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天才子役!天原久遠のオーバーワーク  作者: あすもちゃん
進撃の小学生編

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129/131

129、劇場版リトルブレイバー試写会

「それではさっそく登場頂きましょう、監督の盛岡監督、そしてミオ役の天原久遠ちゃんでーす!」


「どうもー」


大きな拍手に迎えられ、私は煌びやかな劇場の舞台にあがった。

パシャパシャと鳴るシャッター音に笑顔で応える。

今日はこの夏公開を控えた「劇場版リトルブレイバーⅢ-セブンスヘブン潜入作戦-」のプレミアム試写会の日である。


関係者やVIP、報道関係者や幸運なファンのみ来場を許されるこの試写会。

客席に並ぶそうそうたる顔ぶれに、この映画がいかに話題か分かるものだ。


というか招待したソロリティメンバー(せっちゃん含む)はいいとして、大企業の社長や政府関係者、加えて総理や某国大統領までいる。

ここは国際会議の場か何かか?

あまりの顔ぶれに監督や司会の人は若干引いている。


「えーでは監督に聞いてみましょう、ズバリ見どころはどこでしょう」


「そ、そうですね、やはり主役であるミオの大立ち回りでしょうか?」


「リトルブレイバーシリーズと言えば久遠ちゃんのド派手なアクションシーンが話題ですね」


リトルブレイバーはドラマ版のドロドロ路線から舵を切り、映画版からはミオのスパイアクションが前面に出されている。


小学生スパイのミオが学校行事や家族旅行で行く先々で事件が起こり、その頭脳とスパイの技で解決していく話だ。


スパイなのに最終的には姿を現してボスと戦ったり、大爆発を引き起こしたり、カーチェイスをしたり、幼女の見た目にそぐわない派手なアクションが話題を呼んでいる。


「予告のアクションシーンはかなり凄かったですね」


「ええもう、久遠ちゃんの演技がもうすさまじくて。本物といいますか、まるで歴戦の兵士のような動きと迫力で。そんな我々製作班の想像を完全に超える演技を見せられてこれに応えねば男がすたると皆必死でしたね」


「いえいえ、監督初めスタッフの演出のおかげですよ」


「こんなこと言ってますが、いつも通りスタント無しの一発撮りです」


わはは、と客席から笑いが起こる。


「今回舞台はアメリカのラスベガスということですが」


「ええ、実際にラスベガスに行きロケをしました」


「ははぁ、ではやっぱり監督もカジノで遊んだり?」


「ははは、まあちょっとだけ。ぼろ負けですぐ撤退しましたが。その点久遠ちゃんは……」


「もう止めてくださいよーその話はー」


「いやいや何度もさせてよ、久遠ちゃんったらカジノで大勝ちしてさ、そしたら奥から怖い人たちが出てきて……」


私がベガスで勝ちまくっていたら難癖付けられて大変なことになった話を監督がする。

なんか色々あって最終的に店が一つ潰れたこの話を、実際に見ていた監督は武勇伝を語る様にあちこちで喧伝し、私は恥ずかしいやら呆れるやらだ。


「ははは、映画みたいな展開ですね、え?流石に冗談ですよね?」


「いやほんとの話です、だれも信じてくれないですが」


とは言え信じる人はあんまりいない。

流石に店を一つ潰すのはあり得ないよね。

でもあの店悪い店だったからなぁ……。


私がぼんやり思い出していると司会の人が話を振ってくる。


「久遠ちゃんに聞きます。今回特に注目して欲しいシーンはどこですか?」


「そうですねー、やっぱりガンアクションですかね」


「ガンアクション?銃撃戦があるということですか?」


「ええ、沢山練習しましたから」


リトルブレイバーは舞台が日本でありながら銃を使うシーンがチラホラある。

しかも今回はせっかくのアメリカ舞台。

いつも以上に銃を活用しようという話になったのだ。


「へえ、それは注目ですね」


「ええ……」


私はそう答えながら、撮影前のことを思い出す。


(本当に大変だった……)


あれはそう、学園に通う前、幼稚園三年目の秋の事。


―――――――――――


「久遠様、こちら今度の映画の概要です」


「へぇ、来年の舞台はアメリカで、銃撃戦もあるんだ」


今年は日本に攻めてきた海外の工作員が相手だったし、どんどん世界が広がっていくなリトルブレイバー。


「しかし銃か……」


多趣味なタケルのおかげで私は一応銃が使える。

しかし所詮はモデルガンでの知識だ。

本物とはやはり違うのだろう。


「ここらで銃の使い方も覚えてみようかな」


やはり役者をやる上で本物を知るのも重要だろう。

幸いロケ地は銃の本場アメリカ。

少し前乗りして射撃場にでも行って練習しようかな。


「流石に久遠様のお歳では無理かと思いますが……」


「だよねぇ……あ、そうだ、大統領に相談してみよう」


そういえばあっちの国に知り合いいたわ。

丁度都合よく権力も持ってるし、プライベートで射撃場もってる人とかを紹介してもらって、銃を教えてもらおう。


「だ、大統領ですか」


「よし、そうと決まれば早速メールしようっと。国にお邪魔する挨拶も必要だしね」


というわけで私は大統領に「今度そっちの国にロケに行くから宜しくね、ついでに銃の訓練もしたいから教えてくれそうな場所を紹介してほしいな」みたいな内容を拙い英語で書いてメールした。


そして大統領から『オーケーオーケー歓迎するよ!』という返事と共に送られてきた紹介状の場所がここだ。


「……ねえ斎藤、ほんとにここであってる?」


「地図では間違いなくここですが……」


アメリカの荒野をレンタルジープで進むことしばし。

辿り着いたボロボロの歴史ありそうなその施設の名前は「アーミーソルジャートレーニングセンター」。


直訳すると「陸軍兵士訓練所」。


どう見てもガチの軍事施設だった。


「……まあ、確かに銃を教えてくれそうではあるし、大統領も話を通してあるでしょ」


実際に訓練に参加する訳ではなく、見学したりちょっと撃たせてくれる程度だろう。

確かに勉強にはなりそうだ、大統領も中々にくいことをする。

私はそう思い恐る恐る門をくぐった。


謎の発砲音と怒号が響く敷地内に入りキョロキョロしていると、コワモテの巨大な軍人がこちらに近づいてくる。


『なんだ貴様ら、ここは幼女立ち入り禁止だ』


当然のことながら英語で話しかけられる。

ドスが効いててめっちゃ怖い。


「え、えっと、しーいずじゃぱにーずちゃいるどあくたー……」


斎藤が拙い日本英語で対応する。

私も聞き取りはともかく話すのはまだ苦手だ。


『日本の子役?だからなんだ、とにかくここは子供のいていい場所ではない』


「これ!これ読んで!りーどこれ!」


むう、咄嗟に英語が出てこない。

私はなんとか身振り手振りで大統領からの紹介状を軍人に見せる。


『これは……大統領の⁉ふむ……』


よほど意外なことが書いてあるのか、3回もじっくり読み返す軍人。


『……分かった。大統領の命令なら仕方がない、こちらにこい』


「さんきゅー」


ホッ、なんとかなったか。

しかし通訳を連れてくるんだった。

私の能力なら問題ないと思っていたが、ネイティブは思ったよりも聞き取り辛いしこちらの意思も伝えづらい。


『お前はこっちだ』


「あ、はい」


軍人について建物の中に入りしばらくすると別の軍人が現れ斎藤を連れていく。

大丈夫だろうか。


『お嬢ちゃんはこっちだ』


「はい」


私の方も女性軍人に担当が代わり、奥へ誘導される。

女性と言っても気安さはなく、背の高い厳しそうな人だ。


更に歩くとベッドと机がある狭い部屋に通される。


「えーっと、ここは?」


『今日からここが貴様の部屋だ、これに着替えて運動場までくるように』


そう言われ着替えを渡される。


「はい?」


『返事はイエッサーだ!さっさと着替えろ!』


「い、イエッサー⁉」


なんか怒鳴られたので急いで着替えて教えられた運動場に向かう。

そこには大勢の兵士が整然と並び、先ほどの軍人――恐らく教官の言葉を待っていた。


斎藤もそこにおり、私と斎藤は訳も分からないまま教官の横に立たされる。

え、なにこれ?


『今日から貴様らに新しい仲間が加わる、ニッポンのニンジャ、クオンとサイトーだ!』


『ニンジャ?』『なんで幼女が?』『ニンジャリトルガール……?』とざわめく兵士たち。


『静まれぃ!ニンジャならば幼女と言えどその戦闘力は並の兵士以上!我らの訓練にも耐えることだろう。だから遠慮はいらん!存分に鍛えあげてやれ、これは大統領命令だ!』


『サーイエッサー!』


『まずは走り込み100週!走れウジ虫ども!』


『サーイエッサー!』


「く、久遠様、これはもしや……」


「ええ……」


隣りの斎藤が青ざめている。

私もなんとなく分かってきた。


『どうした!貴様らも行け!』


「……サーイエッサー」


『声が小さい!』


「サーイエッサー!」


大統領よ、あんた一体紹介状になんて書いたんだい?

今度あったらただじゃおかねぇぞ。

SNS狂いのおちゃらけた大統領に恨みをぶつけながら、私たちはグラウンドを走り出す。


こうして私(と斎藤)のアメリカ陸軍兵舎生活が始まった。


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