表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天才子役!天原久遠のオーバーワーク  作者: あすもちゃん
進撃の小学生編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

130/131

130、久遠の兵舎生活

陸軍訓練施設に放り込まれて早3日。

なんだかんだで私は馴染んでいた。


『ヘイクオン!こっちで一緒に食べようぜ』


『キャシー』


食堂でお盆をもってうろついているとチームメイトのキャシーに声をかけられる。


『ったくあのファッ〇ン教官め、走り込み一周遅れるごとに腹筋100回とかイカレてやがるぜ、ファッ〇!』


ボサボサでパンクな見た目の女性兵士キャシーが、カラフルなランチを食べながら愚痴る。

相変らずネイティブな英語は聞き取り辛く、ところどころ知らない単語が混じるがだいたいのニュアンスは伝わる。


『大変だったね』


『あんたはいいよねちゃんとノルマこなせてよ、それも平然な顔して。どうなってんの?ニンジャってみんなそうなの?』


『忍者じゃなくて子役だけどね』


相当な厳しさの訓練だが、私は意外とついていけている。

もちろん普通は絶対無理だが、霊力を駆使すればなんとかなった。

忍者の修行とはまた違ったやり方で、これはこれで良い経験になるかもと今では前向きな気持ちですらある。


おかしいのは斎藤だ。


私と違い霊力もないのに、なんで一般人でおっさんの斎藤が普通にこなしてるのかが分からない。


確かに奴は私に付き合って道場に通ってるし、それなりに技も使える。

でもその体力はおかしいだろう。


ゼーハー言ってツラそうだが、ちゃっかり完走しているのである。


これが日本の企業戦士というやつか。

前の職場はブラックだったし、今の仕事も結構激務。

苛酷な生活に、知らず知らずの内に体力がついていたのかもしれない。


私はもう少し斎藤の仕事を減らしてあげようとちょっとだけ思った。


そんな斎藤は必殺の名刺配りやジャパニーズお辞儀を駆使してあっという間に馴染んでいた。


『サイトー今度相談にのってくれよ』


『構いませんよ、その代わりに教えて欲しいのですが――』


恐るべしマネージャーの技よ。


『ニンジャリトルガール!このメットにサイン書いてくれよ!』


『おーけいおーけい』


ネットに詳しい兵士は、私が海外のSNSで有名な「ニンジャリトルガール」だと気付く人もいてこうしてサインをねだってくる人もいる。


殆どがギークと呼ばれる海外のオタクたちだが、日本のアニメやゲームにも詳しくて話しやすい。


『あんたってほんとに有名人なんだな』


『まあね、キャシーもサインいる?』


『いらねぇよ。そうだ、日本人ならショウイチローのサインボール貰ってきてくれよ』


『うーんすぐには無理かなぁ』


『え?時間かければいけるの?マジで?』


私は適当に返事をしながらカラフルなランチを食べた。

味は……うん、ノーコメントで。



昼食を終え、再びグラウンドに出ると今度は体術訓練だ。

教官からペアを組むよう言われる。

私はキャシーとでも組もうかと彼女の元へ向かう。

しかし巨体が私の前に立ちふさがった。


『ヘイニンジャガール、今日こそお前をブチのめしてニッポンに送り返してやるぜ!』


『懲りないねファッ〇ンガイ』


訓練生の中で一番マッチョでガタイの良い男、ジョンが私の相手に名乗り出る。

コイツは体術に相当な自信を持っていたのだが初日に私にボコられ、それ以来しつこく付きまとってくるのだ。


『うおぉぉぉ!』


『残像だ』


高速で背後を取り、足をかけ転ばせる。


『シット!』


『雑魚が、この程度でイキがってんじゃねえぞクソ野郎、ママの××から××してきな』


まだまだだね、これに懲りずにまた挑戦してきてよ、というニュアンスの言葉をここで学んだ英語で話す。

細かい意味は分からないが、概ねこんな感じだろう。

しかしたった3日でここまで喋れるようになるなんて、やっぱり英会話は現地で学ぶに限るなぁ。


『ファッ〇!汚いニンジャ野郎め!次こそぜってぇぶっ飛ばしてやる!』


『クソして寝てろ』


なんか妙に怒ってるけど、やっぱり幼女に負けるのは悔しかったのかな?

流石陸軍兵士、向上心あるなぁ。


『クオン訓練生』


『あ、ファッ〇ン教官』


一通り組み手を終わらせると、教官が話しかけてきた。


『……なんだそのファッ〇ン教官とは』


『え?みんなそう呼んでるので、それが教官の正式な呼び方かと』


私の記憶でもファッ〇はよくない言葉だが、あまりにも皆がファッ〇ンファッ〇ン言うのでもしやネイティブ流のミスターとか〇〇氏とかそういう意味だと思ってたのだけど、違うのだろうか。


『とりあえずそれはやめろ、教官でいい、あとここのやつらの言葉はあまり参考にするな』


『はぁ』


そう言われてももうだいぶ覚えちゃったけど。


『それより体力体術は問題ないようだな、流石ニンジャだ』


『子役ですよ』


この教官初め、アメリカ人の忍者信仰は異常だ。

ここの人たちは忍者をアメコミのヒーローと同じ超人だとでも思っているらしく、私の身体能力に何の疑問も持たない。

こんないたいけな幼女が何故か軍事訓練に参加しているというのに「忍者」というだけで皆納得する。


いやおかしいだろ。


一人くらいこの状況にツッコんでもよさそうなのにだれもツッコまない。

私子役でただの幼女なんですけど?

「幼女が兵士と一緒に訓練するのはおかしいと思います」ってだれか言えよ。

まあ何だかんだで勉強になるし、この状況が楽しくなってきているのだけれど。


教官が話を続ける。


『貴様は銃を使えるか?』


お?


『いえ、使えません』


『そうか、では次は銃を教えてやる』


やった!

そういえば元々はここに銃を習いに来たんだった。

危うく目的を忘れ、一流の兵士になるところだった。


『なんだ銃に興味があるのか、ニンジャのくせに』


『子役ですけど、銃には興味があります。さっさと教えやがれファッ〇ン教官』


『その前に言葉遣いを直した方がいいか?』


『何かヘンでしたか?』


『……では銃の分解を教えます、いいですか?これからは私の英語をマネるように』


なんと教官が急に分かりやすい英語で話し始めた。

どうやら私の英語レッスンにも付き合ってくれるらしい。

顔は怖いけどなんていい人なんだろう。


『了解しました!』


でも日本人の私に対してこんな話し方するってことは、やっぱり日本で教えてる英語は、英語がダメな日本人用に特別簡単にしているのだろう。


しかし本格志向な私は是非現地で使うネイティブな英語をマスターしたい。

このまま継続してチームメイトたちからも英語をラーニングしようと思う。


そう決意を固めながら教官から銃の扱いを教わる。


カチャカチャ。


『一回で分解を覚えましたね、優秀です。次はもっとスピードをあげるように』


『はい』


『撃つ時は必ず残弾を数えながら、装填時はターゲットから目をそらさないように』


『なるほど……』


教官が分かりやすい言葉で色々と教えてくれる。

流石に危険物を扱うだけあって、座学も長い。

中には漫画で見たようなことも教わり、テンションがあがる。


『では実際に撃ってみましょう』


いよいよこの時が来た。

座学の教室から射撃場に移り、拳銃を渡される。

おおーこれが本物。

やはりモデルガンとは違うね。


『狙いは頭か心臓。外したら適宜修正して近づけるので、まずは自由に撃ってみなさい』


そう言われても初めから中心に当てたいのが子供心というもの。

私は真剣に銃を構え、人型の的に狙いを定めた。


ズシリと重いので霊力で筋力を補強。

普通にやると肩が外れるかもしれないから更に補強。

あとは目標をセンターに入れて……引き金を引く。


バキャン!


木製の的が粉々になった。


『ワッツ⁉何が起こった⁉』


私から拳銃を取り上げ分解し始める教官。


恐らく集中するあまり銃に霊力を込めすぎてしまったのだろう。

だって重かったし。


しかし弾に霊力込めるとああなるんだなぁ……。

もし人に向けて撃つことがあっても、絶対に霊力は込めないようにしよう。


『銃に異常はない、あの一発だけか?いたずら?まさかテロか?』


『あのー教官』


『なんだ?』


『今のは忍術です』


『忍術⁉あれが⁉』


『はい、ついやってしまいました』


『ジーザス……流石ニンジャだ。他には?他に何ができる?現代の忍者は手裏剣も爆発するのか?』


『……』


あっさり信じる教官。

やっぱりアメリカ人の忍者信仰は異常だと思う。


私はテンションの高い教官の質問に適当に答えつつ、銃の使い方を覚えるのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ