよ。


とは言え人質にされた人も放ってはおけない。

それに私の能力なら案外いける気がする、斎藤もそう思ったのだろう。

まあ、哀れなテロリストどもで訓練の成果を試すのも悪くない。


『了解しました』


そう無理矢理納得した私はビシッと敬礼し、軍用車両に乗り込んだ。




『まさかもう実戦とはねぇ、わからんもんだぜ』


銃を担ぎ、ガタゴトと揺れる車内で正面に座るキャシーが呟く。


『俺は嬉しいがね、丁度訓練にも飽き飽きしていたところだ』


ジョンが血気盛んなことを言うが顔は笑っていない。


『僕ら今日で死んじゃうのかな……』


悲観するギークボーイ。


『心配すんなって、怪我をしても私が治してやるからさ』


『隊長……僕、隊長の隊に入れて幸せでした』


どうやら冗談と思われたらしい。

うーむこの空気、どうしたものか。

私は正直ギャグのような流れでこの場にいるので、イマイチ当事者感が薄い。

怪我も治せるし、なんとかなると思っているのだけど……。


『ウチの訓練所はさ、アタシみたいなろくでなしばかりで毎日喧嘩ばかりしててよ』


『ああ、行き場を無くし戦場で散ることしか出来ないやつらのたまり場だった』


『でもさクオン、あんたの隊にいた時は本当に楽しくてよ、これからもずっとこれが続けばいいのにって思っちまったんだ。ってガラにもないこと言っちまってんなアタシ』


『分かるぜ、強さを求めてばかりだった俺も、最近では守りたいって思えてきてよ……いや、忘れてくれ』


『これも隊長のおかげです!』


『お前たち……』


なんなのこの会話。

お前ら私と1週間ちょっとしか付き合いないじゃん。

私一人お気楽な気持ちでいるのがなんか申し訳ないわ。

とりあえず私がいれば死ぬことはないんだから、そのラスボス戦前みたいな会話は止めてほしい。


そうこうしているうちに車は現場にたどり着いた。


テロリストに占拠されたショッピングモールは既に殆どの人が逃げ出し、閑散としている。

ただし敵が立てこもったひと区画だけは、銃声と悲鳴が響く地獄だった。


『ご苦労様です、状況は?』


現場で指揮を執っていた警官を見つけ話を聴く。

ちなみにフォーマルな場では絶対に日本人向け英語で話せと教官に厳命されている。

英語初心者と思われないか不安だ。


『え?幼女?』


言葉以前の問題だった。


『気にしないでください。我々は久遠訓練小隊です、近くの基地から派遣されてきました』


『え、でも……え?君が隊長?』


ええいもうじれったい。


『私は忍者です』


『ニンジャ⁉……なるほど、犯人は10人、人質20名を取り立てこもり中です。散発的に発砲してますが威嚇どまりで死傷者はいません』


困った時はアイアムニンジャ。

それで大体のアメリカ人は納得してくれる。

ほんとどうなっているんだこの国は……。


しかし死傷者0か、どうやら 間に合ったようだ。


『ありがとうございます、ここからは我々が引継ぎますので、あなた方は民間人の対処を』


『了解であります!』


そういって集まりつつある野次馬や報道関係者たちの方へ走る警官。

私は隊の皆に向き合う。


『聴いたか!まずは盾を持って現場を包囲する!早まって攻撃などはしないように!』


『了解!』


『行動開始!』


テロリスト達が立てこもった場所は様々な遊具や施設が並ぶキッズランドだった。

確かに広く、遮蔽物も多い。

そして何より、人質にできる子供達が沢山いた。

親たちは子供が暴れないよう必死に抑えていて痛ましい。


『チッ、軍が現れやがったか。来るなら来てみろ!人質は皆殺しだ!』


テロリストがめちゃくちゃなことを大声で叫ぶ。

目がイッちゃってるな、いつ気が変わって人質に手を出すかわからない。


『さっさと大統領を呼んでこい!2時間以内に来なければこいつらを一時間に一人づつ殺す!』


大統領も大変だなぁ、ほんとにくるのかな?

あ、でも炎上を恐れて来そうだなあの人。


『ただのテロリストにしては装備や陣形が本格的だな……』


『もしかして元軍人か、他国の工作員かもしれねぇ』


たしかに興奮状態にはあるがそれなりに組織だった動きだ。

これは舐めてかかると危険な相手かもしれない。


それにしても……


『ふむ、キッズランドか……』


正直都合がいい。

ここなら私の武器を最大限に活かせる。


『どうする隊長?』


隣りで大盾を構え、私を守るジョンが問いかける。


『私が人質役として潜入する』


『危険だ!』


『心配するな豚野郎、こういう潜入は初めてではない。いっちょ派手に暴れて、ハラワタをぶち破って出てきてやるさ』


『ヒュウ、流石隊長だぜ』


まあ、ドラマの中の話だけどね。


しかしそうか、図らずもリトルブレイバーと似たような展開になってきたな。

まさかリアルでスパイの真似事をすることになるとは思わなかったけど、何事も経験しておくものだ。


『では行ってくる、合図があったら突入を』


『了解、神のご加護を』


私は少し隊を離れ、ブティックで子供服を拝借し着替えると、気配を消し、テロリストの隙をつき部屋の中に入り適当な遊具の中に隠れた。

そして思いっきり泣いた。


「ふえぇぇぇーーん!」


『なんだ⁉』


『あっ、こいつこんなところに隠れてやがった!オラこっちこい!』


「びえぇぇーーーん!」


『チッ、黙らせろ!』


『ほらおじさんたち怖くないよー、いいこでちゅねー』


恐ろしい武装をしたおっさんたちがお道化て必死に私をなだめすかす。

子供を人質にとるのも考え物だなぁ。


『日系の子供かなぁ?言葉は分かる?おじさんたちの用事が終わるまで、ちょっと向こうで大人しくしててねー?』


『……うん』


よし、なんとか無事に人質たちのいる場所までたどり着いたぞ。


そこには絶望した顔をした人質たちがいた。

大人が6人、子供が14人。

大人は女性ばかりで、男性はいない。


『ああ神よ……!』


子供を2人抱えるママさんが、私を抱きしめてくる。

この状況でも見知らぬ子供を気遣える優しい人だ。

私は抱きしめ返し、しっかりした声で応える。


『心配すんな、すぐに助けるからよ』


『え?』


『これから私がファッ○ンテロリストどもを一人づつぶっ潰していくから、あんたは人質の避難に協力してくれよ』


私一人だと何かと大変だ。

この人も協力者になってもらおう、もちろん安全には配慮して。


私が作戦を話すと女性はとても信じられずに、混乱しているようだった。


『な、何を……あなたは一体……』


「……ふっ」


やれやれ。

私は笑って背を向け、親指で自分を指す。


「アイアムニンジャ」


『オー、マイガー……』


ママの目の色が変わり、コクリと頷く。


『お願いニンジャガール、私たちを助けて』


ほんとこの国の忍者信仰はどうかしてるわ。

でもそれなら私がその期待に応えてやろうじゃないの。

私は犯人のもとへ歩き出す。


さて、状況開始だ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ